2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25350397
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Research Institution | Iwaki Junior College |
Principal Investigator |
山崎 京美 いわき短期大学, その他部局等, 教授 (60221652)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 考古学 / 動物遺体 / 古病理 / 先史時代 / イノシシ属 / イヌ / 家畜化現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
最近の縄文時代研究では植物栽培の可能性が明らかになってきており、イヌ以外の動物の家畜化(特にイノシシ)問題も活発な議論が続いている。そこで、本研究は家畜化をプロセスとして見直す視点の一つとして、動物遺体に残る病理痕の分析から家畜化現象を探ることを目的として行っている。 本年度に実施した研究内容は、1)現生イノシシ・イヌ・ヒトの病理学的研究に関する文献調査、2)動物考古学における古病理学的研究に関する文献調査および分析手法の調査、3)現生動物標本を対象とした口腔病理痕(歯石、エナメル質減形成)の観察調査、4)遺跡資料を対象とした古病理痕(歯石、エナメル質減形成、歯周病)の観察調査、5)成果の一部発表であった。1)および2)では国内外のイノシシ・ブタ・イヌ・ヒトに関する動物学・獣医学・病理学・動物考古学の文献を965件(昨年度からの累計では1168件)収集し、文献データベースに更新作業を行った。3)では東京大学総合研究博物館収蔵資料、個人研究者所蔵の飼育イノシシ、猟師から譲渡されたイノシシおよび飼育イノシシについて調査を行った。4)では東京都下高洞遺跡・倉輪遺跡、茨城県中妻貝塚、新潟県佐渡市三宮貝塚・藤塚貝塚、鳥取県青谷上寺地遺跡、鹿児島県高橋貝塚の出土イノシシ属およびイヌ資料を対象に古病理痕の観察・骨計測学的調査を行った。また、遺跡イノシシ属の一部資料ではAMS年代測定の分析を依頼した。これらとともに、歯石に残る微化石から家畜化現象を探ることを目的に、現生リュウキュウイノシシの歯石を試料として残存デンプン粒およびプラントオパールの検出も専門研究者に依頼して実施した。その結果、残存デンプン粒は保存されていることが明らかとなったため、学会で口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は計画通りに進まない事情があったが、今年度は昨年度の未着手分も含めて、当初の計画通りに進めることができた。特に、現生資料および遺跡資料の調査が進んだことから、口腔病理痕に関する事例を増加することができた。また、歯石に残る微化石から食性を追求できる可能性も示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は最終年度にあたるため、昨年度までに収集できた文献や資料を総合して、動物考古学における古病理学の有効性を示すため、現生及び遺跡イノシシ属・イヌで実施している口腔病理に関する研究を推進していく予定である。特に、イノシシ属に歯石が付着している成因について明らかにできるよう、動物学、獣医学的知見も含めながら、縄文時代や弥生時代以降の資料を対象に調査を進め、学会や論文などで発表していく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が若干出ているが、ほぼ計画通りに進んでいるため問題はない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度使用できなかった額は、次年度の物品費の一部に使用する計画である。
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