2013 Fiscal Year Research-status Report
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25350340
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
大渕 慶史 熊本大学, 工学部, 准教授 (10176993)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 英俊 熊本大学, 自然科学研究科, 教授(Professor) (10153917)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 動作保存 / 動作解析 / モーションキャプチャ / 筋電位信号 / 伝統技能 / 技能伝承 |
Research Abstract |
動作記録とデータ分析手法の確立の初期段階として,従来から導入しているシステムによる動作保存と伝承の検証を行なった.計測・保存した幾つかの基本的な運動や技能の動作を再現した3次元アニメーションおよび解析したパラメータの数値により,運動や技能の習得の可能性を検証した.動作としては,スポーツ(ダーツ,テニス),技能としては鉋がけを対象とした.従来から導入しているモーションキャプチャシステムは,通常のビデオカメラ数台で撮影した動画に対して関節位置を手動でトレースする方式で,特別な設備が不要なため安価で運用環境に対する制限も緩いが,自動化が困難でデータ作成に時間と手間を要することが問題であった.その改善策として,深度センサ式のキャプチャを新規に導入した.深度センサ式はゲーム用インターフェイスとして最近普及しているもので,これを2台使用することで動作の誤認識を防ぎ測定精度が向上することを確認した.以上の2つのシステムにより,テニスのサーブ動作について保存した動作の解析を行ない,初心者が短時間で上達できる方法を提案し,本研究の目的である動作保存と継承に沿った意義ある成果を得られた. 一方,新規導入した光学式キャプチャシステムは当初予定の加速度式から機種変更の必要が生じて導入が遅れたため,簡単な動作による検証しか行なえなかった.今後,各種の動作に対する精度の良い動作保存と解析を行なう予定である. この他,筋電位測定によるスポーツ動作の熟練度の評価方法を提案した.また,手指の動作測定による箸動作の熟練度評価を試みている段階である. 現状では,記録した動作の3次元データに対して様々な評価方法を試行している段階であるが,有効な分析手法により実際の動作の特徴や運動の経過を評価するまでには至っていない.今後は各部位の3次元空間での動きとその関連性や連系する動作の有効な評価手法の確立を目標とする.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に導入予定の加速度センサ式モーションキャプチャシステムについて,助成金の採択決定後よりメーカーと連絡を密にして,購入を前提とした性能検討を行なったが,動作が不安定で測定精度が充分に得られず,測定不能が頻発することが明らかになった.原因究明の結果,当該装置の地磁気を利用した位置・方位情報の決定方式は,本学内各所で相当数の実験機器などが存在するため地磁気の乱れが著しいため,研究に必要な精度での測定が望めないことが判明した.当該装置で充分な精度で計測可能な安定した地磁気の場所がキャンパス内で非常に限られており,測定は難しいと判断した.そこで,測定原理と計測方式は異なるものの,同等の機能を有し,所定の計測が実現可能で,金額的にも購入可能な範囲で装置の変更を決定した.上記の確認と変更のため,新規購入のシステム導入が大幅に遅れを生じ,また,記録方式が異なるための課題解決に時間を要したため,当初予定していた各種の熟練者と初心者の動作測定と比較に至ることが出来なかった. 一方,上記の遅延を生じていた期間は,翌年度以降に計画していた筋電位測定による動作評価と手指の動作記録による熟練度の評価に着手した.さらに別方式として最近注目されている深度センサ方式の動作記録についても多くの実験と検証を行ない,簡便で比較的精度の良い測定が可能であることを確認した.それらの試行により,既に幾つかの知見を得るに至っており,学会での発表も行っている. したがって,上記の遅れの分に対し,新方式の検討分と翌年度以降分の着手の進捗状況を比較し,相殺される程度であると判断し「おおむね順調に進展している」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
先ず,導入が遅れたシステムを利用した動作の詳細解析による評価を優先的に行なう.技能習熟度の評価としての筋力の評価のためには動作と筋電位計測の併用による評価も予定している.これにより,技能者の動きや筋電位の変化などを,被継承者のそれと比較することにより,技能の伝承の評価を行うことを試みる予定である.これまでに構築したデータベースを活用し,実際に使用されている道具を用いて板と板を結合させる船大工の技能であるハギアワセ(接ぎ合わせ)等の作業を行い,技能の習得による作業時間,作業動作,筋力,部材への作用力などを記録し,習熟度の評価を試みる.この点に関しては,習熟度を確認・評価する有効な方法が提案されていないことが問題として挙げられ,その解決が課題となる.また,加工した工作物に対しても強度試験による接合力の評価,および破壊検査による加工状態の観察,CAE解析による評価などを行う. 次に,手指の動作記録による手法の拡張性の検討を行う.従来から使用しているキャプチャソフトにおいては手指のモデルを構築し,それを利用したタイピングや箸動作などを記録しているが,使用するカメラの性能により,速い動作に対しては鮮明な画像記録が出来ず,関節位置の検出が難しかった.そこで,今回導入した高速撮影が可能な光学式モーションキャプチャを活用し,より細かい部分まで動作の再現を可能にする.詳細な手指の動作保存の手法を確立し,それらに関する熟練度評価を継続すし,手指を使った様々な技能の保存・継承を可能にするように本手法を拡張したい. 以上により,技能の直接的な伝承が不可能な状況においても,本研究で提案する技能の保存と継承のシステムにより,それを可能にすることを目指し,手法と技術の開発,およびその対象の拡張に取り組む計画である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初に導入を予定していた加速度式モーションキャプチャについて助成金の採択決定後よりメーカーと連絡を密にして性能検討を行なったが,動作が不安定で測定精度も不充分であった.原因究明の結果,地磁気を利用した計測原理の当該装置は,相当数の実験機器等が存在し地磁気の乱れが著しい環境の本学キャンパスでは充分な精度の測定が難しいことが判明した.そこで,測定原理と計測方式は異なるものの,同等の機能を有し所定の計測が実現可能で,金額的にも購入可能な範囲である装置に変更することを決定した. 上記の理由で装置の導入が大幅に遅れたことに加え,変更した機種では一式に計測用のPCが含まれておらず,年度内での計測に充分な仕様の検討と機種選定が間に合わなかったことにより,次年度使用額が生じる結果となった. 速やかに,計測用PCの機種を選定して,購入を行なう.なお,現状は別用途のPCを一時流用中である.
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Research Products
(6 results)