2015 Fiscal Year Research-status Report
交通事故のコーホート分析による加齢に伴う運転能力変化のメカニズム解明
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25350453
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
西田 泰 高知工科大学, 公私立大学の部局等, 客員教授 (10356222)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朴 啓彰 高知工科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60333514)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | コーホート分析 / 運転能力 / 交通事故人的要因 / 事故率 / 加齢変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、構築したデータベースを使った分析作業を行った。 <集計条件の見直し>データ数確保のため事故経験集計期間を3年から過去5年に拡大し、普通乗用車を同乗者なしで運転中に事故に遭った男性運転者の人的要因別相対事故率を、8つの誕生世代(1933~72年生れ:5歳単位)の4つの期間(2001~12年:3年単位)を対象に集計した。事故経験の影響を調べるため、過去に経験した事前の人的要因と事後の人的要因を組み合わせ毎に集計した。 <分析結果>1)誕生年代別に年齢層別相対事故率を描くと、異なる誕生年代でも同じ年齢層の値はほぼ同じで、世代による相対事故率の違いは確認されなかった。2)漫然運転、脇見運転及び安全不確認(能動的情報収集の欠如)を認知能力低下、動静不注視を判断能力低下、そして操作不適を操作能力低下として、5つの人的要因別相対事故率の推移を誕生年代別・年齢層別に調べた結果、各能力とも40歳代前半をボトムにそれ以降は加齢に伴い上昇していた。3)65歳前後の相対事故率を値が最も低い40歳前後と比べると、操作不適と安全不確認は2倍、漫然運転、動静不注視が1.5倍、脇見運転が1.3倍と、加齢に伴う能力低下は能動的作業で最も大きかった。4)事故経験別に人的要因別相対事故率をみると、全般的に同じ人的要因の事故経験者の相対事故が高く、以下、他の人的要因の事故経験者、無事故者となるが、安全不確認では後半の2組の、動静不注視では前半の2組の値がほぼ同じであった。この関係は年齢層によらず、高齢者ほど、また新しい年次ほど値の差は大きくなった。 <関連分析>一般に大都市圏では交通量が多く錯綜機会が多いことから相対事故率は高くなる。すると、転居した者の相対事故率の変化には、加齢に伴うものと相対事故率が高い地域への転居によるものが考えられる。転入者と長期間居住者の相対事故率に関する他の研究によると、両者に差がある地域があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
作業量が当初計画よりも大きくなり、追加集計及び研究とりまとめ、論文執筆のための十分な時間を確保できなくなったので、科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)補助事業期間延長を申請し承認された。 <作業時間の増大>SSDの利用により集計時間短縮が図られるようになったが、分析作業を進める中で、想定外の問題の発生により検討範囲が拡大し、必要な集計量が加速度的に増加し、結果として集計作業時間が増加することとなった。 <想定外の問題の発生>本研究では相対事故率を使い運転能力の変化を論じているが、他の研究によると、人的要因は事故衝突形態にも関連し、さらに事故衝突形態は道路交通環境にも関連することから、運転能力の変化は運転者の居住地や運転地域とも関連すると考えられる。この問題については研究実績の概要で述べている。さらに、本研究を進める中で、事故経験の有無や経験した事故の人的要因の種類によって、各人的要因の相対事故率が異なることも明らかとなった。 <問題点の整理・取りまとめ方針の修正>研究開始時点では、運転能力はもっぱら個々の運転者の個人属性に依存するものと考えていたが、研究実績の概要でも述べたように、運転能力の評価に使っている相対事故率が、年齢や過去の事故・違反経験だけでなく、居住地にも依存することが明らかとなった。そこで、再度、分析方法等の研究計画の修正を考える必要が出てきた。
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Strategy for Future Research Activity |
<分析>(女性を対象とした分析)平成27年度に集計完了したが分析未着手であった女性運転者の分析を行い、運転能力の変化と性差の関係について論じる。(道路交通環境を考慮した分析)「現在までの進捗状況」で、相対事故率に関わる影響要因の整理が必要なことを述べたが、これは運転能力の評価及び運転能力の定義にも関連する問題である。そこで、環境の影響を除いた潜在的能力と相対事故率と関連付けられる実際の交通安全に関わる顕在化能力の関係について調べることで、運転能力の変化を論じる。 <検挙違反による運転者属性の分類>さらに、多様な運転者属性を考えると、現在の事故の人的要因による運転者属性の分類だけではなく、交通事故件数の10倍以上ある交通違反の検挙違反の情報を使った分類による詳細な分析に必要なデータ数確保についても検討する。なお、違反種別によって、その後の違反特性・事故特性が異なることも報告されている。 <状態遷移の概念を使った分析>過去3年の分析は事前、事後を3年あるいは5年を単位とした2つの期間の事故率変化(能力変化)を論じたものであったが、平成28年度には、当初計画していた状態遷移(5年単位の4)の概念を用いて能力変化の分析を試みる。 <モデルの構築> 相対事故率の影響要因及び当初予定していたが、過去3年間で検討されなかった状態遷移の概念を含めて、運転能力変化のメカニズムを説明するモデルについて考える。 <学会等への報告>過去3年間及び平成28年度中に行った分析結果をとりまとめるとともに高齢運転者対策についても検討し、学会等への投稿を行う。
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Causes of Carryover |
研究の成果としては、平成27年度末でも当初予定していた以上のものが得られたと考えるが、研究を進めるに伴い新たな課題が発生し、それに対応するための追加分析を行うという工程が繰り返され、論文としてとりまとめる十分な時間が確保できないことが年度末に明らかとなった。 そこで、科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)補助事業期間延長を申請し承認されたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品等 5万円 翻訳料、論文掲載料 20万円
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Research Products
(2 results)