2013 Fiscal Year Research-status Report
断層プロセスゾーンを考慮した活断層地震と海溝型巨大地震の連動性予測手法の確立
Project/Area Number |
25350498
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
金折 裕司 山口大学, 理工学研究科, 教授 (60194883)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今岡 照喜 山口大学, 理工学研究科, 教授 (30193668)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 自然災害 / 地震 / 活断層 / テクトニクス |
Research Abstract |
昭和62(1987)年山口県中部の地震(Mj5.2)を震源断層として断層プロセスゾーンを考量した2次元断層運動シミュレーションを行い、大原湖断層系を構成する吉敷川断層と山口盆地西縁断層の連動性を解析し、手法の妥当性を確認するとともに、断層の方向性や接近度が連動性を評価するうえで重要なパラメータになることがわかった。さらに、宇部東部断層の連動性シミュレーションに関する基礎データを収集している。 大原湖断層系を構成する木戸山西方断層の保存施設内で断層ガウジのサンプリングを行い、試料中のMn濃度を分析した結果、断層面に近い試料ほどMn濃度が高いことが示され、Mn濃度が活断層の活動性を示す重要な指標であることを再確認した。山陰地方に分布する花崗岩や中新統を対象にして、Sr-Nd同位体組成、K-Ar年代と古地磁気方位などを解析して、中国地方西部の地質断層の分布やその形成時期を検討するための基礎資料を得た。 安政南海地震の1年前、安政4(1857)年に起きた『萩』の地震に関しても、同時代に書かれた史料や古文書から被害の記録を抜粋して、萩北断層の活動との関連性を検討した。萩北断層の活動性を調べために、空中写真判読と現地地表踏査を実施し、断裂解析などを実施したが、残念ながら断層活動を直接示す露頭の発見には至っていない。 山口県文書館に所蔵されている毛利家文庫のうち、主に『大地震報告書』を解読して、安政南海地震による山口県内の被害をまとめるとともに、県内各地の震度および瀬戸内海沿岸の津波高に関する基礎資料を得た。さらに、それらを補完するために、古文書や日記などに記述された被害状況をまとめた。活断層地震に関しても、同様に江戸時代の史料や古文書の記述を抜粋した。これらを検討して、海溝型巨大地震と活断層地震の時間的・空間的な基礎資料をまとめた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中国地方西部の花崗岩体および中新統中に分布する地質断層を対象として、それらが活断層であるか否かを判別するために、Sr-Nd同位体組成、K-Ar年代と古地磁気方位などを測定するとともに、活断層であることが明白な大原湖断層系から得られた試料中のMn濃度を測定してはいるが、その判別方法に関する具体的なデータは得られていない。断層岩の微細構造解析および断裂解析については、活断層である萩北断層を対象に実施してきており、広域応力場および局所応力場との関係を明らかにした。 地質断層および活断層を取り囲む断層プロセスゾーンから試料を採取してはいるが、室内でのS波速度測定を完全には実施していないので、これから測定に取り組む必要がある。断裂解析によって広域応力場が東西圧縮であること、断層間のブロックで右横ずれ運動に伴うブロック回転が起きていることを明らかにしてきており、広域応力場と局所応力場の変遷に関して具体的なデータが得られた。 プロセスゾーンを考慮した二次元断層運動シミュレーションを、大原湖断層系を構成する吉敷川断層と山口盆地北西縁断層に適用して、連動性を解析して、手法の妥当性を検証することができた。今後の課題として、メッシュ間隔と断層の方向性などのパラメータを変化させて、最適な解析結果を得ていかなければならない。 過去に起きた南海トラフに沿った海溝型巨大地震と活断層地震について、山口県文書館の所蔵ざれている史料や古文書に関しては、ほとんどすべての地震記録を抜粋することができたが、それらの内容を詳細に解析・分析するまでには至っていない。 これら個々の研究項目に関しては詳細な基礎データが集積されつつあるが、それらの相互の関連性やデータの集大成については今後の課題である。
|
Strategy for Future Research Activity |
地質断層の分布および断層プロセスゾーンのS波速度に関する解析試料を得るために、中国地方西部の花崗岩帯や堆積岩類を対象として現地地表踏査を行い、採取した岩石試料のSr-Nd同位体組成、K-Ar年代と古地磁気方位、さらに断層ガウジのMn濃度分析などを行い、地質断層と活断層の判別パラメータに関する基礎データを収集する。 プロセスゾーンを考慮に入れた二次元断層運動シミュレーションの改良を行うために、(1)大原湖断層系を構成する宇部東部断層とその南方海域にある周防灘断層群の連動性、および(2)山口盆地の伏在断層の連動性、を解析して、シミュレーション手法の妥当性を検討するとともに、南海トラフ地震(4連動)との連動性を検討するための基礎データを得る。 南海トラフに沿った海溝型巨大地震と活断層地震の時間的・空間的な関係に関する基礎資料を得るために、江戸時代に起きたこれらの地震に関する史料や古文書の記録を克明に解析する。これらの記録から震度および津波高を分析して、2次元断層運動シミュレーションに入力する基礎データを検証する。 これまでに得られている造構環境と広域応力場に関わる基礎データを集大成して,南海トラフ地震前後における西南日本内帯の広域応力場の変化を解明する.それぞれの応力場において,地震危険度の最も高い潜在断層の変位,速度,加速度,を計算し,断層の連動性および断層近傍の正確な震度分布を計算し、計算結果を一般化する。 現在の圧縮応力場および海溝型巨大地震発生後の応力場のもとで最も地震危険性の高い潜在断層を抽出する手法と活断層帯(群)の客観的な認定方法を確立して,地震被害想定の基礎となる地震規模の精度の高い見積もり方法を提示する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
技術補佐員の3月分謝金を予定していたが、3月分謝金が残額を若干上回ったため、この分を次年度に繰り越すこととした。 繰り越し分は、今年度6月以降の謝金もしくは消耗品(プリンタートナー)の一部に充てたい。
|
Research Products
(12 results)