2015 Fiscal Year Annual Research Report
結核菌抗原遺伝子を用いた抗腫瘍DNAワクチンの創製
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25350555
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
小山 義之 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 客員研究員 (00162090)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 遺伝子治療 / 結核菌抗原 / ネオアンティジェン / ネオエピトープ / 免疫治療 / プラスミドDNA / 抗腫瘍効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、腫瘍組織内で高い遺伝子発現を示すDNA複合体遺伝子導入システムの開発に初めて成功した。このシステムを利用して、サイトカイン遺伝子を癌移植モデルマウスに導入したところ著しい治癒効果が得られた。しかし、イヌ、ネコの動物臨床研究において、原発性腫瘍では必ずしも十分な効果は認められなかった。原発性腫瘍の免疫治療においては、免疫のターゲットとなる腫瘍特異的な変異型ネオアンティジェンを腫瘍細胞が持っているかどうかが、その効果を決定する大きな因子となる。 そこで我々は、腫瘍細胞に人工的にネオアンティジェンを導入し、抗腫瘍免疫を惹起するシステムを考案した。本研究では、人工ネオアンティジェンとして抗原性の高い結核菌抗原タンパクであるESAT-6、Ag85Bを選び、その抗腫瘍効果を調べた。 これらの遺伝子を担癌モデルマウスに投与すると、いずれも明らかな腫瘍の増殖抑制を示し、その効果はGM-CSF、IL-12などのサイトカインと同等以上であった。より免疫効果を高めるために、結核菌抗原遺伝子とサイトカイン遺伝子を同時投与すると顕著な相乗効果がみられ、適切な混合比においては腫瘍の完全な消失が観察された。さらに動物臨床研究において、イヌの原発性腫瘍に対しても著しい腫瘍退縮効果が確認された。 ESAT-6遺伝子で治療を施したマウスではESAT-6 に対する高い細胞性免疫が確認された。また、縮小した腫瘍組織にはT細胞や単球系細胞の集積が見られた。腫瘍細胞が結核菌抗原エピトープを提示し、これを取り込んだ樹状細胞がこれをネオエピトープとして認識して成熟し、同時に捕食した腫瘍抗原に対する免疫をも強く惹起したと考えられる。 このような微生物抗原遺伝子のDNAワクチンは、免疫原性の弱い腫瘍の免疫回避をブロックし、抗腫瘍免疫を強化するがん免疫療法の新しいストラテジーとして高い可能性を持つことが確認された。
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