2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25350587
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
岩城 正昭 国立感染症研究所, その他部局等, 研究員 (20176530)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ワクチン / 力価試験 / 破傷風 / 動物実験 / 3Rs |
Outline of Annual Research Achievements |
[目的]ワクチンなどの生物学的製剤は一般の医薬品とは異なり、「物理化学的手法だけではその安全性・有効性を評価できない(WHO)」ため、品質管理においては実験動物が用いられることが多い。特に破傷風ワクチン(破傷風トキソイド)の有効性を調べる力価試験においては、マウスにワクチンを投与(免疫)しておいてから人為的に毒素を投与(毒素攻撃)し、耐えるかどうかを指標にする試験法のため、動物に苦痛を強いている。動物福祉の観点から、より苦痛の少ない試験法の開発が望まれる。そこで本研究では、免疫によりマウスに付与された防御能を、毒素攻撃によらずにin vitroで測定できる手法の開発を目指す。 [方法]防御抗体価のin vitro測定法として、本年度は毒素の細胞への結合の抗体による阻害能の定量系を検討した。破傷風毒素は二つのレセプター結合部位を持ち、一つはガングリオシドを認識する。もう一つはnidogen 1という蛋白質の特定の領域を認識することが2014年に報告された。本年度は昨年度に引き続き、nidogenと毒素の結合の抗体による阻害能の定量をめざした。 [結果と考察]昨年度はnidogen1の全長および毒素結合部位のペプチドを固相に固定し、酵素による発色法で破傷風毒素のレセプターへの結合を検出することができたが定量化と検出感度が低く実用的ではなかった。そこで本年度は発色法の代わりに蛍光による検出を試みたが、バックグラウンドを低減することができず、実用的な毒素-nidogen結合の検出系を構築することができなかった。その後海外の学会で得た情報などから、nidogenと破傷風毒素の結合の強度は、単独で検出系を構築するには不十分である可能性があると判断し、nidogenを単独で利用せず糖鎖と併用するなどの工夫が必要と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
理由 当初、nidogen 1と毒素の結合を指標に、抗体による毒素活性阻害の程度を定量化する測定系の構築することは予定していなかったが、新規に見出された破傷風毒素レセプターであるため、測定系構築に好適である可能性があると考え、当初方針を変更して実験を行なった。しかし実験結果および入手した情報から、nidogen 1は単独では測定系構築の材料として不適であることが示唆された。nidogen 1の単独利用についての検討を行った1年間、研究が遅れることとなった。そのため研究期間の延長を申請し認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の方針に戻り、 (1)毒素の細胞への結合、(2)毒素による標的蛋白VAMP2の切断、の抗体による阻害能の測定系の開発を続行する。(1)については、糖鎖レセプターであるガングリオシドを固相化し、結合と抗体による阻害を検討する。nidogenとの併用についても検討する。(2)については、初年度開発した基質に加え、新たに調製した基質を用いた測定系の構築を検討する。また、上記で検討する抗体の中和活性に加えて抗体の毒素への結合活性をELISA等により測定し、in vivo力価試験との比較を行ない、代替法としての妥当性があるかどうかを検討することも行なう予定である。その上で、in vivo法の代替法として最適な評価系を提示することを目指す。
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Causes of Carryover |
研究期間の延長を申請し認められたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初、最終年度に予定していた試薬の購入などに使用する。
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