2013 Fiscal Year Research-status Report
運動会(体育祭)による学校づくりカリキュラムの検討
Project/Area Number |
25350756
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
藤谷 かおる 金沢大学, 人間科学系, 教授 (60257079)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地域の運動会 / 企業の運動会 |
Research Abstract |
日本国内での運動会は減少傾向にあったが、コミュニケーション不足、組織活力の低下から、昔から行われてきた「運動会」の見直しが進められている。本研究では、地域と企業の運動会の実態と成果を明らかにする。2013.11.15~16の2日間、「地域運動会参加者」206名、「企業運動会参加者」206名の合計412名を対象にインターネットリサーチを行った。内容は、基本的属性、意識〔参加形態、意味、種目、楽しさ(不満の理由)など〕、成果(目標、発見、主体性、役割と責任、安全、役員への尊敬、年代間の協力、団結感など)である。 調査の結果、運動会の参加者は「自発的な参加(40%)」と「参加要請・仕方なく参加(40%)」とほぼ二分化され、「人間関係の獲得(地域:22.3%,企業:25.5%)」や「目標に向かっての団結(企業;97名,24.7%)」、「生活のアクセント(地域;76名,19.2%)」と意味づけている。好きな種目と実施種目はほぼ一致しており、評価は参加者の約8割以上が楽しいとしている。しかし、約1割5分は「楽しくない」とし、理由を「参加者の意欲(3割弱)」、「全体のまとまり(約2割)」「当日のスケジュール(約2割弱)」としている。 運動会の成果として有意差が認められた(回答を数値化し平均値の差を検定)のは、「安全なプログラム進行(企業3.12,地域3.02,F=9.518)」,「主体的な取り組み(地域2.92,企業2.90,F=7.110)」「前回以上の団結感(企業3.08,地域3.02 ,F=5.252)」であった。 以上のことから、両運動会は、「人間関係の獲得」を目指して、役割分担をしながら(企業ではプログラム参加と実施・運営委員がそれぞれ約40%)、80%以上の参加者が「楽しい」と評価している実態が明らかとなった。尚、「役員分担の強制」は強い不満理由となることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、「地域」や「企業」での運動会(体育祭)の実施形態と組織的成果を明らかにした上で(研究課題1及び研究課題2)、現在の学校の運動会(体育祭)の企画・運営実態及びソーシャルスキル形成の有効性を明らかにする(研究課題3)ことにある。さらに、「保健体育科などの教科」と「特別活動」を融合させた「運動会実践カリキュラム」の導入によって、保護者や地域等の学校外の「協働性」及び「学校づくり」の効果を明らかにする(研究課題4)ことにある。 本研究は初年度であり、「地域(研究課題1)」や「企業(研究課題2)」で運動会の実態を把握することを目指した。インターネットリサーチを用いたことにより、短期間でアンケートの必要数をほぼ確保することができた。 本研究で特色となる調査項目は、「①運動会の実態」、「②地域や組織への愛着度」、「③参加者の評価」である。①運動会の実態については、運動会の概略(開催時期、参加の主体性、意味、種目や役割分担)を概ね把握するこができた。しかし、自由記述より役割分担の中でも「実行委員会の負担」の大きさが問題点とされた。今後、公民館や企業等の情報収集により、運営・実施体制、役員の改選頻度、役割とその内容について明らかにする必要がある。さらに、②地域の愛着度についても、「今、住んでいる地域が好きか(世界青年意識調査)」という単純な質問のみでなく、地域の「自然」「よさ」「行事への参加意思」「貢献」の4項目から愛着度を検討する必要がある(金田・赤川,2006)。企業の「愛着度」についても、同様で、「仕事(職場)に愛着を感じるか」のみでなく、組織コミットメント(特定の組織に対する従業員の一体感や関与)やエンゲージメント(自律性と関係性)から「愛着」を捉える視点の検討が求められる。③の評価については、「楽しさ」、「継続性」「成果」の観点から概ね捉えることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の地域と企業の運動会については、インターネットを活用したアンケート調査を実施し、全体傾向を概ね捉えることができた。平成26年度は、スポーツライフの土台を形成する児童・生徒、すなわち学校運動会参加者を対象とする。研究方法は、昨年度と同様にインターネットリサーチを用いて、全国的な学校運動会の実態と企画・運営形態を明らかにしていく【研究課題(3)の一部】。具体的な検証事項は、運動会の開催形態、目的、種目(伝統・新規)、対抗戦形態、企画・運営体制である。 平成27年以降は、平成26年度の学校運動会のアンケート調査より、「特色ある学校運動会(体育祭)」の発掘や地方差の分析を行い、組織のために個々が自発的に参加する運動会を目指して、「特色ある学校」の取り組みを事例的に検証していく【研究課題(3)の一部】。運動会を学校づくりの改善カリキュラムとして導入している小・中・高等学校の児童・生徒を対象に、集団性・自主性の側面から、ソーシャルスキルの発達を捉えることができるように、測定尺度の検討をすすめる。実施期間:平成27年10月~11月を予定しており、調査項目は、①運動会の効果(チームワークの測定を含む):チームの指向性、リーダーシップ、コミュニケーション、モニター、フィードバック、支援、相互調整、②ソーシャルスキルの発達では、集団行動、協調行動、セルフコントロール・スキル、仲間関与スキル、言語コミュニケーションスキルである。 本研究を行う上での課題は、(1)「全国的な学校運動会の実態」を捉えられるか、さらに(2)「特色ある学校」をいかに抽出できるかにある。そのためには、金沢市スポーツサークルのメンバーの情報協力や研究室のHPを活用して情報提供を求めていく必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
学会参加と合わせて、研究打ち合わせを行う予定であったが、公務の関係で日程が短くなり、残額が生じた。 次年度の旅費交通費(4700円)とする。
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