2014 Fiscal Year Research-status Report
2011年東北地方太平洋沖地震津波による地形変化と再生過程
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25350419
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
小岩 直人 弘前大学, 教育学部, 教授 (70296002)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 晶文 山形大学, 人文学部, 准教授 (40381149)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 津波 / 土砂 / 海浜 / 海岸侵食 / GPS測量 / GIS / DEM / キネマティック測量 |
Outline of Annual Research Achievements |
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う津波は,東北日本太平洋沿岸の広い範囲において甚大な被害をもたらした.この津波では,海浜地形が侵食され著しい地形変化がもたらされた場所も多い.本研究は,これらの地形がどのように回復するのかを明らかにする試みである. 調査地域の津波前と津波直後の地形変化を定量的に把握するために津波前(2006年前後)および津波後(2011年)に国土地理院により整備されていた2mメッシュのDEMを使用,津波後の土砂の堆積量を検討するため高精度GPSを用いたキネマティック測量を実施し,これらのデータをESRI社のArcGIS10.2を援用して地盤高度分布図を作成した. 平成26年度は,青森県大須賀海岸,宮城県野蒜海岸,蒲生海岸,福島県須賀海岸の調査を継続した.野蒜海岸では,津波時の侵食が著しい南部の海岸では,2014年までに侵食された土砂量(1万m3)よりも,多くの砂が堆積している(3万m3)ことから,十分な海浜地形の回復がみられると判断された.しかしながら,鳴瀬川右岸の野蒜海岸は,砂浜全体の体積は,津波前が46万m3であるのに対し,津波後(2014年)には39m3と砂浜の体積は減少している.以上の事実から,野蒜海岸南部において激しく侵食された海岸は,津波後の北部の海岸侵食(約50mの後退量)による土砂で修復されており,砂浜全体では縮小する傾向にあることが明らかになった.他の調査地域においても,侵食された部分は新たな土砂の堆積が顕著であり,津波時に侵食された土砂と同等,またはそれ以上の砂の堆積がみられたが,周辺の海岸を大きく変化させている地域が多いことが指摘できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,平成25年度において,衛星画像や空中写真の解析により,津波時に地形変化が著しかった海岸を抽出し,そのいくつかの地域で現地調査を実施してきた.平成26年度は,これらの中で津波以降に大きな地形変化が生じている地域をピックアップし,集中的に調査を行ってきた.データの解析も順調に進展し,成果が蓄積されつつあり,その中間発表も日本地理学会で行うことができたことから,「おおむね順調に進展している」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
岩手県~宮城県の海岸部では,津波後,復旧工事の進展により,想像以上に人工的な改変が行われつつある.今後,これまでデータを集積してきた地域で継続的な調査は困難になることが予想される.今後は,その中でも,調査可能な地点を選定し,継続調査を実施するとともに,本研究の成果を国際学会での発表,および学術雑誌へ投稿することで公表する予定である.
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Causes of Carryover |
本研究では,現地調査では高精度のGPSを使用しているが,その中の1台が不安定な状態にあり,データの効果的な収集が困難な場合もでてきたため,次年度の予算で代用できるGPSを購入することとした.そのため,該当年度の現地調査の回数を減らし旅費の使用を押さえ,予算の次年度への繰り越しを行った.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は,当初の予定より現地調査の回数を増やすとともに,使用方法が限定されるため低価格の高精度GPを購入する.
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