2013 Fiscal Year Research-status Report
震源近傍の水圧擾乱特性を考慮した津波即時予測の高度化
Project/Area Number |
25350501
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
松本 浩幸 独立行政法人海洋研究開発機構, 地震津波・防災研究プロジェクト, 技術研究主任 (80360759)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 豊 気象庁気象研究所, 地震火山研究部, 主任研究官 (40370332)
堀 高峰 独立行政法人海洋研究開発機構, 地震津波・防災研究プロジェクト, サブリーダー (00359176)
有吉 慶介 独立行政法人海洋研究開発機構, 地震津波・防災研究プロジェクト, 技術研究副主任 (20436075)
山崎 明 気象庁気象研究所, 地震火山研究部, 主任研究官 (70354529)
金田 義行 独立行政法人海洋研究開発機構, 地震津波・防災研究プロジェクト, プロジェクトリーダー (50359171)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 地震 / 津波 / 海底津波計 / 2011年東北地方太平洋沖地震 / 2003年十勝沖地震 / 地震・津波観測監視システム |
Research Abstract |
沖合の水圧式津波計(海底津波計)による観測値の津波警報への活用がすでに開始されているが、海底津波計データは通常1~10Hzサンプリングであることから、地震時には地震動等の津波以外の水圧擾乱が含まれる。したがって津波波高を高精度に評価するためには観測データからそれらを除去する課題が残されている。とくに波源近傍では津波と地殻変動を抽出する適切なデータ処理が不可欠である。これらの課題を解決するため、本年度は大まかには以下の2項目を実施した。 1. 海底地震計と海底津波計が同一地点に設置してある南海トラフの「地震・津波観測監視システム(DONET)」の地震発生時の地震計と津波計の観測データを精査した。その結果、例えば震央距離約800kmの2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)では、周波数帯域0.02~0.2Hzで水圧変動が卓越し、この周波数帯域の水圧変動は地動の加速度との相関が極めて高いことが判明した。 2. 1.の観測経験と理論的知見をもとに、津波と地殻変動を抽出するデシメーションフィルタを試作設計した。リアルタイム津波観測を念頭に、デシメーションによる群遅延(時間遅れ)を最小にするDONETのリアルタイムデータ処理に適用(実装)するデシメーションフィルタを設計して、海底水圧計直近で発生した地震に対してその適用性を検証した。その結果、水圧計の10Hzデータから0.1Hzデータを生成するために3段階のデシメーションフィルタを適用することとし、最初の2段階は地震計データと共通とし、3段目のフィルタはリアルタイム性を重視する設計した。そして設計したデシメーションフィルタを2003年十勝沖地震(M8.0)で震源直近(津波波源内)の海底津波計データに適用して検証した。その結果、設計したフィルタは津波と地殻変動を抽出できる性能となっていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、海溝型巨大地震発生が切迫している南海トラフ沿いに多点展開されている沖合津波観測点をターゲットとして、巨大地震の発生時に海底津波計から送信されるリアルタイムデータを津波予警報に有効利用することを目的として実施している。具体的には、南海トラフ沿いで発生する巨大地震の想定震源域に設置された海洋研究開発機構の「地震・津波観測監視システム」、気象庁の「海底地震常時観測システム」から送信されるリアルタイムデータについて、巨大地震発生時に震源近傍で得られる水圧観測波形から地震動波形を併用して津波成分を抽出できる適切なデータ処理方法を検討する。そして想定地震に基づく津波発生シナリオから予測される各津波観測点のリアルタイムデータを事前に予測・検証しておき、津波警報システムの高度化を目指すものである。このうち水圧観測波形と地動波形を関連づけて、津波抽出のためのデシメーションフィルタを設計できたので、初年度の計画は概ね達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
巨大地震にともなう津波を早期検知して、沖合観測データを津波警報に有効利用するためには、想定シナリオに基づく観測技術やノウハウを培っておく必要がある。そのため次の2項目を本研究のゴールとして設定してきた。 (1)水圧式津波計データへ適用するフィルタ設計:海底津波計は、観測点の水圧変化を計測して、海面の波高に換算する方式を採用している。しかしながら、震源近傍では水圧擾乱の影響が大きく、津波による水圧変動成分を分離することが困難である。2012年3月に三陸沖で発生した地震(M6.9)の直後から、研究代表者の松本と分担者の林は、近傍の海底津波計データを海底地震計データとともに精査したところ、観測された水圧変動は一見複雑であるが適切なフィルタ処理によって、津波成分を抽出できることを示した。この手法を南海トラフ沿いの観測点でも適用できれば汎用性のある手法となり、他の津波観測システムへも拡張できる。 (2)想定シナリオによる水圧波形の再現:研究分担者の堀と有吉による高度化された地震発生予測モデルに基づいて、南海トラフ沿いで発生する東南海地震、南海地震、東海地震、あるいはこれら3つのセグメントが同時(または短時間)に破壊する連動性地震にともなう津波発生時における沖合津波観測点の水圧波形を再現する。そして震源近傍の観測点で津波成分を抽出できるフィルタ設計の適用性を検証して津波警報システムへの実装を目標とする。 このうち(1)のフィルタ設計については今年度ほぼ目標達成できたので、これから(2)の課題に着手したい。とくに南海トラフをターゲットとする本研究では、研究所内の研究分担者の役割が重要になってくると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
先述の本研究の最終目標に設定した、(1)の水圧式津波計データへ適用するフィルタ設計の課題に時間を要したため、初年度に(2)の想定シナリオによる水圧波形の再現の課題の着手まで至らなかった。これは(1)の課題を達成するための地震計と海底津波計へのアクセスデータが膨大で、これらのデータ処理に時間を要したためである。(2)の課題では計算と可視化を多用するため、当初より課題に着手する直前に最新ワークステーションを購入する計画を立てていた。これは最新のワークステーションを購入するほうが計算性能(スペック)の向上が見込めて、再現計算を効率的に進めるのに有利と考えているためである。したがって、ワークステーション購入に関わる費用を(2)の課題に着手する次年度に使用することにした。 現在までに、本研究の最終目標の(2)の想定シナリオによる水圧波形の再現の課題に着手できる状況に至っている。したがって本年度使用する予定であった研究経費(物品費)を使用して、次年度前半に高性能ワークステーションを購入する。その他の研究経費は計画当初の通り使用する予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] Contribution of seismic oscillations to ocean-bottom pressure records at the 2011 Tohoku earthquake
Author(s)
Matsumoto, H., Nosov, M., Kolesov, S., Inoue, S., and Kaneda, Y.
Organizer
26th International Tsunami Symposium
Place of Presentation
D-Resort Gocek, Gocek, Turkey
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