2013 Fiscal Year Research-status Report
筋肉の協同発揮と姿勢調整・姿勢反射の重ね合わせに基づく能動的起立支援
Project/Area Number |
25350693
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
中後 大輔 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (90401322)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 起立支援 |
Research Abstract |
本年度行った研究概要は,以下の通りである. 1.起立動作モデルの構築 (1) 支援を受ける高齢者の起立動作解析 日常生活で起立動作に支障がある高齢者に,装置の補助を受けながら起立動作をしてもらい,身体の動きおよび床・椅子・起立支援装置にかかる力を,モーションキャプチャ装置,フォースプレートおよび体圧測定装置を用いて測定,「(3) 多変量計測法とその表現法の確立」の手法を用いて記録した.これらのデータにおける,身体の動きと重心・ZMP変動の相関性より,起立動作中に身体を安定化させようと発現していると考えられる高齢者の「姿勢調整」「姿勢反射」を身体力学的に抽出した. (2) 調整・反射機能のモデル化 身体力学的な状態を模倣する人間モデルに,「姿勢調整」「姿勢反射」を表現するモデルとして予測的姿勢調整モデル,内部反射モデルを組み込んだ.その人間モデルに「(1) 支援を受ける高齢者の起立動作解析」で測定した情報を入力して高齢者の起立動作の再現を試み,概ね高齢者の特徴的な起立動作を再現することが出来た.なお,特定の姿勢(中腰)において,高齢者の起立動作の再現が上手くいかない場合があり,機能別の筋肉配置を考慮した二関節筋モデルを適用することを検討している. 2.運動機能特性の推定 (3) 多変量計測法とその表現法の確立 「(1) 支援を受ける高齢者の起立動作解析」と並行し,各センサデバイスをミドルウェアであるCORBAを用いてEthernet(有線及び一部無線)で接続し,各生体情報を時間同期を確保しながら,ネットワーク内に設置した中央サーバーで集中的に記録・管理するシステムを開発した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は,本来今年度と来年度前半において,「(2) 調整・反射機能のモデル化」を完了させる予定であった.しかし,以下の理由のため実施に遅れが生じている. 一点目は,本研究では,「(2) 調整・反射機能のモデル化」を実施するために,「(1) 支援を受ける高齢者の起立動作解析」にて各生体信号を一括で扱う「(3) 多変量計測法とその表現法の確立」を実施する予定であった.しかし,従来我々の研究室で用いてきたWindows XP環境はマイクロソフト社のサポート終了となるため,開発環境をWindows7環境に変更したところ,各デバイス間で時間同期がとれなくなる場合が発生する問題が起き,その原因究明に時間を要した.最終的に,計測ネットワークを独立させることで引き続き安全性を保ちながらWindows XP環境を使用することとし,この問題を解決した. 二点目は,「研究実績の概要」でも述べたが,「(2) 調整・反射機能のモデル化」において,特定の姿勢(中腰)において,高齢者の起立動作の再現が上手くいかない場合が発生した.検討の結果,筋肉の発生する力は同じであっても,姿勢によって関節が発揮できる力が変化することを考慮していなかったためであると考え,機能別の筋肉配置を考慮した二関節筋モデルを適用するべく,人間モデルの改良に時間を要している.本知見は当初想定していなかったが,人間の身体の動きをより高精度にモデル化するためには必須であると考えられることから,来年度引き続き検討を行う. 以上より,現在研究は予定より遅延しているが,予定外の重要な知見が得られたこと,またその知見が本研究の目的実現のために有効であることから,今後はこの遅延を十分に回復できると確信している.
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は,以下の方針に従って研究を遂行する予定である. (2) 調整・反射機能のモデル化 「現在までの達成度」で述べたように,本年度に引き続き,機能別の筋肉配置を考慮した二関節筋モデルを開発中の人間モデルに適用させることで,より高精度に高齢者の起立動作の再現を目指す. (4) 調整・反射機能と筋肉協同発揮の相関性の解明 「(3) 多変量計測法とその表現法の確立」で記録した筋電波形データから,シナジー解析を用いて筋肉の協同発揮現象を抽出し,「(1) 支援を受ける高齢者の起立動作解析」にて身体力学的に抽出した「姿勢調整」「姿勢反射」の発現と時系列で比較することで,その対応関係を比較する.すなわち,起立動作から抽出される筋肉の協同発揮現象は,その起立動作に調整・反射機能がどのタイミングにどのような割合で含まれるかという情報を表現すると考えられるため,それらの対応を時系列で明らかにする. (5) 能動的起立動作実現条件の解明 健常者の能動的な起立動作を,「(2) 調整・反射機能のモデル化」にて開発した起立動作モデルを用いて解析し,能動的な起立動作に必要な身体力学的条件を明らかにする.具体的には,能動的起立動作に密接に関わると予想される,身体の安定性の指標となるZMPの変化および筋肉の位相協調の指標となる筋肉協同発揮の発現順序とそのタイミングを評価項目として用いる予定である.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在までの達成度にて述べたとおり,「(2) 調整・反射機能のモデル化」にて,新たな要素を開発中の人間モデルに加える必要が生じた.そのため,「(3) 多変量計測法とその表現法の確立」の一環として開発中であった試作起立支援装置の被介護者計測支援システムに設計の変更が生じ,本年度中の納品予定が翌年度に延期された.そのため,次年度使用額が生じた. 被介護者計測支援システムは翌年度の早い時期に納入予定であり,その費用として使用する予定である.
|