2013 Fiscal Year Research-status Report
症例誌に基づいた医学史研究のイノヴェーション－昭和戦前期精神病院を実例として
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25350384
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Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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| Research Institution | Keio University |
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Principal Investigator |
鈴木 晃仁 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (80296730)
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| Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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| Keywords | 医学史 / 精神医学史 / 症例誌 |
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| Research Abstract |
精神病院の症例誌のいくつかの要素についての報告を行った。一つは、疾病別の研究の観点で、特定の精神疾患を選び出して、その疾患に関する症例誌についての報告を行った。この疾患は、現在ではPTSDと呼ばれる疾患であり、歴史的には、第一次大戦時から「戦争神経症」として近現代の社会と精神医学にとって大きな問題となったものである。日本においても、1920年代から30年代にかけて、労働事故の文脈でこの精神疾患が問題になり、王子脳病院においても労働災害に関連した症例が現れた。これらの疾患は、戦争神経症の理解形成に重要な役割を果たした。
もう一つの要素は、症例誌が患者に語る場所を与えたという側面である。患者が精神疾患の経験を語るときに、医師に問われてその問いに答える受動的な行為だけでなく、精神病の経験についてまとまりを持った文章を書き綴り、それを医師に渡すことが行われていた。これらの文章の中で、症例誌に挟まれている患者手記を分析した。その際に、同時期の知名度が高い文学者で、その精神病の経験を書き記した作品などを発表した作家たちである、島田清次郎、辻潤、高橋新吉らの事例とも関係性を持たせて研究発表を行った。精神病院が、社会と文化から孤立した空間ではなく、その内部の患者自身と患者に対する行為は、同時代の状況と連接しているという視点からである。
前者については、2013年の5月22日からのコペンハーゲンにおけるワークショップ、後者については9月20日からの東大駒場、11月22日からの台湾中央研究院、11月23日からの日本科学哲学会にて報告を行った。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の核である王子脳病院の症例誌については、以下の作業が完了して、おおむね順調に進展している。
1) 症例誌を入院患者の氏名あいうえお順に配列する作業を行った。あ行とか行の患者について、基本情報をデータベースに入力し、氏名順に配列して封筒に入れ、症例誌番号を振るという作業が完了した。この段階で約2,000件の患者の症例誌を整理したことになる。未整理の症例誌は、推算でいうとあと4,000件ほどあり、こちらを整理するよりも、すでに整理した2,000件の症例誌をサンプルとして研究するのがよいという判断をして、あ行とか行の患者についての内容についての分析を始めた。
2) すでに患者名簿から得ていた男女比、年齢構造、診断名、そして重要な在院期間の分析に加えて、入院回数、薬剤を主とする治療などのデータの数量的な分析と、入院までの経緯に記されている、精神病院への入院に至った要因の分析を始めた
3) 症例誌の中に挟み込まれている患者自身による文書の分析を始めた。具体的には、医師あてに執筆した手紙、自伝的回想、記録、絵画などである。
4) 何人かの患者については、精神病院への入院以外にも記録を残しているので、そのような活動についての調査を始めた。
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| Strategy for Future Research Activity |
既に整理してデータベース化したサンプルを分析していく。とりわけ、入院までの構造、入院中の治療、精神病院内部での生活、死亡を含めた転帰の研究、患者自身による精神医療の理解について、重点的に研究する。
別の精神病院の症例誌コレクションを探す。これまでも、いくつかのコンタクトがあったが、まだ実際の資料は未見である。
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| Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
症例誌のデータ入力をあ行とか行に限定することにし、当該作業が早めに終了したため人件費に余剰が生じた。
26年度資料整理等の人件費として使用する。
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Research Products
(13 results)
