2014 Fiscal Year Research-status Report
電動車いすの2次元傾斜モデルとその制御系設計に関する研究
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25350696
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
藤本 真作 岡山理科大学, 工学部, 教授 (00278912)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 浩治 岡山理科大学, 工学部, 教授 (00254433)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 計測工学 / システム工学 / システム同定 / 車いす / パワーアシスト / ジョイスティック |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主な目的は、電動車いすが車いす特性(質量や摩擦など)と傾斜環境を2次元モデル(片流れ傾斜)として状態推定し、それらの情報に基づいた車いすの制御系設計法を確立することである。そこで、今年度は問題視されていた2次元傾斜の状態推定量の高精度化に取り組んだ。その方法は、加速度センサやジャイロセンサおよび磁気センサを内蔵した安価な慣性センサ群の情報により、拡張カルマンフィルタを構成する方法と言える。その結果、ロール・ピッチ・ヨー角の姿勢角が車いすの動作時において最大で約2度程度の誤差で計測できることを確認した。この成果は2次元傾斜面における制御系設計法の基礎となるため、本研究では極めて重要な成果と言える。つぎの段階として2次元傾斜面上のパワーアシスト車いすモデルに基づいた適応制御法の構築を行う。2次元傾斜面上での車いすモデルは、利用者を含む車いすの質量や路面との摩擦係数などの未知パラメータと状態変数とが線形結合で表現することができる。そのため、使用する適応制御則は、逐次未知パラメータを更新しながら真値に収束するように構成されている。そのとき、平地走行を想定した理想的な仮想車いすモデルを用いることにする。提案した適応制御系の有効性を、斜面の横断や斜め方向への横断などのシミュレーションにより確認した。また、どの方向からの横断においても斜面を走行でき、良好な結果を得ることができた。 一方、我が国ではハンドリム入力によるパワーアシスト車いすよりもジョイスティックによる操作方法が圧倒的に多い。そのため、そうした車いす利用者のために、今年度は力センサと直流モータを内蔵したジョイスティックを開発した。この力センサの情報により、利用者の操作方法の評価が可能となる。また、未然に危険な操作を防止するためやジョイスティックの操作教示のために、直流モータによる力提示も可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
傾斜面環境の2次元状態推定は、拡張カルマンフィルタを用いることで高速・高精度に傾斜角を推定できることを確認した。また安価な慣性センサ群(1万円程度)を用いた場合でも車いすの動作時に最大2度程度の誤差で抑えられることを確認した。しかしながら、理想的な仮想車いすモデルの出力軌道(目標軌道)への追従制御ではサーボ補償の作用により良い制御性能が得られたものの、未知パラメータのうち重力項の推定精度が悪い問題が残されている。これらの新たな問題は生じているが、2次元傾斜面上での動的な状態推定法はシミュレーションや一部実機による検証も行っているため、当初の目的の85%程度は達成できているものと考えている。 2次元傾斜面での状態推定に基づいた適応制御法については、車いすシステムに導入可能な安価な慣性センサ群に基づいた適応制御法の提案を行なっている。この適応制御系の有効性はシミュレーションでの検証に留まっているものの、理論体系を整えるという観点からすればその目的をほぼ達成できていると考えている。また、提案する制御系は推定された未知パラメータをフィードフォワード項で補償することができるため、介助者へのモード変更が容易である利点を有している。最後に、今年度から新たに導入した力フィードバック可能なジョイスティックシステムを構築し、新たな力提示法を提案した。さらに、ジョイスティック操作の感覚を物理的に力覚センサで評価することができるため、より多くの電動車いすユーザを包含できる。以上の進展状況を総合的に判断すると、今年度の研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に実施した適応制御系設計法は、ハンドリム操作による2次元傾斜面上でのシミュレーションに限定されていた。その理由は本研究が車いす利用者を伴う研究であることから、できるだけ危険な状況を回避すること(安全性)や倫理的な観点に基づくところが大きいためである。そこで今年度のシミュレーションの成果に基づいて、最終年度ではより多くの被験者に対して、実機による実証実験を実施したいと考えている。また、より多くの電動車いすユーザにも適用を可能とするためにジョイスティック操作による研究を追加したと考えている。動的な2次元傾斜面の状態推定法は、ジョイスティック操作においてもその効果を発揮できるものと考えている。すなわち、走行環境が変化しているにもかかわらず、平地感覚で操作することができるシステムの構築が可能となるものである。最後に、提案する電動車いすの評価として、ハンドリムの操作では生体信号(積分筋電信号)の情報を用いることにし、ジョイスティック操作では力覚センサの情報を用いることで対処したいと考えている。これらの実施により、車いす利用者の運動能力や残存能力に対応した個別仕様化を満足したカスタマイズ化が実現でき、本研究の適用範囲の拡大とその有効性を実証できると考えている。
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Remarks |
OUSフォーラム2014 奨励賞受賞
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