2013 Fiscal Year Research-status Report
エージェント間の情報伝播と群知能を応用した自律分散搬送制御システムの開発
Project/Area Number |
25350447
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
辻 康孝 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90304732)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生産システム / 搬送制御 / 群知能 / マルチエージェント / シミュレーション |
Research Abstract |
平成25年度では,複数種の処理機械,コンベア,ターンテーブル,バッファ群から構成されるフローショップ型生産システムの搬送問題に対して,処理機械と各搬送要素をエージェントと見なし,各エージェント間で情報を下流側から上流側へ伝播させることで,搬送要求の異なるワーク(半製品)の準最適な搬送ルートを適応的に自律決定する手法の開発とその有用性の評価を行った. まず伝播させる情報として,基本的には,各搬送要素から次工程の全処理機械にワークを搬送するのに要する時間を安全側に見積もれるよう定めた.ターンテーブルには複数の処理機械からの情報が伝播し,その中から最小搬送時間の経路を選択する.なお生産システムのレイアウトによっては同じ処理機械からループした情報が複数流入する場合もあるが,最小搬送時間の経路を選択するので問題はない. また補助的な情報としてワークが生産システム内を辿って行った痕跡としてフェロモン情報の定義を行った.生産システム内でのワークの渋滞(滞留)に最も関係する要素はバッファであることから,バッファに焦点を当てた定義を行い,バッファへの(流出数-流入数)で与え,さらにワークの種類別にその影響度を変えるものとした.このフェロモン情報を前述の情報伝播プロセスに組込み,より精度の高い見積を目指した. 以上の手法の有用性をシミュレーションにより評価を行った.類似研究では,バッファ容量を大きく取って実験を行っていることが多い.本実験では,その容量を小さめに制限し,併せてワーク投入口での投入制御も実装した.情報伝播におけるいくつかのパラメータを適切に調整することで良好な搬送制御を実現できた. また処理機械の故障や処理の遅延に対する提案手法の頑健性の検証を進めている.これとは別にフェロモン情報の周囲要素への拡散の導入も試みたが,シミュレーションの結果,導入の有意な効果は確認できなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度ではフローショップタイプの搬送問題に焦点を当てた搬送制御手法の数式モデルの構築を行い,提案手法の調整パラメータのチューニング手法の確立を行うことを予定していたが,効果的な数式モデルの導出が達成できなかった.提案手法では,製品投入間隔や情報伝播の間隔等のパラメータを定める必要があり,シミュレーションを多数回実行することでの調整パラメータ選定に留まった.これらのパラメータを数式モデルにより自律的に調整できれば,生産速度の適応調整へと発展させることも期待ができるため,この点も考慮したモデルの構築を実現する必要がある. またシミュレーションを用いた性能評価では,現実の生産プロセスでの時間スケールや処理時間等のデータの公開が少ないため,実際の生産プロセスの条件とのかい離が問題点として残った. 一方で,従来の研究ではあまり試みられていない複雑な生産システム,例えば異なる処理順序の製品タイプ,小さなバッファ容量制限,迂回経路を有する生産レイアウト,を対象とした性能評価をシミュレーションで行えたことは一定の成果と言える. 次に,提案手法のもう一つの特徴であるフェロモン情報を有効利用した手法の確立を目指したが,簡単で限定的な利用に留まっている.またフェロモン情報の周囲要素への拡散等も試みたが十分な効果が得られなかった.特に複数製品タイプを生産する問題への適用を目指していることから,製品ごとのフェロモン情報の定義と利用法を引き続き検討する必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
25度中にできなかった数式モデルの構築を再度試みるとともに,提案手法のシステム変動に対するロバスト性の評価とより条件の厳しい搬送要求への対応について検討を行うことを予定している. まず,数式モデルの構築では待ち行列ネットワークや整数計画法によるモデル化を参考にしながら構築を目指す.バッファあるいは処理機械への到着をポアソン分布と見なせれば,シミュレータを用いた分布パラメータ同定も可能と思われる. システム変動に対するロバスト性は実際の生産システムにおいて極めて重要な問題であるため,ここでは特に突発トラブル(処理の遅延,機械の故障)やライン変更に伴い設備の一部が停止した状況に対して安定的に生産を継続できるための方策について検討を行う.シミュレーションを使ったこのようなロバスト性能評価に対しては,システム内に特定の処理が極端に大きな製品タイプを流すことにより,システム遅延や故障を疑似的に実現して行う. ある処理を施された半製品は次の処理工程に搬送される際,制限時間内に次工程に搬送し処理を施す場合も多い.あるいは逆に,一定時間以上経たないと次工程を行ってはいけない場合も存在する.このような処理工程間に時間制約が存在する場合への提案手法の拡張を目指す.具体的には,時間制約を満足する搬送経路の見積・判定,合流部分へ送る時の優先順位や,バッファ内での製品順番のソーティングの可能性等について検討を行う.
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