2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25350380
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
城地 茂 大阪教育大学, 学内共同利用施設等, 教授 (00571283)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 和算 / 数学史 / 科学技術史 / 中国 / 台湾 / 韓国、朝鮮 / 漢字文化圏 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、世界文明の交流から見た日本近世の数学という広範なものなので、西アジアもしくは南アジアが発祥と考えられる格子算法の日本伝来を通じて、その経路や受容の仕方を現存する古書から実証的に解明することにある。日本伝来は、地球を東廻りに伝わったものと西廻りに伝わったものが中国で邂逅し、それが朝鮮半島や台湾といった南西諸島方面を経由したものである。今年度は、この二つの経路について具体的な調査を行った。 格子算法を調査するために、アジアの中央から東廻りで直接中国へ伝わったもののうち、その起源となる『楊輝算法』(楊輝、1275年)の朝鮮復刻本を調査した。これは、書名が「算法通変本末」となっていたため、知られていなかったものである。高麗大学校図書館の協力を得てを調査した。その結果、高麗大学校本は、筑波大学A本(同B本は近世期の復刻本)と内容はもちろん、同じ木版の可能性が高いことが分かった。なお、この調査結果は、2015年8月開催(京都大学数理解析研究所、代表者:城地茂)する学術会議において発表予定である。 一方、西廻りでイギリスに伝わり、ネイピアの骨となったものが中国に伝わったものが「籌」である。これは、本研究および科研費、基(C)課題番号22500962(代表:城地茂)により術数書である『三才発秘』(陳Wen、1697年)であることが解明され、城地 茂・張耀祖・劉伯wen・張Hao(2015出版予定)「東西の格子乗法から見た近世日本数学」として、投稿・受理されている。さらに、兵学者・医者という上士と地方(じかた)との格子算法の受容の違いについても本研究で明らかになり、城地 茂・張耀祖・張Hao・劉伯wen(2015出版予定)「格子乗法の日本への影響」も投稿済である。 こうした実証的研究を積み上げた結果、城地 茂(2014)『和算の再発見』化学同人として刊行することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
格子算法に関係する雑誌論文を2本、それらを元に格子算法の伝来を元に中国数学書を時代区分した結果、13世紀の中国数学書群が『釈鎖算書』(賈憲、11世紀)のものより明代万暦数学書群(たとえば『算法統宗』(程大位、1592年))の方へ分類すべき存在であることが分かった。これを城地 茂(2014.6)『和算の再発見』京都:化学同人.として発信するとともに、京阪奈3教育大学の双方向授業「日本科学技術史概論」として、将来の教員への発信に勤めたため。
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Strategy for Future Research Activity |
格子算法の東廻りルートについては、2015年8月3日-6日に開催(京都大学数理解析研究所、代表者:城地茂)する学術会議において意見交換を行い、韓国経由の中国数学が近世日本に伝来経過を再検討する。前2年の研究により、李氏朝鮮では、算盤は用いられず、籌策が伝わっていたことが判明している。南西諸島北部、琉球王国においても算盤の伝来は、近代以降である。この籌策には、日本のもののように蘇州号碼が付されていないようであるが、さらに調査を進める必要がある。 西廻りルートについては、14th ICHSEA(PARIS, 6-10 JULY 2015)に参加し、西アジアからヨーロッパ、ブリテンへの伝播について意見交換を行う予定である。ネイピアの計算尺(あるいは骨=籌策)の成立過程を地中海沿岸の状況と対比、研究を進める予定である。
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