2015 Fiscal Year Research-status Report
長波長・小振幅の変形が卓越する海岸域の地殻変動に関する変動地形学的研究
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25350431
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
渡辺 満久 東洋大学, 社会学部, 教授 (30222409)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 海成段丘 / 海底活断層 / 撓曲 / 地形発達 / 地震性地殻変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度末の時点で整理していたように、青森県下北半島の六ヶ所村や三陸海岸北部を調査地域とするほか、北海道や紀伊半島沿岸地域においても調査を実施した。六ヶ所村周辺においては、六ヶ所断層による海成段丘面の撓曲変形を、露頭観察やDEMを用いた地形解析によって、より明瞭に提示することができた。また、下北半島東部のように、海岸線と並走する活断層が大規模な撓曲帯を形成する場合には、新期の海成段丘面は撓曲崖にアバットして形成されるという特徴も明らかにした。これらの研究結果を、学術雑誌・活断層研究に投稿し、44号に掲載されることが決定した。 三陸海岸の調査においては、海成段丘面の編年に重要な試料を得ることができなかった。しかし、岩手県久慈市付近より北方の、三陸海岸に分布する海成段丘面の全容を図示することができ、久慈市周辺においてのみ、海成段丘面が海側へ撓曲しているという事実を確認することができた。このような変動地形は、海岸線に近接する海域に存在する海底活断層の活動によって形成されたと考えられる。研究成果は、地球惑星科学関連学会2015年連合大会において報告した。現在、E-Jounal GEO に投稿する準備を進めている。 北海道の積丹半島では、南西岸には隆起ベンチや海成段丘面が分布するのに対し、北東岸にはそのような変動地形は認められないことを明らかにした。本地域は「長波長・小振幅の変形」が卓越する地域ではないが、海岸線と並走する海底活断層が分布する地域として、下北半島や三陸海岸との比較を行い、変動地形形成を考察する上で重要な成果が得られたと考えられる。積丹半島での研究成果は、日本地理学会2015年秋季学術大会、日本活断層学会2015年度秋季学術大会において公表し、現在、論文化を進めている。紀伊半島の調査は継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
三陸海岸においては、海成段丘面の編年に関する十分な試料を得ることができなかった。また、海底の音波探査は当初予定していた機器が不調であること、岩礁が多いために良好な調査結果は得られないと判断し、調査の実施を見送った。しかしながら、下北半島において海成段丘面が海側へ撓曲する確実な事例を提示し、それが地形発達に大きな影響を与えていることを明らかにすることができた。その研究成果は、査読つきの学術雑誌への掲載が決定している。三陸海岸や積丹半島においても、幾つかの新知見を得ることができ、複数の学会で公表してきた。いずれも、学術雑誌への投稿を準備している段階である。これらのことから、2015年度に想定していた研究内容のかなりの部分は達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
北海道・積丹半島において補足的な調査を実施する。紀伊半島沿岸息では、海成段丘面を変位させる逆向き活断層を新たに見出しており、海岸地域を隆起させる海底活断層の活動との関係で、この活断層を位置づけてゆきたい。「長波長・小振幅の変形」が卓越する海岸の特徴を際立たせるために、若狭湾などの変動地形調査も追加してゆくつもりである。なお、駿河湾周辺において、新たな活断層を認定しつつあるので、予察的な調査・研究を進めてゆきたい。
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