2014 Fiscal Year Research-status Report
乾湿サイクルに伴う表面膜の状態変化が石窟壁画に及ぼす影響
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25350396
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| Research Institution | Mukogawa Women's University |
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Principal Investigator |
宇野 朋子 武庫川女子大学, 生活環境学部, 講師 (90415620)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島津 美子 国立歴史民俗博物館, 研究部, 助教 (10523756)
伊庭 千恵美 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10462342)
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| Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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| Keywords | 石窟壁画 / 乾湿サイクル / 保存環境 / 表面膜 / 乾燥収縮 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、インド・アジャンター石窟寺院の石窟壁画を対象として、壁画の表面に形成される薄膜による壁画の損傷の程度、とくに過去に塗布されたシェラック樹脂による影響を評価することを目的としている。本研究では、おもにインド・アジャンター石窟寺院の第2窟を対象とした。本年度は、初年度に引き続き以下の項目について検討した。
1）現地調査を行い、アジャンター石窟寺院の第2窟の壁画に対して、おもにシェラック樹脂膜の保存状態と壁画の含水状態を整理した。現地調査では、表面膜および壁画の下地層（土壁）の厚みとはく離の見られる箇所との関連を詳細に観察した。さらに、壁画の表層部の含水状態を石窟内の複数箇所で計測し、岩盤からの水分供給の状況を調査した。屋外の気象の把握のため昨年度に設置した温湿度および日射計のデータを回収し、分析を行った。計測項目として、雨量計、風向風速計を追加した。データは次回の現地調査で回収する予定である。
2）シェラック樹脂膜の透湿性能を調べるための実験を行い、シェラック樹脂膜の厚みや下地材の違いによる透湿抵抗を把握した。このデータは数値解析のための基礎データとなる。壁画は多材料が層状に重なり複雑な構成になっているが、より単純なモデルにより、単一の材料ごとの基礎的な物性値を収集することが重要だと判断された。次年度の課題と考えている。
3）昨年度に引き続き、表面の乾湿の繰り返しによる壁画の内部の水分状態の把握のため、1次元の熱水分同時移動解析を行った。表面の境界条件に温湿度の年周期の変動を与えた条件で、岩盤側からの水分供給の有無による影響を考慮した解析を実施した。
最終年度は、壁画を構成する材料の物性特性を数値解析のモデルへ適応した解析を行い、壁画層の温湿度を把握することにより、シェラック樹脂膜の有無による壁画の温湿度状況を定量的に評価する。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画当初の予定では、初年度～2年目において、①壁画の状態調査、②環境計測、③壁画片の状態調査、④熱水分移動解析のためのモデルの作成と検討、⑤模擬壁画での劣化状態の検討、⑥数値解析による壁画の劣化要因および機構の解明を実施予定であった。
①、②、④については初年度に着手し本年度も継続して行っており、③については本研究に先駆けて行っていた内容を充実させることができ、いずれも順調に進んでいる。⑥については、本年度も実施しているが、詳細な物性の把握が必要であるため最終年度も継続して実施する予定である。⑤については、シェラックについては透湿抵抗などの物性をある程度までは把握できてきている。実際の壁画全体を模擬するよりも、構成される材料を詳細に把握することを重視することとした。
全体としては、当所の予定どおり進んでいる。
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| Strategy for Future Research Activity |
本研究では、①壁画の状態調査、②環境観測、③壁画片の表面膜の状態の分析、④熱水分移動解析のためのモデル検討、⑤模擬壁画での実験、⑥数値解析による壁画の劣化要因および機構の解明、⑦保存修復対策の検討と他地域への応用を行う予定である。
①、③、④、⑤、⑥については、本年度に引き続き別の角度からの観察、解析を行う。②については、回収した気象観測機のデータの分析と数値解析への利用を検討するとともに、次回調査までデータを蓄積する。①～⑥を踏まえ、⑦については事例の蓄積と合わせて検討したい。
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| Causes of Carryover |
現地調査を年度末に実施するために、現地調査にかかる車両借り上げや謝金、物品輸送のための費用を確保しており、実際に要した費用が予想額を下回ったため。
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の実験や調査のための消耗品の購入に充てる予定である。
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