2014 Fiscal Year Research-status Report
CTによるサルコペニア指標の開発およびサルコペニアによる摂食・嚥下障害の解析
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25350611
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
若林 秀隆 横浜市立大学, 大学病院, 助教 (80508797)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | サルコペニア / 摂食嚥下障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】摂食嚥下障害で言語聴覚療法(ST)を施行された癌患者の大腰筋筋肉量、ADLと退院時経口摂取の関連を検討する。 【方法】対象は2010年5月から2014年4月に当院で摂食嚥下障害に対するSTを実施した癌患者111人。ST開始時に近い腹部CTで第3腰椎レベルの両側大腰筋面積を評価した。骨格筋指数を両側大腰筋面積÷身長÷身長で算出した。退院時の経口摂取可否と、ST開始時の骨格筋指数、Barthel Index(BI)の関連を検討した。 【結果】平均年齢70±10歳、男性86人、女性25人。食道癌55人、咽頭癌2人、肺癌13人、胃癌11人、脳腫瘍6人、大腸癌5人、前立腺癌5人、その他14人。ステージ1:20人、2:19人、3:39人、4:27人。入院からST開始の中央値18日、ST実施期間の中央値31日。退院時経口摂取可能78人、不可能33人。骨格筋指数は男性5.68 ± 1.74 cm2/m2、女性4.43 ± 1.21 cm2/m2。ST開始時のBI中央値20点。喉頭麻痺あり45人。BMI21.0±3.6、Alb2.6±0.6g/dl、CRP中央値2.0mg/dl。 経口摂取可否で単変量解析を行うと、BI(32 vs. 0, p<0.001)、年齢、血清アルブミン、癌部位に有意差を認めた。骨格筋指数(5.56vs. 5.00, p=0.129)、性別、ステージ、BMI、CRP、喉頭麻痺には有意差を認めなかった。経口摂取可否と、骨格筋指数、BI、年齢、性別、血清アルブミン、癌部位、ステージ、喉頭麻痺のロジスティック回帰分析では、骨格筋指数(オッズ比1.829, 95%信頼区間1.107-3.022, p = 0.018)が経口摂取可否と独立した関連を認めた。BI(オッズ比1.019, 95%信頼区間0.997-1.042, p=0.098)は有意な関連の傾向を認めた。年齢、性別、血清アルブミン、癌部位、ステージ、喉頭麻痺は明らかな関連を認めなかった。 【考察】摂食嚥下障害のある癌患者では、大腰筋筋肉量が退院時経口摂取と関連する。ADLは退院時経口摂取と関連傾向を認める。サルコペニアの摂食嚥下障害の存在が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前サルコペニアの診断に必要な骨格筋指数(両側大腰筋面積÷身長÷身長)のカットオフ値は、男性5.67cm2/m2、女性3.95cm2/m2という論文が報告された(Otsuji H, Yokoyama Y, Ebata T, Igami T, Sugawara G, Mizuno T, et al. Preoperative sarcopenia negatively impacts postoperative outcomes following major hepatectomy with extrahepatic bile duct resection. World J Surg. 2015 doi:10.1007/s00268-015-2988-6)。そのため、日本人基準値の作成は不要となった。しかし、摂食嚥下障害とサルコペニアの関連を検討し、さらに骨格筋指数と摂食嚥下障害、ADLの関連を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度は摂食嚥下障害を認めSTを実施した癌患者に限定して研究を実施した。今年度はがんリハビリテーションを算定して実施したすべての癌患者を対象として、摂食嚥下障害の有無とサルコペニア、低栄養の関連を前向きコホート研究で検討する。サルコペニアの有無は、臨床目的で行われた腹部CTと握力、歩行速度で評価する。摂食嚥下障害の有無は嚥下スクリーニング質問紙票であるEAT-10で、摂食嚥下障害の重症度は10段階の摂食嚥下レベル評価指標であるFILSを用いて評価する。栄養状態はMNA-SFおよび悪液質の有無、ADLはBarthel Indexで、嚥下筋力は舌圧で評価する。摂食嚥下障害の有無とサルコペニア、低栄養、悪液質の関連を、スペアマン順位相関係数、Mann-WhitneyU検定とロジステッィク回帰分析で検討する。
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Causes of Carryover |
人件費・謝金が全く発生しなかったことと、投稿論文のアクセプト時期が遅れて掲載料の支払いが次年度に繰り越しになってしまったことのため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現時点で投稿論文掲載料の支払いが必要なアクセプトされた論文が2つあるため、投稿論文掲載料として次年度に使用する。
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Research Products
(3 results)