2017 Fiscal Year Annual Research Report
Eugenics Movement and Civil Rights: Sterilization Policy in the United States
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25350379
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
小野 直子 富山大学, 人文学部, 教授 (00303199)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アメリカ / 優生学 / 断種 / 福祉 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、特に1950年代から60年代にかけてアメリカ合衆国における断種政策が変容する過程に焦点を当てた。第二次世界大戦までに優生学は科学としての信頼性を失い、断種手術数も減少していた。しかしながら第二次世界大戦後、一部の州で断種政策が拡大した。その背景には、公民権運動の高まり、福祉政策の拡大、世界的な人口爆発に対する懸念などが存在していた。その結果断種政策の主対象は、20世紀初頭の白人の精神薄弱者・精神障害者などから、生活保護を受給している有色人種の女性に変化した。断種政策の主対象は変化したが、その背景にある優生学的思想は変わらなかった。すなわち、生殖には「適性」が存在しており、公立施設に収容されていたり生活保護を受給していたりして公的扶助の対象となっている人々は生殖に適していないと見なされる。それは、20世紀初頭における優生学とは異なり、貧困は遺伝ではないが文化的に世代から世帯へと継承される傾向があると考えらるからである。公的扶助の対象となる人々は自身の生殖を関する権利を有しておらず、生殖を管理する権限は福祉制度に資金を提供している政府と納税者に帰するとされる。そして生殖に適していないと思われる人々の生殖を制限することは、対象者本人にとっても社会全体にとっても善であると規定される。また生活保護受給者に関するステレオタイプを考慮すると、有色人種が特に対象とされやすい。1970年代には公民権運動、女性解放運動、消費者運動、患者の権利運動などを背景に強制断種が問題視され、連邦レベルでの断種ガイドラインが作成されたが、背景にある思想はあまり変わっていないように思われる。以上のように、アメリカにおける断種政策の変容の事例から、福祉政策が拡大すると身体への公的介入が増加することを明らかにした。
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