2013 Fiscal Year Research-status Report
前腕切断者の作業を支援する筋電位を用いた機器制御手法に関する研究
Project/Area Number |
25350680
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
曲谷 一成 東海大学, 工学部, 教授 (00181610)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 筋電位 / 手指の動作識別 / 正準判別分析法 / SVM |
Research Abstract |
我々の研究目的は前腕切断者の残存筋に注目し、そこから導出した複数チャネルの筋電位を用い前腕切断者の意志に従った動作を推定することが可能なマン・マシンインタフェースを構築することである。 今年度の目標は1) 我々の開発した96チャネルで構成された多チャネル電極を用い利用者毎の最適な導出筋電位数と筋電位導出位置を決定する手法の開発、2) 利用者が動作の時間遅れを意識しないような手指動作の識別時間の決定、3) 筋電位信号から筋が発生している力を実時間で推定する手法の開発である。 上記事項1)については、我々の開発したモンテカルロ法を応用した電極位置決定手法を用い、20名の健常被験者について実験を行い次の結果を得た。すなわち我々の開発した手法であれば各被験者の前腕部から、被験者毎に最適と思われる4チャネルの筋電位を導出する位置を決定し、手指の基本8動作についてほぼ94%以上の動作識別が可能であることが確認された。 2)については我々が特徴料として用いている導出した筋電位の絶対値の積分値について、10名の健常被験者について実験を行い次の結果を得た。すなわち積分時間を100ms~400msの間で変化させた結果、認識率と被験者の感じる実時間性はトレードオフであり、用いる識別規則(今回は線形識別則として正準判別分析法と、非線型識別則としてシグモイド・カーネルを用いたSVMを比較した)にも依るがどのような識別則を用いても、ほぼ300ms程度が最適な値であるとの結論を得た。 3)については以前より筋電位の絶対値の一定時間における積分値が、筋の発生する力にほぼ比例することが知られている。今回我々は握り動作について握力計を用い、1)で開発した手法により決定した電極位置から得た筋電位の振幅と被験者の握力が非常に高い線形的相関を示すことを確認した。他の動作と力の関係については来年度に解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の研究目標は前腕部より導出した筋電位から手指の動作を正確に識別する手法、およびその際に筋から発生する力を推定する手法を開発し、これらを統合することにより前腕部筋電位により動力義手に代表される機器を制御するためのマン・マシンインタフェースを開発することである。助成金申請時の調書において、平成25年度の研究計画は研究目標に対して概ね以下の通りである。 1)利用者毎に最適な導出筋電位数と筋電位導出位置を決定する手法の開発。2)利用者が動作の時間遅れを意識しないような手指動作の識別時間の達成。3)筋電位信号から筋が発生している力を実時間で推定する手法の開発。 以上に対して我々は平成25年度次に述べる成果を上げた。1)我々が開発したモンテカルロ法を利用した手法を用い以下の結論を得た。最適な導出筋電位数は被験者に依らず4で良い。導出位置は被験者毎に最適な位置があり、その位置は上記手法で推定可能。 2)従来通り特徴量として導出した筋電位の振幅の積分値を用いる場合、識別規則が線形の場合(正閏判別分析法)であっても非線形の場合(シグモイド・カーネルを用いたSVM : Support Vector Machine)であっても、リアルタイム性と動作識別率はトレードオフの関係にあり、積分時間は従来通り300ms内外が被験者がストレスを感じない最適な値であると考えられた。 3)握り動作に関しては、被験者が動作を行う際に発生する筋電位の振幅が握力に比例することが実験の結果確認された。この結果として「握り」動作に関しては握力をほぼリアルタイムで推定することができた。 このように当初目標とした事項に関してほぼその内容を満足する研究成果が得られたと考えられる。ただし、2)に関しては識別規則等の工夫をすることで改良の余地があると考える。また3)に関しては今後他の動作についても力推定の手法を見いだす必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように当初目的とした平成25年度の研究目標はほぼ達成できたと考えている。ただし、筋から発生する力の推定に関しては「握り」動作に関しては動作時に発生する筋電位の振幅と筋の力の関係が、比例関係にあることを確認したが他の動作に関しては未確認である。筋の発生する力を推定することは実用的なインタフェースを構築する場合必須であり、平成26年度は先ずこの問題を取り上げ筋の発生する力と筋電位の関係を明確にする予定である。 平成26年度以降の研究計画は、今までに得た研究成果を何らかのシステムに実際に適用し、前腕部から導出した筋電位を用いて具体的な機器制御が可能なマン・マシンインタフェースを構築し、それを評価することにより実用的な前腕切断者のための機器操作が可能なインタフェースを開発したいと考えている。その内容は具体的には次の通りである。1) 制御対象として市販されているロボット・ハンドを用い、当面は被験者を健常者とし被験者の前腕部より導出した筋電位によりロボット・ハンドを制御可能なインタフェースを開発する。 2) 前腕部より導出した筋電位により識別を行う手の動作は当面(握り、開き、掌屈、背屈、回内、回外)の6動作とし、被験者の動作をリアルタイムでロボット・ハンドの動作に反映するような制御システムを開発する。 3) 「握り」動作に関しては力の制御を行う。すなわち「握り」動作に関しては計測した筋電位より被験者の握力を推定し、その値に応じてハンドの把持力を制御できるようなシステムを構築する。 4) 元来人間は「握り」等の動作を行うとき物体を握ることによって生じる反力を物体から受けておりこれに従って握力を制御している。そこでこの反力を被験者に提示する機構を開発し正しい「握り」が行えるフィードバック・システムの開発を目指す。 5) 他の動作における力の制御、複合動作の実現等に関する基礎研究を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本来は消耗品を購入予定でしたが、研究を遂行するに当たり購入した消耗品が予定額より安価なものが幾つかありました。このため使用予定額より実質使用した金額が安くなり残金が発生いたしました。 平成26年度における消耗品費にプラスして消耗品の購入に充てる予定です。
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