2014 Fiscal Year Research-status Report
スマート・レジリエントなロジスティックスの実現と向き合う最適化工学の展開
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25350442
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
清水 良明 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 客員教授 (10109085)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳 在圭 金沢大学, 経済学経営学系, 教授 (20324494)
阪口 龍彦 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00403303)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リバースロジスティックス / 巡回配送計画問題(VRP) / 組合せ最適化問題 / ハイブリッドメタ解法 / 多目的最適化 / 生産計画・スケジューリング統合最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
輸送のグローバル化やJIT物流は輸送に伴う環境負荷やリスクの増大を伴う.また輸送手段の選択においても環境負荷やリスクと経済性の間のトレードオフ関係を考慮した検討が求められる.さらにこれまでの考察における経済性,レジリエントおよびサービス間においてもしかりである.このように概観しても明らかとなる価値の多面性やその特質についての調査から競合関係の分析を試みた.そして経済性と環境問題の対立の調整を図ることは,社会の構成員の個々の努力のみでは限界があり,地域社会における連携と協調を通じて効果を発揮できるとの認識に至った.そこで全体価値協創を可能とする協調・競争モデルの構築を志向し,この主要な要素技術となる車両巡回配送問題(VRP) の実用的な解法の開発に取り組んだ.そして輸送費用やこれに伴う二酸化炭素排出量は,輸送距離でなく輸送重量にも影響されるとするウェーバ基準の解法をまず単一デポ問題に対して提案し,次いでこれをマルチデポ問題に拡張した解法を開発した. この成果は,より総合的な立地・配送同時問題の解法として立地問題の解法との連携を可能にするものであり,本手法の開発意義は高いといえる. また循環型生産システムを形成する際に原動力になる要因を経済的側面から調べ,その要因が環境的側面に与える影響を明らかにした上で,リバースロジスティックス導入に関わる意思決定問題において適切となる評価基準を定めた. 一方,ビジネスのグローバル展開に伴うロジステックと生産計画やスケジュールとの連携に向けて,戦略的レベルの生産計画から,戦術的レベルのスケジュールに至るまでの決定を一元管理するための方法論の検討を行った.具体的には,各意思決定部門が情報交換を行いながら個別にスケジューリングを行う手法と総合的な観点からの意思決定のために,作業設計とスケジューリングを同時に行う最適化手法を提案した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グローバルで変動的な市場において持続可能性への関心が高まる中,迅速かつ柔軟に対応して供給と需要を適格にバランスさせるマネジメント手法にかなう協調的かつ競争的なロジスティックスへの取り組みが近年求めらている.こうした背景の下でのロジスティックシステムにおける全体的視野に立つ問題解決手段として,ハイブリッドメタ最適化を通じた意思決定支援手順の展開を進めてきた.具体的には,消費者と生産者が一体となって低炭素社会の実現を促すため,生産方式および拠点配置と輸送手段の選択について考察できる多階層ロジスティックスネットワークの最適化モデルの構築と解法の開発を行った.そこでは,従来のVRPで取り上げられることのなかったウェーバ基準の輸送コストを採用する解法を導入することで実用性の向上に努めた.ウェーバ基準は現実的な評価尺度であり,戦略的な施設配置問題では一般的に適用されてきているのに対して,運用レベルのVRPでは適用されておらず,今後のより総合的な立地・配送同時問題の解法の開発に向けて高い意義を有する. またリバースロジスティックスに関わる意思決定に求められる評価基準の選定が行われたので,全体価値創出のための多目的最適化モデルへの展開に向けた基礎が整備されたことになる. さらに生産計画やスケジューリングなどの動的計画と設計の連携においては,統合的な視点からの意思決定支援が必要になることを意識した方法論の基礎開発が行われている. 上述の全ての方法論は汎用性と実用性を有しており,流通の効率化を通じた競争力の回復や持続可能な発展などの現代社会に共通する最重要課題の解決への貢献が期待される.このような領域をまたいで全体価値協創を目指す研究は他にみあたらず,最適化工学の知見の利活用を通じて幾つかの要素技術の開発と個別的応用を進めることができた. なお全般的な最終目標の下での達成度は70%程度である.
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の最終年として,過去2年間の課題の各々についてそれぞれの課題の設定(価値システム,問題の与件,問題の定式化)を最適化工学の視点から再検討することにより現実の問題解決能力の向上を計る.またこうした見直しにより生じるロジスティックモデルの改良やこれに伴う求解自体の改善を含めた求解性能の一段の洗練化を目指す.その上でこれまでの成果を土台とするロジスティックス最適化の要素技術のモジュール化を通じて,任意のユーザが問題ごとに必要な要素技術を選択して組み合わせて適用できるようなオープンイノベーション基盤の構築に取り組む. また循環型生産システムにおける生産活動や再生処理から生じる環境負荷(環境的側面)とシステム運用コスト(経済的側面)を同時に最適化する多目的最適化モデルを開発する.そして,開発モデルにおける定性的・定量的な分析・評価を通じて,リバースロジスティックス導入に関わる意思決定支援手順の構築を行う. さらにロジスティクスの総合的な合理化のためには,製品設計,生産計画から配送に至るまでを統合して意思決定を行うことが必要になる.これまで個別に要素技術の構築を行っていたものを統合化するためのフレームワークの開発を行う. これらの成果の利活用により技術開発プラットホーム上に種々の応用において全体価値協創のための知のサイクルが形成できるような枠組の構築を目指す.こうした取り組みよりイノベーションや新産業創生に向けて種々の産業と地域密着型の社会基盤の構築をスマート(費用や時間をかけず)に促進できるようになることが期待されため,本成果の広範な利用を促進するための発信の工夫についても検討を進める.
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Causes of Carryover |
昨年度末に研究代表者の定年後の勤務形態の変更(専任教授より客員教授)等に伴う研究組織を見直し共同研究体制への変更が承認された.本年度はこうした新しい研究体制の立ち上げや運用上の都合から事業の執行が次年度へ一部ズレ込むことを見込んだため本要項が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越額の約40万円は経費全体の1割程度であり,本年度中に行う研究成果の発表等の旅費に組み入れて使用する予定である.
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