2014 Fiscal Year Research-status Report
防雪施設周辺における非平衡状態の吹きだまり形成過程の解明
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25350513
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Research Institution | National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention |
Principal Investigator |
根本 征樹 独立行政法人防災科学技術研究所, 観測・予測研究領域 雪氷防災研究センター, 主任研究員 (30425516)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳥田 宏行 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部林業試験場, 研究主幹 (50414264)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 雪氷学 / 吹雪 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、防雪施設周辺に形成される吹きだまりに着目し、施設の効果的・効率的な配置位置の検討において特に重要となる非平衡状態での吹きだまり発達過程を明らかにすることを目的とする。 昨年と同様に、防雪柵(高さ2.5m、下部空隙0.5m)の風上および風下に計13地点、積雪深を計測するための雪尺を設置するとともに、これら雪尺の目盛を記録するためのインターバルカメラを11地点設置し、吹雪の発生・継続とともに変化する吹きだまりの2次元的形状を非接触・連続測定した。測定間隔は10分とした(前年度は1時間)。観測地として、強風、地吹雪の発現頻度が高い北海道上川郡新得町を選定し、1月上旬から2月下旬まで自動観測を実施した。また風速、気温などの気象観測に加え、吹雪計(防雪柵風上側のみ)による吹雪強度観測も実施した。厳冬期には複数回観測地に出向き、離れた場所から雪尺を直接読み取る目視計測も実施した。 降雪直後は、柵周辺に一様な深さで積雪が堆積するが、その後吹雪発生臨界風速を上回る風が発現すると、柵近傍の積雪はほぼ全てが削剥されるとともに、高倍距離(水平距離/柵高)で防雪柵の風上0.5、風下2.0の位置に急速に吹きだまりが発達した。吹きだまりのピーク位置は防雪柵風上、風下、いずれにおいても吹きだまりの発達とともに柵に近づいた。ただし、風上のピーク位置の変化はわずかであるものの、風下のピーク位置は1.6となり、高倍距離で0.4(1m)、柵側に近づいた。定常に達した風下側吹きだまりのピーク位置は前年の結果(1.5)とほぼ一致し、柵の形状(高さ)で最大吹きだまり量がほぼ規定されることが確認された。 その他、柵周辺の風速分布と吹きだまり形状との関連を調べるため、風洞実験による模型柵(1/30スケール)を用いた風速、吹きだまり分布の測定も実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小型インターバルカメラを用いた吹きだまり形状変化の非接触・連続測定について、前年度よりも時間分解能を高めた計測を実施しており、短時間における積雪深、吹きだまり形状の変化特性についてのデータを取得できた。また2015年冬期は北海道道東地方において暴風雪が度々発生し、前年と同様、短時間における急激な吹きだまり変化を捉えることも出来た。さらに2015年冬期は例外的に大雪に見舞われており、大量降雪時における吹きだまり分布に関するデータを得られた点も重要である。風速、気温などの気象要素に加え、簡易吹雪計を用いた吹雪強度計測も実施し、吹きだまり発達過程と気象要素との関連を抽出する実測データの蓄積に成功した。 風洞実験により、防雪柵付近の風速分布と吹きだまり量との関連について詳細なデータを取得した点も、非平衡状態における防雪林周辺の吹きだまり発達過程の解明および今後予定している現象の数値モデル化において大きく寄与するものである。 以上より、本課題については(2)おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
防雪柵周辺での吹きだまり発達過程の観測を継続し、実測データを蓄積する。またこれらの防雪施設を対象として、風速計を用いた風速モニタリングも随時行ない、吹きだまり発達と風速変化との関連について解明する。なお風洞実験により、熱線風速計、超音波風速計やPIV等を用いた模型柵周辺の平均風速分布および乱流構造の測定など、風の構造に関する詳細な計測も随時行ない、吹きだまり発達による雪面形状変化に伴い乱流構造がどの様に変化するかなどについて解明する。気流に関しては、実測と風洞実験との間に成り立つ相似則がある程度確立されており、実現象に関する高精度の解析が実施可能である。吹きだまりについては、目視計測および小型ヘリコプター等による空撮技術の適用も検討し、3次元的な形状変化の計測についても検討する。 さらには、防雪林・防雪柵など防雪施設周辺の気流・吹きだまりを数値解析により再現する。防雪柵・防雪林モデルを乱流モデルに組み込み計算し、実測値との比較から、防雪施設モデルに用いられている各種パラメータの同定を行なうなど、モデルの検証および高度化を実施する。非定常流を想定した数値計算も実施し、非平衡状態での吹きだまり発達過程の数値解析を行なうほか、申請者が現在開発を進めている積雪変質モデルも導入し、気温や日射の影響による積雪構造の変化とそれに伴う吹きだまり形状変化についてもモデル化を検討する。 最終的には、野外観測、風洞実験、数値モデルの解析結果を含めて総合的に解析し、非平衡状態における吹きだまり発達過程について実用上有用なパラメタリゼーションを検討する。
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Causes of Carryover |
冬期の野外観測地は北海道上川郡新得町であり、当初、出張旅費(山形県-新得町間)を十分に確保していた。しかし、申請者所属機関において実施している他のプロジェクト研究において、同じ北海道の道東地方(北海道標津郡中標津町)にて実施するテーマがあり、観測準備および観測に関する出張時において、幾度か合算による旅費支出があった。それにより旅程の効率化および旅費の節約が発生し、ひいては当該助成金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
観測において、観測地の無雪時の地形調査、および冬期観測における機器の設置、撤収、さらに観測期間中の目視観測、計4度の渡航費用(山形県-北海道)が最低限必要であり、計画当初より計上している。今年度以降、吹きだまり発達時における吹きだまり形状観測、吹雪時における気象観測なども複数回実施するため、更なる渡航費用の計上が必要となり、次年度使用額をこれに充当する。
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