他者との身体的な相互作用に基づく歩行機能の獲得支援技術に関する研究

2014 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 25350679
• Research Institution: Bunkyo University
• Principal Investigator: 武藤 剛 文教大学, 情報学部, 准教授 (50433701)
• Project Period (FY): 2013-04-01 – 2017-03-31
• Keywords: 歩行訓練 / バイロジカルモーション / HCI / 歩容

Outline of Annual Research Achievements

他者との歩行運動の相互作用によって障がい者の歩容改善を目的とした歩行訓練装置の開発を進めた．具体的には，歩行中の上下肢及び体幹の動きを，新たに加速度センサによるモーションキャプチャシステムにより計測し，リアルタイムで自身の歩行運動と模範となる歩行運動の違いを視覚的に提示する形式の歩行訓練装置の開発を進めた．
26年度は，25年度までに開発を進めていた，CGの人体モデルと被験者の歩行運動をバイオロジカルモーションとしてリアルタイムで表現する装置の精度向上を目的とした改良をすすめ，システムの提示刺激と歩行中の肢体運動が，より高い精度でそれぞれの歩行運動を適応させ合う形式で，お互いの運動のずれをなくしてゆくことで，歩容の改善訓練を実現できる装置としての変更を行った．
その結果，これまでのシステムと比べ，下肢の軌道が安定する傾向がより顕著に確認でき，より高い歩容改善効果が観察された，新たに作成したシステムによる訓練が，膝関節の動きの改善．また，膝関節において関節の自由度を拘束した被験者の歩行運動の軌道の不安定性に関しても，本装置を用いた訓練歩行を行っている際は自由歩行時の軌道により近くなる傾向にあった．このことからが実現できる可能性が明らかとなった．以上のことは，本研究が提案する歩行インタラクションシステムがより適切に構成されたこと及び，本研究が提案する歩行訓練手法が有効であることが示唆された．

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

申請時点の予算計画では，最新型のモーションキャプチャを用いて，他者との相互作用という観点からCGの人体モデルとして被験者の歩行運動をバイオロジカルモーションとしてリアルタイムで表現する装置を2組用いた装置を新たに作成すること，そして，その装置に2名（訓練者と被訓練者）の歩行中の肢体運動の違いがバイオロジカルモーションのCG映像のずれとしてリアルタイムで確認できる機能と，両者の歩行中の脚のステップリズムを相手にリズム音として聴覚的に提示する機能を実装することを計画していた．また，その結果を踏まえ，これらの情報を手掛かりに，両者がそれぞれの歩行運動を適応させ合う形式で，お互いの運動のずれをなくしてゆくことで，歩容の改善訓練を実現できる装置の開発を進める予定だった．
しかし，24年度末と25年度末に，予定には無かった代表研究者の研究機関の異動の必要が合計2度生じたため，当初の予定とは研究環境が大きく変わってしまったため，計画を予定通り進めることが困難となってしまった．また，26年度にも別の大学（現所属）へ異動することとなり，26年度も，異動先の大学で研究の開始に必要な実験環境を整えるために多くの時間を要してしまう状況となった．したがって，4～5名程度の肢体麻痺障がいを対象とした実験への着手には至らず，健常者を対象とした動作確認実験の実施にとどまった．また，音刺激を活用する機能に関しても実装や，学会発表等による研究成果の公開に関してもにも達成できておらず，計画よりもやや遅れている状況にあると判断する．

Strategy for Future Research Activity

25年度に完成予定だった他者との歩行運動の相互作用によって障がい者の歩容改善を目的とした歩行訓練装置の開発に関し，27年度では，そのシステムの基本的な機能の実装が完了した状況である．そこで，27年度の前半において，健常者を対象とした，作成したシステムの動作確認実験を行う．
そのうえで，4～5名程度の肢体麻痺障がいを対象としてそれぞれ10分程度の訓練過程の計測を行い，健常者の場合との違いも検討する．また，相互作用系のモデル化に関しては，外因性，内因性の両方の改善プロセスを支援するという観点から，申請者らが開発を進めてきた歩行支援装置に実装されている自己組織特性を持つ非線形振動子の相互引き込み系（Mutual Entrainment）による実装をする．具体的には，膝または，股関節の関節角度を関節の角度振動の位相情報とみなし，それと非線形振動子の1例であるVan der Pol方程式又は，位相方程式を実装した訓練装置とカップリングさせ，リズム音とCG映像の双方から，被訓練者の歩行運動との間で相互引き込みに基づく歩行訓練（実験条件）の実現を目標に研究を進める．

Causes of Carryover

24年度末と25年度末に，予定には無かった代表研究者の研究機関の異動の必要が合計2度生じたうえ，26年度は，必要な装置の購入や必要な研究設備を用意するのに時間がかかってしまった.そのため，計画を予定通り進めることが困難となってしまい，研究計画に遅れが生じ，予算を十分消化することができず，次年度使用額が生じた．

Expenditure Plan for Carryover Budget

まずは，26年度に着手する予定だった他者との歩行運動の相互作用によって障がい者の歩容改善を目的とした歩行訓練装置による歩行訓練実験を開始する準備を行う．具体的には，システムのキャリブレーションや，健常者による予備実験を入念に行い，年度内に実際の歩行障害を対象とした訓練に着手することを目指す．そのため，実験データの記録媒体と，実験補助員の謝金や，国内研究協力者との打合せのために旅費が必要となる予定である．また，併せて学会発表や，国内外の論文誌への研究成果の投稿も行う予定であり，そのための掲載費や渡航費も必要となる予定である．