2013 Fiscal Year Research-status Report
地球科学的アプローチによる我が国における近世以前の非鉄金属製錬技術の体系化
Project/Area Number |
25350394
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中西 哲也 九州大学, 総合研究博物館, 准教授 (50315115)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 鉱山技術 / 製錬スラグ / 銀製錬 / 科学分析 / 生産遺跡 / 石見銀山 / 鶴子銀山 |
Research Abstract |
平成25年度は、新潟県佐渡市鶴子銀山荒町遺跡および吹屋遺跡、上相川集落、福島県会津若松市周辺(石ヶ森鉱山、若松鉱山、桧原金山、加納鉱山、与内畑鉱山、軽井沢銀山)島根県石見銀山、山口県山口市周辺(蔵目喜銅山、一ノ坂銀山)において現地調査を行い、現地の現況の把握と鉱石、製錬滓試料の採取を行った。 石見銀山を始めとする戦国時代末~江戸期の銀山(久喜銀山、延沢銀山、鶴子銀山、谷口銀山、院内銀山)について、銀鉱石、製錬滓の化学組成分析を行い、鉱石中の鉛/銀比が含銀鉛鉱石(久喜銀山)と輝銀鉱などの銀鉱物を主体とする銀鉱石(石見、延沢、鶴子、谷口、院内)で大きく異なる事、また製錬スラグ中の鉛/銀比が、銀鉱石を製錬した鉱山では鉱石に比べて大きく増加している事から、銀鉱石の一次製錬の際に鉛の添加が行われていた事を科学的な分析に基づき明らかにした。この事は、世界遺産石見銀山に始まる我が国の鉱山技術革新のプロセスの一端を示している。研究成果については、資源素材学会(札幌)、第8回国際古代金属歴史会議BUMA-8(奈良)で報告すると共に、ISIJ-Internationalに投稿した。また、佐渡金銀山で行われていた金銀分離の為の焼金の技術についてもこれまでの研究成果をまとめBUMA-8での報告、ISIJ-Internationalへの投稿をおこなった。 また、銀製錬関連試料については、鉛同位体分析による鉛供給地の推定を行う為に、日本各地の鉛鉱山の試料選定をおこない、分析の準備をすすめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本各地の鉱山跡の現地調査が順調に進み、試料の蓄積が進んでいる。また銀製錬技術について鉛の添加を明らかにできた事、成果の国際誌への投稿を行った事、鉛同位体分析の準備が整った事などにより、次年度に研究を深化させる事が可能となる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は銀製錬技術の解明に重点をおいてきており、一定の成果を上げる事ができた。次年度以降も国内の銀山の試料の分析を進める事で、日本全体での鉱山技術の革新の動向をあきらかにする。特に鉛同位体の分析は添加鉛の産地同定に重要である為、重点的に行う。また、銀銅鉱石からの銀の生産については、科学的データによる検証は十分でないため、特に江戸中期以降の鶴子銀山や佐渡金銀山での銀銅鉱石の製錬について試料収集と分析を進める。
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