2013 Fiscal Year Research-status Report
誰もが楽しめる安全な展示手法の検討-特に幼児と高齢者へ配慮した展示を目指して-
Project/Area Number |
25350409
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanagawa Prefectural Museum of Natural History |
Principal Investigator |
加藤 ゆき 神奈川県立生命の星・地球博物館, 企画情報部, 主任学芸員 (70342946)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
広谷 浩子 神奈川県立生命の星・地球博物館, 学芸部, 専門学芸員 (10205099)
大島 光春 神奈川県立生命の星・地球博物館, 企画情報部, 主任学芸員 (40260343)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 博物館資料 / 博物館展示 / 資料作製ボランティア |
Research Abstract |
本研究は、博物館資料の一般への公開をすすめるにあたり、年齢を問わずだれでも安全に楽しむことができる展示物を検討、作製をすすめること、それらを活用した展示手法を明らかにすることを目的としている。 平成25年度は、具体的な調査項目を(1)資料作製手法の現状調査、(2)資料作製ボランティアとの協働による資料試作、(3)当館常設展示室での来館者の動向把握、の3つに設定し、特に(1)と(2)について重点的に調査をすすめた。 (1)資料作製手法の現状調査:展示や講座に利用される機会の多い本はく製の作製手法について、哺乳類のはく製を解体し、その構造と使用薬剤について解析を行った。また、国内の他博物館において、どのような手法、薬品を用いてはく製を作製しているのかをまとめた。業者へ委託する場合を除き、大部分の博物館は薬剤の使用量を極力控える傾向であった。作製方法に関してはさまざまな手法を用いているが、「触ること」を前提として作ったものはほとんど見られなかった。 (2)資料作製ボランティアとの協働による資料試作:ボランティアとともに鳥類の本はく製とほ乳類なめし皮の試作を行った。作製時には、「触ること」を前提としているため、使用薬品の安全性、胴芯の材質、強度などを特に考慮した。 (3)当館常設展示室での来館者の動向把握:鳥類および哺乳類の展示において、幼児や高齢者がたどる動線、展示物や解説パネルへの注視度、展示物に触る頻度や反応について、直接観察により調べた。結果、特に幼児に対して展示物の位置の高さや解説パネルの内容など、いくつか問題が抽出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初設定した調査項目のうち、(3)当館常設展示室での来館者の動向把握、については、十分な調査を行うことができなかった。これは、調査対象者を高齢者及び幼児に設定し、直接観察による動向把握を進めてきたが、予想以上に幼児の動線の解析が難しく、また展示物への反応が読み取れない場面が多々あり、時間を要したためである。この結果を受け、設置場所などを検討する予定であった展示室へのビデオカメラの導入もできていない。 しかし、この項目は研究全体の根幹となる非常に重要な調査であるため、十分に時間をかけて内容を検討、解析を進めていきたいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、調査項目(3)当館常設展示室での来館者の動向把握、について来館者の直接観察による行動調査が不十分であり、次の段階として予定していた展示室へのビデオカメラ設置及び動画解析による来館者の展示物に対する反応調査を行うことができなかった。しかし、本研究にとって非常に重要な調査であるため、以下のような方策で進めていきたい。 (1)、新たなるスタッフへの協力要請 幼児の博物館利用を積極的にすすめている学芸員に協力要請を行い、行動解析が十分にできていない幼児に関する調査をすすめる。 (2)展示室へのビデオカメラ設置を行い、行動解析をすすめる。 (1)の結果を受け、早い段階で展示室へのビデオカメラの設置をすすめる。動画の解析については、研究分担者のほか、行動解析に慣れている調査補助員を雇用する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた展示室へのビデオカメラ設置及びその解析のための調査補助員の雇用を予定通り行うことができなかったこと、海外の博物館の視察を計画していたが、内部異動の関係で仕事内容に変更が生じたため、実施できなかったことが大きな理由である。これらはすべて、来館者の行動解析が予想以上に難航したためである。 26年度前半に、新たに協力要請をしたスタッフとともにビデオカメラなどを用いた行動解析を進める。後半は高齢者や幼児など、広い年齢層の利用を想定してリニューアルされた国内の博物館や、教育用・展示資料を研究用資料とは区別して作製している海外の博物館を視察し当館への応用を図る。
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