2014 Fiscal Year Research-status Report
伝統的溶解技法である甑炉操業法の科学的解明に関する研究
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25350393
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
宮田 洋平 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (20325434)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永田 和宏 東京藝術大学, その他の研究科, 教授 (70114882) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 熱伝導 / 棹炭 / 送風量および方法 / 装入物混成比および大きさ / 間欠送風 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のテーマである「甑炉の操業メカニズムの解明」に向け、前年度操業時の温度上昇の問題点について検討し中甑の形状変更を行った。実際に使用されていた「太鼓腹」の形状に近づけ、炉内容積を大きくした。燃焼効果を高め、上部をすぼめることで熱の散出を抑え、直立した側壁に発生しがちなノロの付着を防ぐ効果があると考え、内径の最大部を300㎜から420㎜に拡大した。また、直接的な空気の供給を減する為に羽口径を52.9㎜から67.9㎜に変え、傾斜角度も30°から20°に変えた。中甑の容量大に伴い送風機をシロッコ型からターボ型に変更し、送風管に新たに間欠送風装置を取り付けた。燃料炭については、床込め木炭を燃焼消耗が早い樫黒炭から樫備長炭に変えた。3回目の操業では、中甑の炉内温度は1400℃台を推移したにも関わらず、坩底では800℃台を超えることはなかった。 このことから4回目では、炉底温度を上げる為に坩底をかさ上げし、羽口周辺部の過熱帯との距離を短くし、かつ棹炭はそのままの長さにすることにより熱伝導をより効果的にする。また、坩底側面に新たに2か所穴をあける。これによって坩底からの空気の供給が増し、床込め備長炭の着火が早まると共に、燃焼効率が高まると考えられる。また、炉内に木炭が充填され羽口からの送風が行われた後、この3か所からのガスの排出により坩内の温度分布がより均等化されるものと期待される。棹炭量については、過熱帯部の熱風を坩底まで届けやすくするため、本数を減らし間隙を増やす。4回目の操業では、前回同様に中甑の炉内温度は1400℃台を推移し、最高温度は1498℃に達した。坩底は900℃台を推移するも975℃が最高温度で溶解するも流出には至らなかった。原因については、現在検討中である。 鋳鉄作品の調査は、当初の予定通り宮崎県高千穂神社鋳造狛犬を始め愛知県、栃木県全七体の調査を終えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前回までの結果を踏まえ改善として、中甑の炉内容積を大きくしたこと、炉をかさ上げし送排気口を二穴開口したこと、また、電動式間欠送風装置を使用したこと、これらの改善策により研究のテーマである「甑炉の操業メカニズムの解明」に近づいていることを実感している。 炉に新たな送排気口を開けたことで燃焼の偏りが無くなり、効率よく空気が回っていることが確認できた。中甑の操業温度については1500℃程度の十分な温度を達成している。このこと及び、甑炉解体時の残留地金を確認すると、溶解については問題ないと考えられる。しかし未だ炉底温度を1300℃まで上げるに至っていない為、炉に熔湯を溜めることが出来ていない。キーワードに上げている事柄が、複合的に絡み合っていると考えられる。現在棹炭に使用している馬目樫備長炭の品質等にばらつきが多く、良品確保も課題と考えられる。 新たに考案製作した電動間欠送風装置は、改善を重ねることにより確実な動作を見ることができた。 鋳鉄作品の調査により鋳型造型技術に関する知見を得る事が出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
中甑の炉内容積の拡大により熔解は行えているので、炉底の温度を1300℃まで上げ、維持することを目標とする。酸素濃度の分析から酸素不足状態にある炉内雰囲気において、熱伝導による熔湯の保温保持について更なる検討を行う。操業開始前の木材及び木炭による炉の加熱方法についても検討を加える。現在木炭自体の生産供給が滞る中、棹炭として使用する馬目樫備長炭の同一規格品の入手について検討する。製錬作業者からの意見を聞き効率的な操業を目指す。データロガーによる炉内温度及び酸素濃度の記録を行い、甑炉操業のメカニズムを明らかにする。 鋳鉄作品の調査で得た鋳型造型技術、表現方法、仕上げ方法に関する知見を基に作品制作を行い、甑炉での溶解注湯を行う。造形物と熔湯量の関係を確認するためにテスト操業を行う。
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Causes of Carryover |
酸素センサーの消耗を抑制出来た為。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
設備・備品:200,000円、消耗品:510,763円、旅費:189,000円、人件費:275,840円
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