2013 Fiscal Year Research-status Report
群集事故解析のための粒子モデルシミュレーション手法の開発とその検証
Project/Area Number |
25350485
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
川口 寿裕 関西大学, 社会安全学部, 准教授 (80234045)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | シミュレーション工学 / 群集事故 / 避難 / PTV |
Research Abstract |
離散要素法(DEM)を歩行者間の相互作用力計算に適用した数値シミュレーションコードを作成した。歩行者の「自己駆動」特性を表すため、目的地に向かう速度を持たせた。一方通行の直線通路内における群集密度と平均歩行速度の関係はこれまでに実験的に調べられており、群集密度の増加に伴い、平均歩行速度が低下することが知られている。しかし、目的地に向かう速度を持たせるだけの単純なモデルではこの特性を再現できないことが確認された。そこで、仮想バネモデルを導入し、物理的に接触していない他の歩行者からも力を受けるようにモデルの集成を加えた。この結果、前方に他の歩行者を視認すると、これを避けたり、速度を落としたりするようになり、実際の歩行挙動を再現できるようになった。このモデルを導入すると、群集密度の増加に伴う平均歩行速度の低下が再現され、既存の実験結果ともよく一致することが確認された。 また、ある小学校の許可を得て、休み時間における校庭での児童の様子をビデオカメラで撮影した。個々の児童を特定できないように、隣接する建物の12階から撮影し、プライバシー問題に配慮した。撮影した動画を2次元PTVソフトを用いて解析した。ノイズ除去等の処理を行うことで、個々の児童の軌跡を比較的精度良く追跡できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シミュレーションのモデル開発は、現在のところ、計画通り順調に進んでいる。また、問題点も明らかになっており、今後のモデル改良に向けてすでに準備が進んでいるところである。 一方、実験においては、まだ高密度時の歩行者流れに本手法が適用できるかどうかの確認が行えていない。しかし、低~中間密度に対しては問題なく本手法を適用できることが確認されており、特に問題となるような研究の遅れは生じていない。
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Strategy for Future Research Activity |
歩行者の自己駆動特性に関して、さらなるモデル改良の必要性を感じている。特に、現状のモデルでは全ての歩行者が独立に行動するモデルとなっているが、実際の群集では家族連れや友人同士など、ある程度の集団となって行動するグループが数多く存在するはずである。この点は、全体の歩行挙動にも大きな影響があると考えられる。 また、人体の力学特性についてのデータも必要であると感じている。本モデルでは歩行者同士が物理的に接触したときの作用力をバネとダッシュポットで表現しているが、バネ定数を変えると、作用力も変わる。群集事故においては群集の中でどれくらいの力が作用していたかは重要な問題である。したがって、人体のバネ定数をどのように定めるかは結果の大きな影響を及ぼすと考えられる。過去の論文・データを精査するとともに、自ら実験データを取ることも検討したい。 さらに、PTV実験では高密度な歩行者流れをビデオ撮影し、PTVまたはPIV解析を行うことで、歩行特性に関するデータを取得する。実験データを計算結果と比較・検証することで、計算モデルのさらなる改良を行う。
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