2014 Fiscal Year Research-status Report
エージェント間の情報伝播と群知能を応用した自律分散搬送制御システムの開発
Project/Area Number |
25350447
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
辻 康孝 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90304732)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生産システム / 搬送制御 / 群知能 / マルチエージェント / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度提案した搬送制御手法において,各搬送要素から次工程の機械までの搬送所要時間の見積が過小に評価される問題があった.これはバッファでのワーク滞留による搬送遅延の見積りが正確ではなかったためであり,新たにバッファでのワーク滞留を適切に評価する経路情報の更新式を導入した. またワークの痕跡(フェロモン情報)として利用できる情報の拡張として,機械の累積稼働時間(時間経過とともに減衰する)を提案手法に新たに加えた.これによって機械の稼働状況や機械の処理能力の低下等を経路情報に反映することができた.前年度と同様のシミュレーション実験を行い,従来手法と比較し4-5%程度の総搬送時間の改善が見られた.また新しいフェロモン情報の効果により,各機械の稼働率のばらつきも改善された. 次に提案手法のシステム変動に対する頑健性の評価を行った.一部の機械が一時的にダウンしても安定継続して製品搬送が行われる,すなわち適応的に代替ルートを探索,切替ができるような搬送システムが求められている.提案手法はこのような状況を想定して開発しており,シミュレーションによりロバスト性の検証を行った.開発シミュレータが,機械のダウン‐復帰に対応していないため,特定の処理の処理時間が極端に大きなワークを流すことにより,一時的にその処理を行う機械を使用不可能な状況にすることで,疑似的に機械の一時的なダウンを発生させて行った.実験の結果,機械のダウンによる総搬送時間の悪化は10%程度以下であり,また新手法の方が良好な結果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は,主に提案手法のシステム変動に対するロバスト性能評価と時間制約のある搬送要求への対応を予定していたが,時間制約を考慮した手法の開発が達成できなかった. 前年度開発した経路情報の伝播則において,処理機械が送る情報が古い情報がそのまま保持されており,処理機械の適切な情報を伝播させていないケースがあった.そこで,各処理機械がワーク処理に要した時間を累積し古い情報は減衰させる,すなわち新しいフェロモン情報としての導入を行った.あわせてバッファでのワーク滞留を適切に評価する経路情報の更新式も導入することで,より正確な経路情報の伝播が行われ,前年度開発手法よりも搬送性能の改善を達成することができた.時間制約を考慮する場合,より正確な経路情報の見積もりが必要になることから,今後のシミュレータでの検証において一定の効果が期待できると考える. 次にシステム変動に対するロバスト性に対しては,主に突発的なトラブル(処理機械の一時的なダウンから復帰)への適用を目的としていた.シミュレータの都合上,一定期間処理機械を停止させる状況を実現できなかったため,特定の処理の処理時間が極端に大きなワークを流すことにより,処理機械を一定時間だけ使用不可能にすることで本年度は対応した.新しく導入したフェロモンの効果によりダウンからの復帰も適切にシミュレートできたものと考える.提案手法により,適応的な代替ルートへの搬送が行うことができたことから.概ねシステム変動に対するロバスト性の性能評価を行うことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
26年度中に行えなかった時間制約を考慮した搬送制御手法の開発を行う.まず26年度で新たに導入したフェロモン情報と情報の伝播則に基づく搬送時間予測が,実際にどの程度正確であるかシミュレータによる測定実験を行う.その結果をもとに,時間制約を満たす搬送経路の判定,優先順位等について検討し,これらを考慮した効果的な制御手法の開発を目指す.近年では,ソート可能なバッファの導入が行われているので,バッファでのソーティングの導入の可能性・効果についても検討を加える. これまでの研究では,複雑ではあるが垂直型のフローショップタイプの生産システムを対象として,搬送制御手法の開発および評価を行ってきた.27年度では,さらに複雑でより現実に近い生産システムの形態への適用を目指して行く. 具体的には,ワーク搬送に循環が存在するジョブショップタイプ生産システムへの適用や, AGVが併用されている生産システムへの適用を目指す.これらを対象とする場合,シミュレータの大幅な拡張が必要となる.シミュレータの拡張が困難と判断した場合には,関連研究を参考にして,複数箇所に同じ処理を行う機械を配置した生産レイアウトでジョブショップ型への適用を実施する.この場合,時間制約がある場合についても比較的容易に適用できると考える. 最後に,本研究で開発したフェロモン情報と情報伝播を用いた搬送制御について,その適用範囲,性能評価,問題点をまとめ,総合評価を行う.あわせて実機環境へ適用した場合に考えられる技術的な問題点についてもまとめる.
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