2013 Fiscal Year Research-status Report
生命科学技術を巡る社会的意思決定モデル構築のための基礎研究
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25350385
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
林 真理 工学院大学, 公私立大学の部局等, 教授 (70293082)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生命倫理 / 生命論 |
Research Abstract |
生命科学技術を巡るコミュニケーションのあり方の検討を視野に置きつつ、概念的・理論的な研究および実践的な研究の双方を行った。 理論的な研究について本年度進展があったのは、生命科学技術に関する社会的な意思決定の基礎となる概念の検討に関する領域である。生命科学技術における社会的な意思決定において、コミュニタリアニズム的な過程をへて決定がなされる可能性があるということ、それがこれまで行われてきたような自由主義的な考え方と保守主義的な考え方との妥協を探るのではない可能性として存在しうることを示す論文を執筆して、それを他の研究者たちとの共著の書籍における一章として発表した。またこの共著作をめぐる討論会に参加して、コミュニタリアニズム的な意思決定過程において、伝統的価値観の侵入の他、自然主義的誤謬による共同体概念の理解が起こりうるという問題点を新たに知り、さらにそれを踏まえた理論的な研究を進める契機をつかむことができた。 実践的な研究としては、(1)感性工学研究における研究協力者の位置づけに関する調査と(2)支援機器開発に見られる当事者参加に関する事例研究を行った。(1)は本年度開始した研究であり、日本感性工学会の論文集のデータから、研究協力者の協力を得て行われた研究を抜き出して、それらを分類して傾向を把握し、さらに論文における研究協力者の位置づけの記述などの問題点を調査した。またそれらの調査結果について、日本感性工学会の研究会において報告を行って、実際に研究者と討論を行った。(2)は、前年度からの引き続きの研究であり、本年度は最終的な報告を論文としてまとめることになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たな課題の1年目として、それなりの進捗を見ることができたと自己評価している。それは、社会的意思決定に関しての考察を深めることができた部分、研究協力者の協力によって行われている工学的研究という場を対象とすることを開始した点である。 他方で、前課題より引き続いた部分をとりまとめて報告するという課題が遅れているので、これについては早めにまとめるようにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで続けてきた理論的な研究、すなわち一方では生命の価値に関する研究および生命科学技術のおける意思決定に関する研究を続けていくことがまず第一である。 他方で、前回の研究課題より継続してきた生命の価値に関する研究を、今回の新しい研究に接続する方向性を探ることを検討している。生命における価値は、偶然性、固有性、有限性、関係性として表出しうることをこれまでの研究で明らかにしてきた。これは主として現代の生命倫理をめぐる論争において見いだされたものであった。他方で、歴史的な研究が明らかにしてきたことととして、そういった価値観の表出はいわゆる「バイオエシックス」が輸入されるより前に、さまざまな場面において日本でも行われていたことがある。したがって、そういったものがなぜ社会的な意思決定の場面において重要な役割を担うことができなかったのかという経緯を探ることが次の課題として挙げられる。
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