2014 Fiscal Year Research-status Report
移植腎傷害早期診断バイオマーカーとしての尿中L-FABPの前臨床研究
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25350559
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
片山 泰章 岩手大学, 農学部, 准教授 (70436054)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 雅雄 岩手大学, 農学部, 准教授 (20392144)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 虚血再灌流傷害 / 猫 / 腎臓 / L-FABP / GFR |
Outline of Annual Research Achievements |
ネコ腎臓に酸化ストレスを与えた時にヒトと同様にL-FABPが近位尿細管上皮細胞から尿中に分泌されるか調べるために、ネコで両腎を40分間虚血後再灌流することにより虚血再灌流モデルを作成し、術後の腎機能および尿中L-FABP分泌量を経時的に調べた。 血液検査の結果、虚血ネコでは術後1日でBUNが2倍以上に増加し、術後2日目に最高値59.7mg/dlを示し、その後徐々に低下して術後5日から術前の値にほぼ近い数値となった。血清クレアチニン値は術前1.22mg/dlに対して術後1日で最高値2.96mg/dlを示し、以後BUNと同様に徐々に低下し、術後14日で術前よりも低値を示した。 虚血ネコのGFR値を調べた結果、術前はネコの正常値の79%程度であったが、術後1日で47%まで減少した。その後、虚血ネコのGFR値は術後5日で72%、14日で82%と術前よりも高い数値となった。本研究においてコントロールネコのGFRを調べたところ、術後のGFR測定値は正常値に近い範囲内でほぼ一定の値を示した。以上の結果、BUN、CREの上昇とGFRの低下が見られたことより、虚血ネコで軽度の急性腎障害が発生していたことが確認された。 次にネコの腎臓に酸化ストレスが生じた際にL-FABPの尿中分泌量が変動するか抗ヒトL-FABP抗体を用いたWestern Blottingで検証した。コントロールネコはシャム手術前後のどの時間においてもL-FABP特異的な14kDaのバンドは検出されなかった。一方虚血再灌流ネコの尿では、再灌流1時間後の尿でのみ14kDaのL-FABP特異的バンドが検出された。以上の結果、ネコにおいて虚血酸化ストレスが近位尿細管上皮細胞に生じるとL-FABPの尿中分泌量が有意に増加することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験のコントロールとして用いるシャム手術モデル群の作成が若干遅れている。残り1頭の実験検討で終了である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、移植腎の急性拒絶反応の早期発見のための尿中L-FABPの有用性を明らかにする。本実験では腎移植後免疫抑制治療により腎機能を安定させた後、免疫抑制剤投与を中止し急性拒絶反応を誘発する。急性拒絶反応が誘発される前後で、尿中L-FABP以外に生化学検査、尿検査、GFR測定、腎バイオプシーによる組織検査(免疫染色を含む)を経時的に実施することにより腎機能を評価する。実験ネコの移植後の血清クレアチニン値が10mg/dlに達した時点を本実験のエンドポイントとする。 また、本実験では猫特有な尿中タンパク質であるコーキシンを評価項目に加える。コーキシンがネコの近位直尿細管上皮細胞から分泌されるネコ科特有のタンパク質であり、腎傷害時には、分泌細胞が減少するため、尿中排泄量が減少することがすでに報告されている。本実験ではコーキシンとL-FABPに負の相関が認められるかについても検証する。
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