2014 Fiscal Year Research-status Report
精密地下構造調査と地盤変動検出による水蒸気爆発型噴火の可能性評価
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25350494
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
神田 径 東京工業大学, 火山流体研究センター, 准教授 (00301755)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 康雄 東京工業大学, 火山流体研究センター, 教授 (10334525)
小林 知勝 国土地理院(地理地殻活動研究センター), 地殻変動研究室, 主任研究官 (40447991)
丹保 俊哉 公益財団法人立山カルデラ砂防博物館, 学芸課, 学芸員 (10574311)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 火山災害 / 水蒸気爆発 / 比抵抗構造 / 地盤変動 / 熱水流体 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、年次計画のうち、【ア】比抵抗構造調査、【ウ】InSAR画像の解析、【エ】地中温度観測を実施した。項目【ア】については、9月に地獄谷内外の17ヶ所でAMT法を用いた調査を行った。【ウ】については、ALOS-2衛星の打ち上げが2014年5月にずれ込んだため、現在運用を終えているALOS衛星により取得された過去のデータ(2007~2010年)を使用して詳細なInSAR解析を行った。【エ】については連続観測をひきつづき2箇所で実施している。また、このほか計画にはなかったが、温泉水の調査を行った。
比抵抗構造調査からは、合計25点のデータを用いて3次元比抵抗構造を推定した。その結果、地獄谷直下に厚さ50m程の低比抵抗帯が推定され、キャップロックとして作用する熱水変質岩石を多く含む領域と解釈した。地獄谷内の活発な噴気・温泉活動が見られる地域では、キャップロックの下部に比抵抗値の若干高い領域が推定され、ガス溜りを形成していると思われる。この結果は、昨年度推定した2次元比抵抗構造の結果と整合的であり、キャップ構造の広がりを押さえることができた。 InSAR解析からは、地獄谷で膨張性地殻変動が検出された。変位の時系列データは、ほぼ直線状に推移しており、最低でも2010 年まではほぼ一定速度で時間的に安定した変動をしていたことがわかった。この変動領域は、地表で噴気・温泉活動が見られる地域と一致し、最大4cm/yrに達している。この変動を説明するモデルとして、深さ100mでのシル状の矩形クラック1枚の開口が推定された。 温泉水のpH、電気伝導度、湧出温度の測定を地獄谷内の約50ヶ所で行った。その結果、地獄谷のほとんどの温泉水がCl-SO4型の強酸性熱水で、いくつかの群を作って湧出しており、それぞれの温泉群の特徴は異なるが、化学組成から地下浅所までは、単一の熱水流体であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
・InSAR解析から膨張性地盤変動が検出された:既に運用を終えたALOS衛星で撮影された画像の通常解析では、顕著な地盤変動は検出されなかったが、精度を高めた解析を行ったところ、地獄谷の中心部で膨張性地盤変動が検出された。変動域は局所的でおおよそ数百mの広がりにとどまり、その広がりから、変動をもたらす力源はごく浅部にあることが示唆された。変動源の位置は、比抵抗構造から蒸気溜りと解釈しているやや高比抵抗の領域に一致しており、高温の状態であることに加えて、圧力が高まった状態であることも確認された。すなわち、当初の研究目的である水蒸気爆発の発生場としての要件を満たしていることがわかった。
・地獄谷の噴気温泉活動を支配しているのが表層の50mの低比抵抗層であることが示唆された:当初予定になかった温泉水の化学分析等を行った結果、地獄谷で湧出している温泉水は、地下浅所にて分化していることが明らかになった。比抵抗構造解析の結果と比較すると、表層付近の厚さ50mほどの低比抵抗層が地下水との分化・混合過程に関与していることが示唆された。この低比抵抗層は、キャップロックとして作用しており、水蒸気爆発発生の鍵を握っていると予想される。
・高精度の3次元比抵抗構造が推定できた:天候に恵まれたこともあり、平成26年度の比抵抗構造調査も良質のデータ取得ができた。その結果、高精度の3次元比抵抗構造の推定ができた。また、2次元比抵抗構造の結果については、既に国際学術誌で出版済みである。以上の結果を分担者で持ち寄り、26年度末に検討会を開催することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
InSAR解析については、昨年からデータの供用が始まったALOS-2衛星による撮像データを使用した解析を進める。立山地獄谷周辺は豪雪地帯であるため、雪のない2014年8月と10月のALOS-2データを用いた通常のInSAR解析も行っているが、ノイズレベルを超える変動は得られていない。2015年のデータと干渉させることで、2010年までの変動が現在どうなったのか明らかになることが期待される。
キャップロックとして作用する表層の低比抵抗層が温泉水の分化・混合過程に関与していることが予想された。そこで、AMT法よりも高分解能で地下構造を推定できる高密度電気探査を地獄谷内の複数測線で実施し、キャップロック内部の微細構造を明らかにする。更に、採取した温泉水の同位体比分析を行ない、熱水流体が地表に到達するまでの分化・混合過程を解明する。また、地表の熱異常を面的に捉えるため、熱赤外映像観測を行う予定である。キャップロックの微細構造と、温泉水の分析結果、熱異常、の分布を比較することにより、キャップロックが地表の噴気・温泉活動に与える影響について考察する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は主に二点ある。まず、ALOS-2衛星の打ち上げが遅れたため、当初購入予定であったALOS-2により撮影される画像の購入ができず、昨年度購入したALOS画像の解析を行った。また、微細構造調査のために高密度電気探査装置の借り上げ費用を計上していたが、別経費により装置の購入ができる目処がたったため、この借り上げをやめ、熱映像装置の購入に充てることとした。しかし、海外製品のため年度末までに納入が間に合わず、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
・26年度にできなかったALOS-2画像を購入し、ALOS画像から検出されている膨張性地盤変動の時間変化を追う。 ・発注した熱映像装置は4月24日現在納品済みであるので、これを用いて地獄谷周辺の熱異常を面的に測定する。 ・残りは、高密度電気探査による微細構造調査に主として使用する。電気探査装置の総重量は150kg程度となることが見込まれるため、旅費に加えて測定地点まで装置を運搬する役務費の使用も計画している。
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[Journal Article] Imaging the hydrothermal system beneath the Jigokudani valley, Tateyama volcano, Japan: implications for structures controlling repeated phreatic eruptions from an audio-frequency magnetotelluric survey2015
Author(s)
Seki, K., Kanda, W., Ogawa, Y., Tanbo, T., Kobayashi, T., Hino, Y., Hase, H.
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Journal Title
Earth Planets and Space
Volume: 67:6
Pages: 1-9
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Hydrothermal system beneath the Jigokudani valley, Tateyama volcano, Japan, inferred from AMT surveys and hot spring water chemistry2015
Author(s)
Seki, K., Kanda, W., Tanbo, T., Ogawa, Y., Takakura, S., Ushioda, M., Suzuki, A., Saito, Z., Matsunaga, Y.
Organizer
26th IUGG General Assembly 2015
Place of Presentation
Prague Congress Centre (Czech Republic)
Year and Date
2015-06-28
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