2013 Fiscal Year Research-status Report
ヘッドマウントディスプレイを用いた弱視支援の補視器の開発
Project/Area Number |
25350292
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nihon Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
村井 保之 日本薬科大学, 薬学部, 准教授 (30373054)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 視覚障害補償 / ヘッドマウントディスプレイ / ヒューマン・インタフェース / ピクトグラム認識 |
Research Abstract |
弱視者の視機能を補う機器(聴力を補う“補聴器”に対し“補視器”とする)の開発を目指している.開発する補視器は,弱視者が視認したい対象や弱視者に視認させたい対象を視界映像から見つけ出し,それを大提示(視力の補償),視野狭窄の場合は視点を誘導して対象を視野内で提示(視野の補償),さらには環境に応じて画像の白黒反転やコントラスト等も変更する(視認の補償)などが行える器具である. 25年度は“補視器向きヘッドマウントディスプレイの仕様策定とプロトタイプ機器の開発”に取り組んだ,近年ヘッドマウントディスプレイの小型化・低価格化が進むと共に,機能的には通常の視界の中に各種情報を提示することで視機能の拡張が行えるようになり,我々の考える補視器に最も近い機器と考え検討した結果,市販されているヘッドマウントディスプレイは,弱視者にはほとんど利用できないことがわかった.特に問題となったのが,弱視者の残存視力に応じたディスプレイ位置の調整(フィッティング)である.そこで,ヘッドマウントディスプレイにフィッティング機能を持たせ弱視者にとって利用可能となるような仕様を策定した.具体的には,「垂直・水平方向への移動」,「水平方向の回転」,「垂直方向の回転」可能な機構である.また,市販のヘッドマウントディスプレイに用いられている表示方式は弱視者にはほとんど利用できないこともわかった.そこで,弱視者がスマートフォンなどを目に近づけて利用していることから,小型の液晶ディスプレイを表示部として用いることを決定,2.8インチの小型ディスプレイを入手し画像表示の実験を開始した.また,フィティング機構はユニバーサルジョイントのようなものを検討中である. フィティング機構を設計するにあたり,弱視者の可視範囲を測定するため,ミリ単位で前後,左右移動できる雲台を購入し,これに小型ディスプレイを固定した測定器を準備した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度は,弱視者が使用できるヘッドマウントディスプレイの仕様策定と小型ディスプレイの入手が主な仕事となった.達成度は70%とする.達成理由として,ヘッドマウントディスプレイの仕様策定,検証用小型ディスプレイの入手・試験,視線誘導のためのピクトグラム検出プログラムの試作・試験ができたことである.なお,検出プログラム試作は26年度の予定であったが,ヘッドマウントディスプレイの試作機開発が難航したため,前倒しで実施した.100%達成できなかった理由として,本格的な試作機が完成できなかったことがある.弱視者は,各個の弱視の程度や視野狭窄などの有無により,ディスプレイの可視範囲が異なる.そこで,本研究では,ディスプレイを弱視者の可視範囲に自由に移動する機構について検討したが,適当な機構がなかなか見つからず試作機の完成までいたらなかった.現段階では接合箇所の角度が自由に変化できるユニバーサルジョイントを基に最適な機構を検討中である.また,表示部であるディスプレイについては,PC接続可能で簡単に実験のできる市販の物がなかなか見つからず予備的な実験が予定通り出来なかった.しかし,年度最後に入手可能になった,オーストラリアの4D Systems社製の2.8インチLEDディスプレイを購入し,表示のためのテストプログラムの作成めどが立った.また,前述の理由から,弱視者の可視範囲の測定を予定していたが,測定のためのディスプレイなどが用意できなかったため次年度に持ち越さざるを得なかった.
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Strategy for Future Research Activity |
26年度研究の進め方として,まず,前年度の結果に基づき入手した市販の機材(ユニバーサルジョイント,小型液晶ディスプレイ)を用いて試作機を完成し,基礎的な実験(フィッティングのし易さとディスプレイの見易さなど)を行い問題点の抽出と改良を行う.その後,この試作機を基に本格的な試作機を外注し開発する.特にディスプレイを接続しフィッティングを行う機構に関しては新たに設計・作成する.また,実際に装着した際に無理のないサイズや重量となるように作成する必要がある.そのためには,フィッティング機構と小型ディスプレイという機械と電子両方の技術力を持った企業を限られた予算の中で選定する必要があり大きな課題となると思われる. 弱視支援のソフトエア(対象の拡大提示(視力の補償),視点の誘導と視野内提示(視野の補償),画像補正(視認の補償)に関しては,25年度開発したピクトグラム認識プログラムの認識精度向上や過去の研究成果(平成21~23年度基盤研究B,21300079:“公共サインを目印とした弱視の歩行訓練映像シミュレータの開発”)を利用し画像の拡大や弱視者が視認しやすいように加工・補正表示する機能を加える.また,25年度に用意した測定器を用いて,実際に弱視者の可視範囲を測定し,開発する試作機のフィッティング機構開発に反映する.なお,開発した試作機は,研究協力者の勤務する筑波技術大学(視覚障碍のみが学ぶ)の学生に協力を依頼し実験を行い,問題点の洗い出しと改良を行う予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は,試作機を外注製作する予定であったが,予備試作および実験を行うための機器の入手に手間取り,試作機を外注製作することができなかったので,試作機外注製作のための予算が使用できなかったため. 26年度は,前年度予定していた予備試作器の製作と実験,その後予備試作器を基に,試作機の外注製作を行うとともに当初計画していた通り,外注した試作機の改良と関連する機器(制御用パソコンなど)の導入のため使用する予定である.
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Research Products
(6 results)