2013 Fiscal Year Research-status Report
自然換気トンネル火災時における換気量の推定と換気の閉じ込め現象の解明
Project/Area Number |
25350474
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
田中 太 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60401791)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | トンネル火災 / 自然換気 |
Research Abstract |
平成25年度では、トンネル火災時の自然換気量を推定するための理論を構築した。この理論では、トンネル開口部内側と外側の圧力差分布を煙と周辺空気の密度差を利用して導出し、風速分布は圧力差分布からベルヌーイの式を用いて導出した。これらを基にして、トンネル開口部からの自然換気量を推定する理論を構築した。また、理論の検証のために小型模型トンネルを製作した。模型トンネルの長さは2, 4, 6 mの3種類を用いた。トンネル断面形状は0.25 m×0.25 mでアスペクト比1の正方形とした。火源としては、直径80 mmのプロパンガスバーナーを使用した。火災実験では、プロパンガスの質量流量、燃焼ガスの温度とO2 、CO2 、そしてCO濃度、更にトンネル坑口中央部の鉛直方向に風速と温度を計測した。火源の発熱速度とトンネル長さを与条件として、自然換気量、煙層高さ、そして中性帯高さを計測し、理論値と比較した。その結果、無次元トンネル長さL* = 16,32 [-]において,自然換気量は約20%の相対誤差で理論的に予測することができた.しかし、無次元トンネル長さL* = 48 [-]においては,理論的に予測される換気量に比べて実験値は小さく、50%近い相対誤差となった。これはトンネルが長くなることによって、自然換気による十分な酸素供給ができなくなり,燃料の一部が不完全燃焼した結果、発熱速度が抑制されたことが原因と考えられた。そこで、酸素不足による発熱速度の抑制を調べるために、酸素消費法に基づいて、発熱速度を計測した。その結果、L* = 48 [-]のトンネルでは、無次元発熱速度Q* = 0.16 [-]において換気支配型燃焼となっており、発熱速度が低減していることが分かった。そのため、完全燃焼を仮定している理論値では、実験値よりも換気量を大きく見積ることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度では、今回の研究テーマに効率よく取り組むために、模型トンネルを新規に製作した。火災発生時におけるトンネル坑口を介した自然換気量を予測するための理論式を構築し、その予測精度を実験結果と比較して確かめた。無次元トンネル長が32までは十分な精度で換気量を予測できたが、より長いトンネルでは換気量が低下し、発熱速度が低下する現象を見出した。この影響は予測モデルに組み込む必要がある。本年度、解決する見込みであった自然換気量の計測とその計測精度に関しては、実用上十分な精度で計測できることが確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度からの熱煙気流の降下に伴う換気の閉じ込めに関する研究のためには、模型トンネルの全長が足りない可能性がある。実大スケールで全長1kmに相当する模型トンネルを準備するには1/20スケールでも50mの長さが必要であり、研究代表者の現状の研究環境では不可能である。そこで、天井壁面を吸熱性の高い素材に交換した特別トンネルを製作し、煙層降下を人為的に早める実験を行う。何種類かの素材を利用して天井壁面を製作し、それぞれの素材ごとの煙層降下特性を見積もり、これらのデータから実大トンネルでの煙層降下地点の予測式を構築する。当初、煙層降下には、壁面での粘性摩擦力が大きくかかわっていると考えていたが、平成25年度の実験を通して、摩擦よりも自然換気で吸入される弱い換気風による遡上阻止効果のほうが大きいことが分かってきた。そこで、遡上阻止風速のモデル化にも取り組む予定である。平成26年度では、壁面の吸熱特性を向上させることで煙層降下を確実に生じさせることができるので、煙層降下と換気の閉じ込めによる燃焼状態の変化を調べる研究は実施可能である。換気の閉じ込めが生じている状況において、発熱速度を酸素消費法と天秤で計測し、これらを比較することで、発熱速度の換気状態による低下、未燃ガスの発生、燃焼状態の変化による一酸化炭素の増加などの不完全燃焼状態を計測し、モデル化に役立てる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
手持ちの機材を酸素分析計として流用するために、サンプリングガスの前処理装置を工夫して自作した。そのため、当初予定した新しい酸素分析計が不要になり、予算に余裕ができた。福井大学では平成25年度に実験棟が新築されたため、実験装置類の移設が必要になった。しかし、トンネル実験装置の移設は難しかったため、当初計画していた手持ちの模型トンネルを流用することをあきらめて、新しい模型トンネルを製作した。そのため、材料費が予定以上にかかり、結局、総計で30万円ほどの次年度使用額が生じた。 当初予定通りに天井壁面の熱伝達特性を特別に良くした特殊トンネル製作の費用として使用する。トンネル長さによって火源の燃焼性性状が影響を受けるので、発熱速度を燃料の消費量から計算する以外に、酸素消費量からも計算する。そのため、さらに精度良く酸素消費法を実施できるようにガス収集フードの製作を工夫する。
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