2013 Fiscal Year Research-status Report
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25350310
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
西森 章子 広島修道大学, 学習支援センター, 学習アドバイザー (50294012)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アーギュメンテーション・スキル / 意見文 / 創造的思考 / 裏づけ発想トレーニング / 教材開発 / 高校生 / 思考を育てるカリキュラム |
Research Abstract |
平成25年度は,高校生のアーギュメンテーション・スキルを支援する「裏づけ発想トレーニング」の効果が検討された。具体的には上記トレーニングが高校生を対象に試行されることで,その効果が検討された。本研究は,2つの目的により構成された。 (目的1)「裏づけ産出トレーニング」を開発し,高校生を対象に実施することで,その効果を調べることを目的とする。このとき,学習者の学力(国語科)によって,発想される裏づけの数や多様性(視点数)に違いが見られるのかどうかを調べる。(目的2)「裏づけ産出トレーニング」が,高校生の生成する意見文に及ぼす影響を検討する。特に,トレーニング時に参照する裏づけ例数が,その後の発想に影響すると予想されることから,裏づけ例を多く参照した場合に,意見文の構成や文量に促進が見られるのかどうかを調べる。 大阪府内の高校2年生を対象とする実験の結果,以下の結果が得られた。 (結果1)「裏づけ産出トレーニング」を通して,産出される裏づけの数は増加すること,裏づけを考える際の視点は多様化することが示された。その際,「他者の考えた裏づけの例」として提示される例数は,発想される裏づけの数や多様性(視点数)に影響しないことが示された。また学習者の学力(国語科)も影響しないことが明らかとなった。この結果は,日本教育心理学会第55回総会(法政大学)・ポスターセッション(PA-058)において発表された。(結果2)「裏づけ産出トレーニング」を経験することで,その後作成される意見文において,「裏づけ」を含む意見文が増加すること,および,文量(文字数)が増加することが示された。しかし予想に反して,10 例提示群よりも,5例提示群において「裏づけ」を含む意見文の件数が増加していた。この結果は,日本教育工学会第29回総会(秋田大学)・ポスター発表(P3a-1-404-08)において発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実践研究の観点からは,「自らの考えを表現する」力の形成に向けて,1年次で根拠産出,2年次で裏づけ発想,といった教育的介入を後期中等教育カリキュラムに位置づけることの可能性が示されたと考える。具体的には,昨年度,「根拠産出トレーニング」(高校1年生対象)でも,根拠数の増加や視点の多様化が報告されているが,今年度は,「裏づけ発想トレーニング」を通して,高校生において,発想される裏づけ数が増加すること,裏づけを考える際の視点が多様化すること,そして,トレーニング経験が,アーギュメント生成に最終的に影響するのかどうか確かめることができた。 次に,実験研究の観点からは,トレーニングを構成する要素について,重要な示唆を得たと考える。具体的には,本トレーニングにより,「他者の考えた例」の数が,学習者の発想にどの程度影響するのかは,これまで明らかにされていなかったが,本トレーニングに限っては,例数の違いは発想に影響しないことが明らかとなった。これは,多数のアイデアに触れるほど,発想が促されることが示唆した先行研究とは研究結果が異なっており,研究課題が新たに見出されたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,トレーニングの効果をより詳細に検討し,教材の信頼性を高める必要がある。今年度の結果からは,トレーニングを構成する枠組みの一つである「事後的に参照する例の数」は,発想に影響しないことが示唆されたが,今後,例を参照する時間が,発想に影響するのかどうか調べる必要がある。その他,例の内容や,トレーニング時の学習者の思考過程などについても検討すべきである。そのために,これまでとは異なる学校,あるいは異なる発達段階に属する対象者からの協力を得て,再度,実験を行う。 次に,今年度は,紙ベースでの教材開発を目指したが,今後は,教材がモニタによって提示され,学習結果が可視化される学習環境を開発し,教材の応用可能性を検討する必要があると考える。
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Research Products
(3 results)