2014 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ流体素子への超低温耐性・降温制御性付与と,オンチップ細胞調製への応用
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25350576
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
二井 信行 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (10508378)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マイクロ流体デバイス / 細胞培養 / 凍結保存 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞ベースのバイオセンサを実際的な意味で実現するためには,細胞を搭載したデバイスを長時間輸送したり,倉庫で保管したりすること,つまり「物流に載せる」必要がある.そのため,細胞を導入した状態のバイオセンサデバイスを,内部の細胞を死滅させずに凍結保存可能とすることの意義は大きい.一方,デバイス内で凍結することで,細胞の解凍後生存率が改善する可能性も十分に期待でき,もしかすると「細胞凍結に適する」デバイスが生まれる可能性もある.そこで,本研究では,本研究室でインキュベータ外長期細胞培養用に開発したマイクロ流体デバイスにSV40-T2細胞を播種したのちプログラムフリーザを用いて,-80℃まで冷却し,解凍後の生存率を確かめる実験を行ったその結果,細胞周辺に数10ul以上の体積の凍結保存液があるオープンスペースならば,細胞は解凍後も約40%の割合で生存した.ただし,解凍後の凍結保存液の除去が遅れると,細胞の生存率は大幅に減少した.一方,流路内に入った細胞が凍結・解凍後に生存した例は見いだされなかった.これは,解凍後に流路内に大量の気泡が生じることが確認されていて,両者は関係あるものと考えられる.以上の実験結果を踏まえ,マイクロ流路の導入口に比較的大容量のリザーバを設置して細胞を懸濁した凍結保存液を導入し,流路には液体を一切導入しない状態で凍結・解凍することにした.流路に液体を導入せずに凍結解凍することとしたため,当初計画していた,点字デバイスによる凍結保存液除去は行うことができなかったものの,解凍後に凍結保存液を除去し,培地を導入することにより,マイクロ流体デバイスとしての機能が損なわれず,かつ細胞が生存するシステムとすることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画に示した,点字デバイスによる凍結解凍操作の実現と,それによる細胞生存率の向上の検証が,当初計画にて想定しない問題により実現できていないということで,「やや遅れている」とした.しかし,今年度において,流路に液体を入れない方針に変更したことにより,細胞を播種した状態で凍結保存できるマイクロ流体チップの実現のめどがたったという意味では,本研究の最大の目的の達成に向けては,順調に進んでいると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロ流体デバイスを細胞凍結に適するように改良する試み,具体的には,流路末端の細胞導入口に小リザーバを設け,10ulオーダの凍結保存液とともに細胞を凍結解凍できるようにしたことにより,デバイス内細胞凍結保存は可能になったものの,凍結保存液の除去のためには小リザーバから凍結保存液を直接吸引するしか方法がなく,同時に失われた細胞も多いと考えられる.そのため,マイクロ流路と小リザーバの構成を最初から見直し,なるべく簡便にかつ凍結保存液のみを除去できるシステムとなるよう改良を施し,その性能を検証する. 点字駆動については,事前のプライミングが不要な大流量の駆動が可能になるように流路を改良,また,解凍前後の大量の結露に対して点字デバイスを保護するための工夫を施すことを検討する. 加えて,液体を導入したマイクロ流路の凍結解凍後に大量に気泡が生じている原因として,PDMSから脱離したガスが流路内に気泡として蓄積する可能性が指摘されているため,真空などによる脱ガス環境での凍結保存,気泡が入っても大丈夫な流路設計,などの対策を具体的に行い,その効果を評価する.
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Causes of Carryover |
当初計画で想定しないデバイスの改良を行った期間があり,細胞培養を伴う実験を行う機関が短くなったため,その分細胞培養用の費用が少なくなった.また,独自の加工機を導入したことにより,当初予定していたデバイス作成用部品の外注が少なくなったことも挙げられる.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度は,細胞培養を伴う実験が増加するため,細胞培養用の消耗品ならびに器具類の追加に使用する予定である.また,細胞の生死判定の蛍光評価を本学で行うために,蛍光試薬や顕微鏡用オプション品が追加となる.デバイスの製作のための費用は引き続き支出する予定である.
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Research Products
(2 results)