2013 Fiscal Year Research-status Report
美術館における言語教育プログラムの国際比較:マルチカルチュラルな美術館への提言
Project/Area Number |
25350405
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
木下 綾 東海大学, 外国語教育センター, 講師 (10609407)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 美術館 / 教育 / 言語 / グローバル・モビリティー / アート / レリバンス / 移民 |
Research Abstract |
2013年度は、予定通り主要な文献(博物館学、博物館教育学、言語教育学、美術教育学、移民学、市民権、文化権など)の収集および調査を行い、理論的枠組の構築を始めることができ、発表など(2013年9月高松「文化経済学会アジアワークショップ」、2014年3月台北「創造産業と文化経済学会」)を通し、専門家からのフィードバックなども反映させ、より精緻なフレームワークを描くことが可能となった。 具体的には、21世紀に入り美術館は「グローバル・モビリティーの時代」において「新たな役割」を見い出していると仮定し、その歴史的背景、最近の展開、そして将来の展望を「レリバンス(その時代に即した存在意義)」の追求から検証していく。 また、2014年度に予定していた現地調査先の一つ、ハーバード大学美術館でプログロム担当者にインタビューに行くことができ、予定よりも早く研究を進めることができた。また、現地調査では、プログラム開発者や協力関係にあるNGO団体などの連絡先なども紹介を受けることができた。そのため、2014年度以降の現地調査で、さらに詳細なプログラム開発と実践について、開発者および参加者、教員などから多角的に情報収集が可能となる。 2013年8-9月の現地調査では、上記のハーバード大学美術館以外に、ルイジアナ近代美術館(デンマーク)、マルメ大学(スウェーデン)、近代美術館(NY, アメリカ)、グッゲンハイム美術館(NY, アメリカ)、テネメント・ミュージアム(NY, アメリカ)、ICA現代美術館(ボストン、アメリカ)での調査・情報収集を実施した。マルメ大学には、「移民・多様性・福祉研究所」があり、IMISCOE移民学会にも参加することができた。「アートと移民/市民権」は、新しい学術領域であり、今後ますます発展する分野であることを、ヨーロッパの研究者の発表から知ることができ、有意義であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2013年度のうちに、2014年度に予定していた現地調査先の一つ、ハーバード大学美術館でプログラム担当者にインタビューおよび情報収集に行くことができ、予定よりも早く研究を進めることができた。 そして、学会などでの発表の機会が予定よりも早く得られたことも、研究を進展させることができた要因の一つである。専門家からの示唆に富んだフィードバックは枠組み構築に多いに役立った。 文献資料の収集・調査、理論的枠組みの構築、他の現地調査などは、予定通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度は、引き続き現地調査を行い、情報収集・インタビューなどを進める。また、学術誌への執筆や国際学会(国際文化経済学会を予定)での発表を行うことで、専門家からのフィードバックを反映させ、同時に他の研究成果から学ぶことができる。 現地調査先は、調査続行中のハーバード大学美術館(ボストン)以外に、NY近代美術館において視覚思考戦略(Visual Thinking Strategy)プログラムを開発した専門家たちのVTSの普及活動団体VUE(ニューヨーク)、見る方法(Ways to Look)により創作中心だった教育プログラムに鑑賞方法を取り入れたTate Modern(ロンドン)、赤十字と協力して難民児童に向けたプログラムを提供しているルイジアナ近代美術館(コペンハーゲン)などである。 さらに、データ分析の過程に進み、人数や予算の面などにおいて部分的に定量的データ分析、そしてインタビューや参加者の文章やプログラム観察などによる定性的分析を行う。 2015年度は、引き続きデータ収集とデータ分析を行う。データ収集では、美術館教育研究部門のある全米美術教育学会年次大会National Art Education Association(アメリカ)、国際博物館会議(ICOM) 教育と文化活動委員会の年次大会(開催地未定)などの専門家の集まる国際学会が中心となる。研究大会などで新しく入手した情報も含めてデータ分析を完了させる。最終的な研究成果は出版およびホームページ上での公開を目指す。本研究はマルチカルチャー化する社会における美術館教育プログラムについての研究ではあるが、そもそも美術館は誰のものであるかを考える機会を提供し、少しでも多くの人がそれぞれの生活で美術館を利用するようになるために、情報発信をする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定より進んだ研究の進捗状況に応じて、急遽「前倒し請求」を行う時期(2013年11月)に算出した予算であったため、実際の執行予算との間に差が生じた。具体的には、台北の学会が招待であり、航空券以外は学会によって支払われたため。 データ処理用のパソコンを一台購入するのに充当する。
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