2013 Fiscal Year Research-status Report
共通原因故障とリスクに着目した確率論的安全評価手法の開発
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25350490
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
弓削 哲史 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, 電気情報学群, 准教授 (50546041)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳 繁 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, 電気情報学群, 教授 (10546039)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 共通原因故障 / 確率論的安全評価 / 信頼性 / 安全性 / リスク |
Research Abstract |
共通原因故障とは、従属故障の一種であり、同一原因によりシステム中の複数の機器が故障する故障モードである。システムの確率論的安全評価を行う際に、共通原因故障を適切に組み入れること、ならびに故障の影響を発生確率のみではなく、その影響度を考慮に入れることが重要である。本研究は、従来の共通原因故障解析の適用範囲を拡張し、より現実的な解析方法を体系化することを目的としている。共通原因故障を解析する方法は明示的手法と非明示的手法に大別される。それぞれ長所短所があるため、両方のアプローチにより研究を進めた。 本年度は、1)共通原因故障をダイナミックフォルトツリーにより明示的に解析するために、特にベイジアンネットワークの適用に関する研究、2)共通原因故障を非明示的手法により解析するための共通原因故障モデル化手法の研究、3)共通原因故障を取り入れたシステムの故障確率算出アルゴリズムの提案、4)事故の影響を定量化するために用いるFMEAの重要度決定に関する調査、そして、5)システムの運用を考慮した評価手法を検討するために、複数の故障モード含むシステムの最適修理方策に関する研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
確率論的安全評価において、共通原因故障の取り扱いを体系化し、それを取り入れた評価手法の開発を行うために、本年度は、(1)「 国内外の文献調査」として、国内外の研究者による過去の共通原因故障モデル、及び、従属性モデルの論文発表を再調査、(2)「新たな共通原因故障のモデル化の検討」、すなわち、適用範囲を拡大させるモデル化手法の提案、(3)「システムの故障確率の算出方法」、すなわち、システムの生起確率を効率的に算出するアルゴリズムの提案を中心に研究を行った。特に(2),(3)は共通原因故障を含む確率論的安全評価の核心であり、ともに一定の成果が得られた。1つは従来の共通原因故障解析は、同一機器から構成される並列冗長システムに限定されていたが、それを異なる機器から構成され、システム構成もk-out-of-nタイプに拡張することができた。またシステムの故障確率算出では、ベイジアンネットワークを用いてダイナミックフォルトツリーの故障確率を算出する方法の提案、共通原因故障を考慮した最少カット集合を効率的に算出するアルゴリズムの提案、多段階修理を行う際のシステムアベイラビリティ算出方法の提案などに進展が見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度以降も引き続きダイナミックフォルトツリー等を用いて共通原因故障をさらに効率的に解析する手法の開発、共通原因故障のモデル化及びシステム故障確率推定の研究を重点目標とする。同時に、主な解析対象である原子力発電設備に対する確率論的安全評価システムを構築する際に必要な共通原因故障データの取得、共通原因故障率の推定方法の検討を進める。またこれらの高い安全性が要求されるシステムに必ず設置される、非常冷却システム、非常電源等、通常は稼働していないが緊急時にのみ正常な稼働が要求される機器からなるシステム(ワンショットシステム)にも注目し、機器の点検、保全を考慮した評価尺度の検討を行う。またリスク評価のためにFMEAの適用の可能性についても更に検討を進める。共通原因故障のモデル化とシステム故障確率の推定を核として、共通原因故障に関わる様々な要素を取り入れた確率論的安全評価手法の確立を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査研究のため海外旅費を使用する予定であったが、研究の進捗状況、より適切な場での発表の可能性を鑑み、次年度に執行することを決めたため次年度使用額が生じた。 前年度予定していたが今年度に持ち越しとなった海外出張を実施し、研究途中の成果を海外の研究者と議論する。またこの出張とは別に、当初の予定通り、研究代表者と研究分担者は、調査研究と、国内外の研究者と研究内容について議論し、評価を得ることで研究方針の確認と新たなアイデアの創出を図ることを目標に、国内会議と海外会議に各1回参加する予定である。そして、研究成果のデータ整理のための研究補助と、成果論文整理発表のための各種機器・消耗品購入を計画する。
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