2015 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおける鉛釉陶器の原料とその時間的・地域的特徴に関する研究
Project/Area Number |
25350399
|
Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
降幡 順子 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (60372182)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 奈良三彩 / 渤海三彩 / 施釉瓦 / 鉛同位体比分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、陶器、瓦磚などに施された鉛釉に用いられる鉛原材料や胎土粘土の変遷、さらに時代とともに変化する生産技術、流通に関する変遷を究明することを目的としている。最終年度にあたる本年度は、鉛釉が施された陶器および瓦磚資料の材料調査を引き続きおこない、その生産地に関する化学的特徴を明らかにした。 本年度は主に二つの時代と地域に着目した。ひとつは平城京内に所在する寺院跡から出土した釉薬を施された瓦・垂木先瓦・磚の検討である。施釉瓦・垂木先瓦・磚と資料の別を明確にし、それらの胎土粘土の特徴、さらに出土地との相関について分析事例を増やし検討した。その結果、奈良時代後期を中心とする寺院の瓦生産地における原料の共通性と寺院特有のばらつきを示すことができた。 ふたつめは9世紀前半の平安緑釉の生産地による生産技術上の相違について検討した。9世紀代の遺跡から出土する緑釉陶器の産地としては、京都(洛北・洛西)・尾張・長門が知られているが、今回は京都(洛北)と尾張(猿投窯)産と考えられる資料群を対象とした。その結果鉛以外の釉薬の化学組成、特に尾張産のK2O含有量の多さが明らかとなった。この相違は、植物灰やカリ長石などの添加物が生産地により違う点に起因する可能性があり、灰釉との関連も含めて興味深い結果であり今後も慎重に検討する必要がある。 これらの成果は、学会、紀要等で発表し、さらに鉛釉陶器や鉛ガラスの鉛原材料や7世紀代に遡ると考えられている鉛釉磚などの研究成果は、国際会議や講演会、市民講座などを通して情報公開に努めた。
|