2016 Fiscal Year Annual Research Report
basic research for construction of social decision making models on biotechnology
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25350385
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
林 真理 工学院大学, 基礎・教養教育部門(公私立大学の部局等), 教授 (70293082)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生命倫理 / 科学技術倫理 / 科学技術コミュニケーション / ガバナンス / 公共性 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代における生命科学技術を巡る意思決定について、新たなコミュニケーションの実態や新たな鍵となる事実問題(学問の公共性問題、実験協力者の倫理問題等)にも配慮しながら、理論的な成果を公表してきた。その理論的な成果は次の3つにまとめることができる。 (1)規制からガバナンスへ:行為の是非の弁別を目的とする「安全」と「倫理」という枠組みに対して、どういった方向に進むべきかを考えることを目的として、アクターがそれぞれの役割を果たす(コードに基づく規制はその一部に過ぎない)という形で科学技術を制御していくというガバナンス志向の発想の必要性が明らかになった。 (2)「市民」概念の再考の必要性:そういったガバナンスの論理は広く唱えられるようになってきているが、その際「市民」の役割が非常に重要になってくる。しかし、「市民」とは何かということは重要な問題であるにもかかわらず十分に検討されてこなかった。そこで、科学技術ガバナンス論が前提としている「市民」概念の分析を行って、単なる「非専門家」「素人」でもなく、また「第三者」「当事者」という分け方にも入らず、さらには「権利の主張者」というだけは捉えられない存在として理解すべきであるという考えに至り、結局「関心」「仕事」「生活」の3つの層の重なりとして捉えられる存在という理解に至った。 (3)コミュニケーションの三層モデル:さらにそれらの3つの層の重なりとしての「市民」概念に対応して、コミュニケーションのあり方も3通りになってくると考え、それらを「知識」(科学的な知識内容とそのメタレベルでの解釈への興味関心の充実を目的とするもの)、「有用」(経済的な価値や社会における意味の理解を目的とするもの)、「安心」(生活者としての日常生活の安定と豊かさを目的とするもの)とひとまず名付けた。
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