2013 Fiscal Year Research-status Report
地殻変動の様式変化による山地河川発達への影響:室内モデル実験と力学的理解
Project/Area Number |
25350424
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
遠藤 徳孝 金沢大学, 自然システム学系, 助教 (60314358)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片岡 香子 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 准教授 (00378548)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 室内モデル実験 / 河川発達 / 隆起 |
Research Abstract |
河川網が発達した状態で、流域内の一部にテクトニックな活動が生じた際の影響を調べることを目的に室内モデル実験を行った。幅90センチ、長さ180センチの水槽内に、砂と粘土の混合物を入れ、噴霧装置により降雨を与え、水系網を発達させた。5時間降雨のみを与え、続く10時間に降雨とテクトニックな隆起活動の両方を加え、その後再び5時間降雨のみを与えた。これと、降雨のみを15時間与える実験とを比較しながら、発達過程を検討した。尚、本実験では、実験中河口での堆積によりベースレベルが変化する効果を取り除くため下流端に堰を設けた。これにより、排出される土砂は実験観察領域内に影響を及ぼさない。 流域内に部分的な隆起が起きると、河川は以下のような応答をすることがわかった。(1)河川流路の平面形状は、おおむね隆起域を避けて流れる傾向になる。しかし、部分的に隆起域を貫いて流れ水隙を生じる流路も形成される。従来認識されてきた一般論「河川の下刻速度とテクトニックな隆起速度の大小関係で、水隙形成と流路放棄のどちらが生じるかが決まる」という理解は、ある地点、ある時刻については正しいが、全体を通してみるとそれほど単純ではない。隆起に伴って、流路同士の合流位置が変化し、場所ごとの流量は大きく変化する。それによって下刻速度も、時間的にも空間的にも変化し、たとえ隆起速度が一定でも系全体では複雑なふるまいをすることが明らかとなった。(2)自然界の河川縦断形は下に凸の指数関数形であるとされる一方、多くのモデル実験、特にベースレベルが変化しないよう堰を設けた実験では、流路の縦断形は直線的にあることが知られている。しかし、本研究では、テクトニックな活動に伴って生じた隆起域を源流とする河川の縦断形が下に凸の縦断形となることを確認した。一方、隆起域よりも上流に源流をもつ河川の縦断形は直線的なままだった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験試行回数はまだ多くないものの、部分隆起の影響をはっきりとらえることができた。今後隆起速度の依存性などについて調べていく必要があるが、時間的に十分実行可能である。また、今回開発した部分隆起の装置が期待通りに働き、十分な成果を得られることが確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も部分隆起の実験を続けるが、さらに細かく、隆起速度が場所に依存する場合についての実験ができるように、装置に改良を加える。さらに、定性的な観察に加えて、今後は通常自然地形のデジタルデータに用いられるGIS解析を、実験で得られた地形データに対して行い、定量的議論を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
導入予定の装置が期待通りに作動するかどうかを見極めるために、複数の昇降装置(隆起させるためのもの)を設置する前に、単独の装置での実験を実施した。単独の装置の動作確認には、実際に実験を行う必要があるため、昨年度いっぱい時間をかけて行い、実際に実験データの取得も行った。そのため、複数の昇降装置の導入を次年度に先送りした。 昨年度の実験により、装置の設計に問題がないことが確認できた。今後、若干のサイズの変更を行いつつ、複数の昇降装置を同時に、且つ、独立に制御できるシステムを構築する。改良された実験装置を用いて、より詳細な実験を行う。
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