2013 Fiscal Year Research-status Report
中央アジア及びヒマラヤの小規模氷河湖分布地域における氷河災害の軽減に関する研究
Project/Area Number |
25350422
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
奈良間 千之 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (50462205)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 菜穂 東北大学, 学内共同利用施設等, 助教 (10450264)
浮田 甚郎 新潟大学, 自然科学系, 教授 (80272459)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 氷河災害 / 氷河湖 / 中央アジア / 天山山脈 / アウトリーチ / 氷河湖決壊洪水 |
Research Abstract |
本年度の成果として,中央アジアの天山山脈では,キルギス山脈のソクルク谷とアラアルチャ谷,サリジャズ地方の南イニルチェック氷河で,西ヒマラヤでは,ラダーク山脈のニモ谷で現地調査をおこない,本研究課題に関するデータを収集できた.さらに,研究遂行のための現地サポート体制の構築として,中央アジア応用地球科学研究所とMOUを締結し,ラダークのLEDeGとの話し合いで今年度のMOU締結に関して合意した.ラダーク地方災害委員会のメンバーと面会し,本計画についての協力を得られた.ラダーク山脈のニモ村の村長と面会し,調査許可とワークショップ開催の協力を得られた. 研究内容についての成果は,中央アジアの天山山脈地域における氷河湖決壊洪水の決壊の仕組みが明らかになりつつある.キルギス山脈において,ALOS AVNIR-2/PRISM,Landsat,Corona,空中写真を用いて氷河湖面積の変動を調べたところ,短命・繰り返し型と変動型(拡大・縮小)の二つのタイプが存在し,短命・繰り返し型の氷河湖タイプが3割近くを占めていることがわかった.過去の氷河湖決壊洪水を調べると,短命氷河湖タイプの出水が多いことが明らかになった.キルギスタン東部の山岳地域の岩屑被覆氷河を対象に突発的な大規模出水の現象について調査したところ,1998~2011年にかけて,氷河上湖は急激に発達して消失するという季節変動がみられ,経年変化も同様の現象が確認された.岩屑被覆氷河の大規模出水は,岩屑被覆氷河の氷河内水路の開放の過程であり,岩屑被覆氷河では普通にみられる現象であることがわかった.この結果は,短命氷河湖の発達と出水現象の仕組みと共通する点が多く,この地域の氷河湖決壊洪水のプロセスに関する多くの新知見が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の現地調査では,キルギス山脈のソクルク谷とアラアルチャ谷,サリジャズ地方の南イニルチェック氷河で,西ヒマラヤでは,ラダーク山脈のニモ谷で予定通り実施でき,新たな調査結果を得られた.キルギスタンでは,氷河,永久凍土,氷河湖について総合的な研究が進められており,氷河湖研究に関する新知見が得られつつある.研究成果の公表としては,2013年2月に信州大学山岳科学研究所主催の国際シンポジウムで講演し,同年3月の日本地理学会において3件の研究発表をおこなった.ラダーク山脈の氷河湖インベントリに関する論文原稿を提出した.同年4月の地球惑星科学連合大会でも2件の研究発表を予定している. 課題としては,洪水モデルによる氷河湖決壊洪水の洪水範囲の推定についての研究が遅れており,複合ハザードマップの作成を今年度集中して進めていきたい.キルギスタンでのワークショップについては時期と開催場所がまだ決まっていないのでこの夏に決定する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は研究を促進させるため,予定よりも遅れている洪水モデルによる氷河決壊洪水範囲の推定や複合ハザードマップの完成に全力を注ぎたい.キルギス山脈に加える複合ハザードマップに加える氷河変動量,山岳永久凍土の空間分布,氷河湖の洪水範囲推定などのデータは今年度そろえることができる.インドのデータがまだ十分でないので,こちらのデータも増やしていく.キルギスタン,インドでのワークショップ準備を進めるとともに,氷河湖のインベントリの出版を急ぎたい.これまでの成果を国際学術誌に投稿していく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度に納入予定の機器が購入時点の価格変動により想定外の価格で購入できたため僅少の残金が生じた。 未使用額は次年度に購入予定の研究機器の経費に充てることとしたい。
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Research Products
(8 results)