2013 Fiscal Year Research-status Report
入館料問題を切り口とする博物館の公共性に関する研究
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25350406
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
瀧端 真理子 追手門学院大学, 心理学部, 教授 (70330165)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 博物館 / 入館料 / 優遇措置 / 公共性 / アメリカ合衆国 / ミュージアム / 寄附 / 公共図書館 |
Research Abstract |
1.アメリカ合衆国の博物館入館料に関する調査を行った。 (1)ニューヨークでの実地調査(8月19~25日):子どものいる低所得世帯に無料パスを発行しているNPO”Cool Culture”本部を訪問、資料収集。ブロンクス動物園・グッゲンハイム美術館の無料日/時間帯の利用状況を参与観察し、観察・鑑賞を妨げるほどの混雑状況を確認した。ニューヨーク植物園、ブルックリン美術館等で資料収集と無料イベントの参与観察を行った。 (2)合衆国全体の入館料調査:『地球の歩き方』(各分冊)・『ロンリープラネット』掲載館全ての入館料と、各館公式HP掲載の入館料を一覧表にまとめた。この作業から判明した様々な入館無料・割引制度を整理し、「アメリカ合衆国の博物館入館料に関する調査(1)」として公表した。年度内に整理して公表できたのは、アラスカ、ロスアンゼルス、シアトル&ポートランド、フロリダ、ハワイ、ワシントンDC、及び『地球の歩き方 アメリカ2013-14年版』(全土版)1-292頁分までである。判明した主な傾向は以下の通り。①子ども無料、シニア・ユース・学生に割引、軍人は無料ないし割引、②完全な寄附制の館は稀、③大半の館で団体割引、④スミソニアン協会の博物館群は無料、⑤アラスカ・ハワイ・フロリダでは居住者優遇、⑥Membersは何度でも無料入館可、⑦企業の寄附で特定の日時を無料にする例、⑧税制利用で無料を実現する特別区域、⑨大口寄附で年中無料を実現した例、⑩福祉カード提示、無料券配布等で低所得者を無料とする制度、⑪所得制限なしで子ども・ユース・学校団体へ無料・割引する例、⑫公共図書館との連携プログラム、⑬教育者に対する無料入館、⑭基金等によるもの、⑮博物館の互恵・連携組織によるもの、⑯民間団体による顧客サービス等。 2.「日本の動物園・水族館は博物館ではないのか?」を執筆、日本動物園水族館協会が博物館法23条の原則無料に反対した経緯を解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2013年度の研究実施計画の達成度 (1)海外文献の収集が遅れている。これは(3)の作業を優先したためである。 (2)ニューヨーク市内での、Cool Culture本部の訪問や、無料日・無料時間帯・無料イベントの参与観察については、当初の計画を達成することが出来た。 (3)入館料の実態調査:日・英・米・ニュージーランドの料金制度の比較を行う計画であったが、実際に作業を行ってみると、膨大な時間と手間がかかることが判明した。2013年度は、アメリカ合衆国のガイドブックからの入館料入力作業はほぼ終わったが、公式HPと照合し、表を整形する作業は、全体分量の半分程度が終わったところであり、完成した前半部分のみを公表した。なお、ニュージーランド、ロンドンについても『地球の歩き方』掲載分の入館料データの入力作業は終わっているが、館HPとの照合や表の整形作業が終わっていない。このため、4ヵ国間の比較はまだ出来ていない。計画の段階で作業量の予測に失敗していたことが、遅延の最大の理由である。 (4)当初予定では2016年度に行う予定であった「日本での博物館及び図書館の入館無料を巡る議論の整理」の内容に一部重なる形で、「日本の動物園・水族館は博物館ではないのか?-博物館法制定時までの議論を中心にー」を執筆し、博物館法制定当時、日本動物園水族館協会が博物館法23条の原則無料に反対した経緯を明らかにした。この部分については当初予定より早く進行したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)2014年度は、前年度に未完であったアメリカ合衆国・ニュージーランド・英国の入館料調査を完成させる。このことによって3ヵ国の比較を行う。日本の入館料調査は2015年度以降に繰り越す。 (2)「ニュージーランドでの公的部門改革と国立館有料化検討の際の議論の調査」に関しては、2014年度に予定通り行う。入館料有料化を阻んだ原因として先住民族への配慮が関係しているのかについては、実地調査も含めて検討する。 (3)「英国の政権交代に伴う博物館政策の変遷と文化財返還請求問題の検討」は当初の計画通り2015年度に行う。この結果を(2)のニュージーランドに関する調査結果と比較する。 (4)日本の博物館の入館料調査を行い、また日本での入館料を巡る議論を歴史的に整理する。またアメリカ合衆国に関する文献調査を完成させ、日・米・英・ニュージーランド4ヵ国の比較を行う。これらの結果を踏まえ、日本で無料制度・優遇措置を拡大することの是非を検討するとともに、入館料収入を補完しうる寄附金獲得等の代替策について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
文献資料の図書館を通じた複写・相互貸借に、学内システム上、科研費を用いることが出来なかったため。また、購入すべき図書類のリストアップ作業が進まなかったため、図書購入が遅れているため。 文献資料の購入に充てるとともに、遅れている入館料データの入力作業に必要な謝金に充てる。
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Research Products
(7 results)