2013 Fiscal Year Research-status Report
エネルギー資源の海上輸送における地政学的リスクと経済合理性に関する研究
Project/Area Number |
25350459
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
鳥海 重喜 中央大学, 理工学部, 助教 (60455441)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 大輔 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (30435771)
高嶋 隆太 東京理科大学, 理工学部, 講師 (50401138)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 海上輸送 / リスク評価 / 数理計画 / 経済性分析 / 地理情報システム / 海賊 |
Research Abstract |
本年度は研究計画に基づき,「輸送形態に基づくリスク評価指標の開発と国間比較」を実施した.まず,①船舶時空間ネットワークの構築に関して,2012年のLNG船の船舶動静データベースを購入し,新たに寄港実績があった地点を中心として,デジタル海上航路ネットワークのアップデートを実施した.次に,②海賊の出没状況の調査に関して,最新のIMB Live Piracy Mapデータを入手し,地理情報システムを用いて海賊活動の空間分析を行った.特にソマリア周辺海域を中心として,カーネル密度推定法を用いた分析を行い,この結果を関連学会で公表した.そして,③リスク評価指標の開発に関しては,地政学的リスクの一つであるチョークポイント比率をプロトタイプのリスク評価指標として定めて,船舶動静データと海上航路ネットワークを活用して分析した.同評価指標をもとに輸入先・輸送ルート決定問題を数理計画モデルにより定式化し,経済性の分析を行った.その結果,チョークポイント比率を低減させるためには余分な輸送コストを負担する必要があることが明らかになった.輸入先を自由に選択することは難しいが,輸送ルートはある程度自由に選択することができるので,チョークポイントを通過しない迂回ルートを通れば,輸送コストは増加するものの,地政学的リスクを低減することは可能であるという知見が得られた. そして,プロトタイプのリスク評価指標をもとに,輸入先自体で問題が発生するカントリーリスクと輸送ルート上で問題が発生するチョークポイントリスクを対象として,金融工学の分野で用いられているポートフォリオ選択理論(平均分散モデル)を適用する新たなリスク評価指標を開発した.本成果も既に関連学会で公表している.ただし,現在の指標は輸送回数の違いによるリスクの相違を表すことができないため,次年度では輸送方法を考慮した指標に拡張する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は平成25年度を初年度としている.当初の研究計画では,平成25年度に「輸送形態に基づくリスク評価指標の開発と国間比較」を実施することとしており,予定通り遂行した. 海賊出没状況の調査では,ソマリア周辺海域における海賊問題,海賊対策について纏めた上で,過去9年における海賊出没位置の地理的特性に関する分析を行った.ソマリアからの海賊出没位置の広がりと分布を明らかにする為に,300km距離帯を生成して各距離帯に含まれる海賊事案を罪種毎に集計した.得られた結果から,2008年まではソマリア沿岸付近で多く発生していたのが,2009年以降ソマリアから離れた海域でも海賊被害が生じていることが分かった. また,罪種別の集計を行ったことで,発砲,ハイジャック被害が2009年から範囲を拡大していったことを確認した.さらに,ソマリア周辺海域における海賊出没位置のホットスポットを検出する為に,カーネル密度推定法による空間平滑化を行った. 空間平滑化を行ったことにより,海賊被害が集積する海域を捉えることが出来た.また,可視化したホットスポットを時系列にみることで,ホットスポットが転移したことを確認した. また,リスク評価指標の開発では,輸入先自体で問題が発生するリスク(カントリーリスク)と輸送ルート上で問題が発生するリスク(チョークポイントリスク)を取り上げ,金融工学の分野で用いられているポートフォリオ選択理論(平均分散モデル)を適用することでリスクの評価指標とした.ただし,このままでは輸送回数の違いによるリスクの相違を表すことができないため,輸送方法を考慮した指標に拡張する必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究計画に基づき,「輸送リスクの経済性評価と感度分析」を実施する.まず,①輸送コストの現状を把握するために,船社や損保会社などにヒアリング調査を実施する.次に,①の調査結果に基づき,②輸送リスクの経済性評価を行う.具体的には,輸送コスト,輸送ルートの選択率などの関係を数理計画問題によって記述し,一般的な数理計画ソルバーによって求解する予定である.そして,③感度分析と実現のための施策として,リスク評価指標を1単位低下させるために必要となる輸送コストの増分,つまり限界効用を求め,リスク低減の受益者とコストの負担者との関係について,社会システムの観点から分析する. 本計画を遂行するにあたり,研究代表者および研究分担者が所属している大学の大学院生にも協力してもらう予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備として購入する予定であったパソコンの購入を見合わせたこと,および消耗品の購入が想定より少なかったことが理由である. 次年度では,繰り越した助成金によりパソコンを購入する予定である.また,平成25年度に得られた研究成果を国内外の学会で発表するための費用(旅費,学会参加費,論文投稿料)などにも支出する.
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