2014 Fiscal Year Research-status Report
通常学級における特別支援教育の視点を活かしたICT活用
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25350351
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
東原 文子 聖徳大学, 児童学部, 准教授 (60272150)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土橋 永一 聖徳大学, 教職研究科, 教授 (10237175)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ICT活用 / 特別支援教育 / 通常の学級 / 学習のユニバーサルデザイン / 発話分析 / 学習困難児 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究1:著者がICT活用推進を任されている大学附属の小学校において,小学校5年生90名を対象に,「単位量あたりの大きさ」の算数文章題におけるメタ認知的気づきを促す教示の効果について検討した。対象学年は,本研究開始前より,小学校1年時に筆者自作の「算数スキルアセスメント」の個別実施をした資料がある。さらに小学校3年の時に月2回の「放課後スクール」においてPC学習に慣れ親しんでおり,本研究を推進する土壌ができていた。本研究では,「スキーマへのメタ認知的気づき」を促す発問に対して答え,テープ図を作成しながら解決できるPC教材による自己学習の効果をプリテスト-ポストテスト比較で調べた。その結果,指導したベース問題はもとより,指導していない転移問題も正答率が有意に増加した。しかし,3分の1の児童は転移問題でつまずきをみせた。そこで,その児童達に対しさらに個別にインタビューを行い,対話を通して,「問題間の関連へのメタ認知的気づき」を促す支援をしたところ,効果が認められた。これらを通して,算数文章題解決のプロセスの各部分におけるつまずきのタイプにより児童をグルーピングすることができ,つまずきのタイプと指導方略が整理できた。 研究2:前年度に引き続き,通常学級に在籍する著しく学習の困難な児童数名を対象に,教育相談室において,通常学級でも使うICT教材を利用して個別指導を展開している。対象児の認知特性を詳細にアセスメントし,教材使用法の計画を立てた。26年度に導入したタブレットPCの活用は,目と手の協応操作の不得意な児童の計数スキル向上に成功するなど,効果が高い。 研究3:前年度に引き続き,小学校低学年担任対象のICT活用研修をビデオ録画し,その談話分析を行った。その結果,前年度研修を受けた教員が新任の教員に教える中で,「ニーズのある児童」に関する談話が多く観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,①学習困難児の特性に配慮したICT教材教具の活用法やその際の学習評価法を,個別指導の場や,小学校の一斉指導の場を用いて探る研究,および,②ICT活用に関する教員研修が,個々の児童の特性に配慮することへの担任の意識変容に役立つことを検証する研究の両研究を通して達成される。①は,通常の学級の学習困難児数名に認知アセスメントを行い,ICT活用による個別指導の効果も出ている。②通常の学級におけるICT活用について,研究協力が得られている小学校では,全ての学級と,理科室,図工室に実物投影機とプロジェクター,PC,電子教科書等のソフトが整備された。前年度に引き続いてある教員の研修会での発言や授業の様子の追跡調査も行うことができている。しかしながら,平成26年に推進するはずであった,研究協力校の低学年児童1人ひとりの認知アセスメントを行うことや算数のICT活用における適正処遇交互作用研究を行うことができなかった。その理由は,平成26年度6~7月に筆者が特別なニーズのある児童の個別指導に公務として毎日のように取り組む状況になり,他の典型発達児のアセスメントをする時間がなかったからである。そのため,本研究以前からの算数スキルに関するアセスメント資料のある5年生の児童を対象に算数文章題でのICT活用研究を行ったが,当初予定した認知特性のアセスメント結果を利用した研究からは少し方向が異なった。しかしこの算数文章題研究は,当初予定した平成27年度の計画にある,「算数的表現間の変換学習(具体物-言葉-数式-図表の間を自由に行き交う学習)」の一部を先取りすることとなった。そのため,「おおむね順調に進展」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度,研究協力校における全教室において実物投影機やPC,プロジェクター等のICT機器活用が日常的に行われるようになり,ICT活用研究の環境が整った。さらに,本助成金等により,児童用タブレットPCも12台となり,2名に1台のタブレットでの協同学習ができる準備も整ってきた。そこで,当初の研究計画通り,算数文章題の協同学習をPC室でも一般教室でも行うことができるため,学級の状況を見て場所を選んで行うこととする。日常的にICT活用を推進している1名の教員に焦点を当て,授業研究に向けた数回の授業と,集大成である研究授業を全てビデオ録画し,児童の談話分析等を通して,UDL的な配慮を充分取り込んだPC教材を利用すれば,学習困難のある児童も級友との協力により問題解決が達成できていくことを検証していく予定である。
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Causes of Carryover |
研究分担者にはビデオ録画の談話分析の一部を依頼したため,その分析用ソフトの費用が必要と考えていたが,平成26年度は新たなソフトを購入することなく,既存のソフトで処理できたということで残高が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
分析作業中に急に必要となる費用(例えばウィルス対策ソフトなど)として使える程度であると考え,平成27年度の研究を変更する必要はないと考える。
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Research Products
(3 results)