2014 Fiscal Year Research-status Report
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25350705
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Research Institution | Hakuoh University |
Principal Investigator |
金田 健史 白鴎大学, 教育学部, 准教授 (00406232)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東浦 拓郎 清和大学, 法学部, 講師 (50436268)
木田 哲夫 生理学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (80419861)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 事象関連電位 / 児童 / 二重課題 / 反応時間 / P300 / 注意処理資源 |
Outline of Annual Research Achievements |
運動やスポーツ場面では正確かつ,素早い反応が必要とされるだけでなく,自分の周りにある多くの情報を的確に認識し,処理する能力も重要である.特に,同時に複数の動作や事象に応えていくことができれば,より高いパフォーマンスを発揮することも可能になる.このように複数の動作や事象を同時に実行する場合,ヒトは注意処理資源をそれぞれに配分して処理することとなり,二重課題を用いた研究ではいずれにも反応の遅延や動作のエラーが生じると考えられている. 平成26年度は,二重課題として採用している認知課題と運動課題のうち,運動課題の難易度を操作し児童と成人における二重課題の干渉がどのように生じるかを検討した.認知課題のみをおこなうコントロール条件と握力把持によるターゲットの追跡速度が異なる二種類の運動課題(fast条件とslow条件)を認知課題と同時に実施する二重課題の計三条件をおこなった.この際,認知課題における分析対象を増加させ,かつ実験時間の延長によるパフォーマンスの低下を避けるために児童が対象となっても実施可能名範囲で刺激提示間隔を短くし,運動課題についても追跡速度が速くなることによって課題の実施回数の増加が生じるため,発揮張力を10%MVCとすることで課題の遂行が可能となるよう配慮した. 運動課題では成人,児童とも追跡速度が速いfast条件でslow条件よりも有意な正確性の低下が認められた.認知課題における行動指標である反応時間に関しては児童でのみコントロール条件と比較し二重課題条件のいずれにおいても反応時間の遅延が認められた.P300には二重課題の遂行により振幅低下の傾向が認められたが,特に児童においては個人差が大きいため有意な変化は認められなかった. これらの結果から,児童では二重課題を遂行する際に成人のような課題依存性に生じる注意処理資源の配分がなされない可能性があることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は,前年度に作成した実験条件における課題を改善し,児童が三条件を実施することによる疲労等に配慮し,認知課題の刺激呈示間隔を短くして各条件の実験時間を短縮するとともに,運動課題における握力把持を相対化したこと(10%MVC)によって特に年齢の低い児童や男女間の発揮する握力への配慮もおこなった.このことから,二重課題の課題難易度を操作するためにマッチング課題の追跡速度(slow条件とfast条件)を操作した際に生じる二重課題干渉が運動課題,認知課題のいずれの結果からもみることができた.また,児童と成人で三条件に対するパフォーマンスに違いも認められたことから,平成27年度の研究課題を検証するためにも有益な結果が得られていると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を進めるため,平成27年度は平成26年度に採用した認知課題(聴覚オドボール課題)と運動課題(グリップ把持動作を用いたマッチング課題)における課題内容をさらに精査し,研究を進めていく.特に,運動課題に関しては児童においても一定のスピードでの握力把持動作の継続は課題遂行によってパフォーマンスの向上がみられ,一定の動作の繰り返しにより運動課題(特にマッチング課題)では握力把持動作による目標の追跡作業に予測的な要素が含まれステレオタイプの動作の繰り返しをおこなうことで運動課題への注意処理資源の配分を低下させ,これにより二重課題をより円滑に遂行しようとする可能性も考えられる.先行研究においては追跡予測ができない場合には成人においてもより注意処理資源の配分がおこなわれることが報告されていることから,児童にみられる注意処理資源の配分について検討するには有効な実験デザインであると考えられる.そこで,今年度はあらかじめ作成した追跡条件において追跡目標の動きに規則性をなくすことで課題遂行中を通じて運動課題への注意処理資源配分を高めた条件を用いることで二重課題の遂行に関わる注意処理過程において児童期特有にみられる活動が出現する可能性をさらに検討したい.
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Causes of Carryover |
前年度は学会参加等に関わる旅費が抑えられたこと,および実験デザインを検討したことにより実験時間が短縮され,人件費・謝金が抑えられたことが主な理由として挙げられる.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は,前年度と同様に二重課題を用いた研究を進展させていたくため,特に児童の参加者への配慮として,脳波測定に必要なキャップ電極の追加購入および消耗品購入に加えて,今年度は運動課題に関する実験デザインを確定していくために運動課題の作成に用いる備品の購入も検討している.また,国内での学会への参加および研究分担者との研究打ち合わせや情報収集に係る旅費,このための旅費を予定している. 謝金については特に児童の研究協力者を確保するとともに,児童のデータ数を増やすために人件費・謝金として使用したいと考えている.これにより信頼性の高い結果を得ることで論文投稿にかかる費用での使用も予定している.
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