2013 Fiscal Year Research-status Report
電動車いすの2次元傾斜モデルとその制御系設計に関する研究
Project/Area Number |
25350696
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
藤本 真作 岡山理科大学, 工学部, 准教授 (00278912)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 浩治 岡山理科大学, 工学部, 教授 (00254433)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 計測工学 / システム工学 / システム同定 / 車いす / パワーアシスト |
Research Abstract |
本研究の主な目的は、電動車いすが車いす特性(質量や摩擦など)と傾斜環境を2次元モデル(片流れ傾斜)として状態推定し、それらの情報に基づいた車いすの制御系設計法を確立することである。そこで、今年度は第1Phaseとして2次元傾斜における車いすの動特性モデルの構築に取り組んだ。実際の走行環境に対応するために2次元傾斜に対する車いすの運動方程式をラグランジュ法によって導出した。このとき車いすは運動学的な拘束つまり、車体と車輪とが連結されていることより車輪の接地点の速度と車体の並進・回転の速度が等しくことを利用している。また、斜面によってタイヤが横滑りを起こさない条件を考慮し、運動方程式を簡略化することができた。摩擦項としては、車輪と軸に生じる粘性摩擦力や路面とタイヤとの転がり摩擦力が考慮されている。つぎの第2Phaseはその動特性モデルに基づいた2次元傾斜の状態推定と適応制御法の適用である。得られた車いすモデルは、力学的な未知パラメータと計測可能な状態変数との線形結合で表現することができる。そのため、使用する適応制御則は、逐次未知パラメータを更新しながら真値に収束するように調整される。また、平地走行を想定した理想的な仮想車いすモデルの設定も行う。最後に構築された車いすシステムの性能を評価するために、まずは1次元傾斜環境(上り坂:4度)における走行制御実験を行なった。性能評価の指針として、制御面の立場から位置や推定パラメータなどの特性に加え、利用者がハンドリムに加える力つまり、推進力を得るための上腕三頭筋の筋電信号を用いることにした。その結果、推定までの応答速度(収束まで約3秒)が遅いものの車いすの状態量を推定できることを示した。また、市販品の電動車いすとの筋電信号による比較では、提案する車いすは坂道においても平地感覚に近い状態(力)で操作できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1Phaseの車いす特性と傾斜面環境の2次元状態推定は、まず2次元傾斜面を含む車いすの動特性モデルを導出することができた。しかしながら、そのモデルを用いた状態推定においては応答速度が遅いという問題が顕わとなった。また、制御性能の観点からは問題視されないものの、力学的パラメータの推定精度が悪い問題も残されている。これらの新たな問題が生じているが、モデルの導出や状態推定法はシミュレーションや一部実機による検証も行っているため、当初の目的の80%程度は達成できているものと考えている。 第2Phaseの2次元状態推定に基づいた適応制御法については、第1Phaseに基づいた適応制御法の提案を行っている。このPhaseはシミュレーションでの検証に留まってはいるものの、理論体系を整えるという観点からすれば当初の目的をほぼ達成できていると考えている。最後に、提案する適応制御系の性能評価を、その制御(追従)性能のみで検討するのではなく、使用者がどの程度、平地を走行する(漕ぐ)感覚に近い状態で坂道を走行できるのかで評価することにした。そのため、提案する車いすシステムの操作感覚を評価するために、生体信号(筋電信号)によるハンドリム操作の研究を新たに追加した。 以上の研究成果から、今年度の研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に実施した適応制御系設計法は、平坦な傾斜面上での実施に限定されていた。また、車いすの操作方法は使用者によるハンドリムの操作によるものであった。しかしながら、我が国ではハンドリム入力によるパワーアシスト車いすよりもジョイスティックによる操作方法が圧倒的に多いのが実状である。そこで、今年度は平坦でない傾斜面上での制御実験を行うとともに、2次元傾斜の状態推定量の高精度化を図りたいと考えている。また、ハンドリム入力だけではなく、ジョイスティック入力への操作対応を視野に入れた制御系設計法を行う予定である。この実施により、使用者の運動能力や残存能力に対応した個別仕様化の一つの要素を実現することができ、本研究の適用範囲を飛躍的に伸ばすことができると考えている。最後に、昨年度実施した車いす特性の推定による補償、特に重力補償などは介護者にとっても平地感覚での操作が実現できるため有効な方法と考えられる。そこで、介護者の負担を軽減するために、介護者モードの設定についても検討する予定である。
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Research Products
(2 results)