2014 Fiscal Year Research-status Report
生体組織と電子回路・精密機械を融合した生体組織融合化新世代人工臓器の開発研究
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25350539
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
岡本 英治 東海大学, 札幌教養教育センター, 教授 (30240633)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 人工臓器 / 補助人工心臓 / 補助循環 / 細胞外マトリックス / チタンメッシュ / 人体通信 |
Outline of Annual Research Achievements |
人工心臓と生体の融合化には,1)既存の生体組織の利用と2)生体組織の誘導の二つの方法があり,本研究では最終的に両手法を共に応用する生体―精密機械融合型人工心臓の開発を目指している. 1)の方法に1)の方法として補助人工心臓の入力側・流出側のconductに動脈を用いることを目的に,大動脈に直列に挿入する大動脈基部装着式軸流型補助人工心臓の開発を行っている.この補助人工心臓はモータとインペラのみを動脈に設置する最新の第三世代ポンプで,人工心臓の小型化,流入と流出用カニューラを不要とでき人工物の削減とそれにともなう血栓形成の抑制効果を期待できる.本年度は,この開発した軸流型補助人工心臓のヤギを用いた動物実験による評価を行った.今回がこの補助人工心臓の最初の動物実験であることより術式の確認等を含め,大動脈基部ではなく手術が容易な下行大動脈に軸流型補助人工心臓を設置した.その結果,心臓と並列接続する従来型補助人工心臓と異なり,ポンプ回転数の上昇に伴う補助循環量が増加しても左心室が作る拍動流を維持したまま循環補助ができ,ポンプ下流の臓器に大きな補助効果を期待できるものと考えている. 2)の方法として,骨再生の細胞外マトリックスであるチタンメッシュの応用について,最初に体内の人工心臓のモニタリングを目的とする人体通信を利用した経皮的情報通信システムの体内通信ユニット用電極に関する研究を行っている.今年度は,チタンメッシュ電極を搭載した体内通信ユニットを製作してヤギ胸腔内壁に装着し内蔵電池により通信電流6mAを印加しつつ埋込み実験を行った.28日後に通信ユニットを取り出し評価したところ,チタンメッシュ電極内に生体組織が誘導され通信ユニットが安定に固定され,白金イリジウム電極を用いた場合と異なり体内通信ユニット全体のカプセル化も進み電気的接触不良もなく良好な結果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大動脈基部装着式軸流型補助人工心臓の開発では,前年度は人の循環を維持するにはポンプ特性として不足するとこがあったが,本年度はインペラの加工精度を上げる工夫によりポンプ特性を大幅に改善することができた.また,インペラ加工精度は動圧軸受の性能向上にもつながり,理論的に算出した動圧軸受性能に近い性能を出せているものと考えている.今年度は定常流ポンプによる直列挿入方式循環補助について,動物実験によりポンプ拍出量を増加させても心臓が作り出す拍動流の振幅をそのまま維持されることを世界で初めて明らかにしたことは非常に意義深く,本研究は概ね計画通りかあるいは申請時の計画に対し先行して進んでいるものと考えている. チタンメッシュの人工心臓応用に関する研究では,前年度にはチタンメッシュの生体応用下での電気的特性について明らかに,本年度にヤギを用いた動物実験によりヤギ胸腔内壁におけるチタンメッシュの組織誘導電極として良好に機能することを明らかにした.しかし,ヤギに埋め込んだ体内通信ユニットを用い通信実験を行った際,電源や信号線の配線長さが短くなることで体外側通信ユニットでの信号レベルが大きく低下することが明らかになった.これは想定外の結果であり次年度の課題であるが,概ね研究計画通りに進んでいるものと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
大動脈基部装着式補助人工心臓では,動物実験を通して大動脈基部に装着するには予想以上にポンプの小型化が必要であることが明らかになった.また今年度は実現できなかったが,大動脈直列挿入補助下でのポンプ上流の血行動態の変化,すなわち冠血流量や脳血流量の変化を測定し,大動脈直列挿入補助を行う際に最適なポンプ設置位置を決定する必要があり,再度,動物実験により検証する必要がある.そして最適なポンプ設置位置に応じたポンプ形状の再設計を行う必要があると考えている. チタンメッシュの経皮的情報通信システムの応用では,体外側通信ユニットの受信感度を改良が必要であると同時に,チタンメッシュ内部に誘導された細胞・組織を精査し,チタンメッシュを胸腔内で使用するにあたってのより最適な使い方について検討を進める必要がある.
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Causes of Carryover |
本研究ではラットの動物実験において,ペントバルビータルの腹腔注射による麻酔で実施していたが,東海大学動物実験委員会より倫理的立場より気化麻酔への切り替えを強く要望され,急遽に麻酔器を購入する必要が生じた.本研究申請時には麻酔器の購入が予算申請に入っていたが採択にあたり配算金額を削られたため麻酔器購入を諦めていたが,麻酔器を購入せざるを得ない状況となったため,2014年度の支出を抑制していた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度からの繰越金が麻酔器相当にあたり,2015年度すぐに麻酔器を購入し2015年度の実験に使用予定である.
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Research Products
(15 results)