2014 Fiscal Year Research-status Report
リハビリパス設計モデルを用いた脳血管疾患患者に対する標準的なリハビリパスの開発
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25350436
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 省吾 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (80516766)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リハビリテーション / 品質管理 / 質マネジメントシステム / 社会システム / モデル化 / 標準化 / 臨床プロセス / 管理指標 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)障害構造の特定:理学療法士(以下,PT)・作業療法士(以下,OT)が対象とする障害構造と,言語聴覚師(以下,OT)が対象とする障害構造に分けて整理を進めている.PTOTが対象とする障害構造は,能力を基本動作とADLとしていたところ,基本動作と作業動作に新たに分類し,基本動作を構成する8つの能力要素を特定した.作業動作についても同様に構造化する予定である.STが対象とする障害構造は,H25年度の段階でほぼ構造化したが,機能障害に一部不足があることが予想されており,引き続き検討していく.いずれも,機能障害と能力障害の関係については引き続き検討が必要である. (2)障害構造を考慮した訓練導出モデルの再設計:基本動作に関する能力要素,必要能力表を構築した.作業動作のうち,食事時の手作業に関する能力要素と機能要素の一部,および必要能力表の一部をそれぞれ作成した. (3)障害構造を考慮したリハビリチャートの再設計:PTOTが対象とする障害では,再設計した能力要素に基づいて基本動作獲得チャートを再設計した.STが対象とする障害では,嚥下障害チャートを設計した. (4)リハビリデータの収集・分析:PTOTの対象とする障害では,基本動作獲得チャートに基づいて,聖マリア病院で臨床データの収集を開始した.STの対象とする障害では,嚥下障害チャートに基づいて,聖マリア病院・飯塚病院・大久野病院で臨床データを収集した.現在データの解析を行っており,患者の特徴に応じた標準的な回復量,回復速度,最適ルートなどを検討中である. (5)リハビリパスの開発:STの対象とする嚥下障害について,各ユニットにおける評価項目と介入項目を整理し,具体的なリハビリパスを構築した.PCAPS(患者状態適応型パスシステム)上で運用できる電子コンテンツを作成し,聖マリア病院でH26年12月から実装して運用中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H25年度に(1)障害構造の特定を行った段階で,障害構造が当初の予想よりも複雑であることが明らかになり,計画の見直しをする必要性が生じた.機能障害と能力障害の関係性を全て明らかにするのは現時点では容易ではなく,全体を統合した1つのパスを構築するのは現実的ではない.機能障害・能力障害それぞれの階層で,障害ごとにパスを設計していくことが現実的であると判断し,そのような方針で研究を継続している. 現在のところ,(1)(2)(3)を部分的に完成させながら,順次(4)(5)に進んでおり,一部の障害(STが対象とする嚥下障害)に対するパスは完成の域に達しており,電子化したパスを聖マリア病院で実装して運用されている.ある程度の臨床データを蓄積して分析した段階で,飯塚病院,大久野病院でも実装して(6)の検証を進めていく予定である. このように,個別の障害を対象としてパスの開発を進めており,一部の障害(基本動作,嚥下障害など)については当初の予定よりも先行して進んでいるのに対して,他の障害ではまだチャート化に着手できていないところもある. 当初の計画からするとやや遅れており,目標全体を達成するのは現実的ではないが,H25年度の実績報告書で再検討した方策に基づけば,順調に推移していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画では全ての障害に対して(6)リハビリパスの検証まで実施する予定であったが,H25年度に(1)障害構造の特定を行った段階で,障害構造が当初の予想よりも複雑であることが明らかになり,計画の見直しを行った. PTOTが対象とする障害,STが対象とする障害から,それぞれ1つ以上のパスを(6)リハビリパスの検証まで行うことが現実的な目標である. 現在,STが対象とする嚥下障害が最も進んでおり,これまでに(5)まで終了して(6)まで実施可能であると考えられる.PTOTが対象とする障害では基本動作が最も進んでおり,これまでに(4)の途中まで進んでおり,期間中に(5)(6)まで実施可能であると考えられる. 他の障害に対するパスについては期間中の完遂は現実的ではないが,それぞれの職種で1つ以上のパスで(6)まで完遂させておくことにより,同様の方法で今後展開していくことが可能であると考えられる. 機能障害と能力障害の関係については,期間中に明らかにすることは容易ではない.データによるエビデンスが少ないリハビリテーションの分野においては,まずは臨床データを蓄積することが重要である.したがって,機能障害・能力障害の各階層における障害のパスをそれぞれ完成して実装し,臨床データを蓄積できる体制を整えることを優先するのが適当である.蓄積した臨床データを分析することによって新たに機能障害と能力障害の関係を構造化していくことが可能になることが期待され,これは本研究の次の課題として設定するのが妥当であると考える.
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Research Products
(28 results)