2015 Fiscal Year Annual Research Report
美術館における言語教育プログラムの国際比較:マルチカルチュラルな美術館への提言
Project/Area Number |
25350405
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
木下 綾 東海大学, 外国語教育センター, 講師 (10609407)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 美術館 / グローバリゼーション / モビリティ / アート / 言語教育 / 移民 |
Outline of Annual Research Achievements |
27度はデンマーク、スウェーデン、アメリカをフィールドに、さらなるインタビュー調査、文献調査を継続した。そして、研究成果発表は「日本文化経済学会」と"Inclusive Museum"の年次大会で実施した。執筆は「アートマネジメント研究」にVTSのワークショップの考察を掲載し、「ミュージアム・マネージメント学事典」のキーワード「言語教育プログラム」を担当した。 本研究では21世紀の美術館が果たす新しい社会的役割の一つを「言語教育プログラム」を通して明確にした。理論的枠組みとして、コンテンツ、情報、美術館そのものの移動に加え、人々は様々な目的(旅行、出張、留学、移住など)で、より頻繁に速く移動する「グローバル・モビリティーの時代」であることを設定した。昨年夏の現地調査中にシリアなどからEU圏への移民の大量流入が起こり、北欧まで電車で移動する移民を目の当たりにした。「言語教育プログラム」は、ますます必要性が高くなるだろう。ただし、実際に移民を対象にするものが多いが、対象層を広げる柔軟性と潜在力のあるプログラムでもある。母語も含めた言語能力、相互理解力、他分野にも成果があり、医学部生、警察や情報機関の職員や民間企業など多様な分野で評価され始めている。 言語化された内容は新しい作品評価への道を開く。また、個人の視点・経験・表現を重視する環境はエンパワメントおよび相互理解の基盤を築く。様々なアートと人びとが出入りする美術館は、地域社会やグローバル・コミュニティーに不可欠な存在となりえる。新しい環境に適応しようとしている個人にとっても、美術館はかけがえのない場所となりうる。 昨年10月から客員研究員としてアメリカに転出し、出版に向けてフォローアップのインタビューや会議参加を実施している。出版では、美術館側からのインクルージョンだけでなく、個人が生活に美術館を取り込むインクルージョンも提案する。
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