2013 Fiscal Year Research-status Report
競泳練習機トレーニングによる実泳時の疲労緩衝効果に関する筋電図的検証
Project/Area Number |
25350796
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
伊東 太郎 武庫川女子大学, 健康・スポーツ科学部, 教授 (40248084)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 競泳 / 競泳練習機 / 疲労緩衝 / 神経系システム / 筋電図 |
Research Abstract |
競泳時の泳速を増大させる要因として,ストローク長と頻度を両方高めることが重要であるが,トップスイマーはストローク頻度を抑えることでレース中の疲労を緩衝しようとする傾向がみられる.研究代表者は,ストローク長を伸ばすことで頻度を抑えられるよう,実泳時に近似した上肢,上肢帯および体幹筋群の筋作用機序を地上で再現し,その状況下で同筋群を一定あるいは漸増負荷で鍛えるため,空気ファン負荷を利用した競泳練習機を独自に開発した. 本研究では競泳練習機稼働中および実泳中の筋電図データを中心に選手個別の局所筋疲労の実態を精査するとともに,水泳競技選手に2年間の練習機トレーニングを課すことでストローク長および泳速の増大,ならびに疲労緩衝への効果を検証しようとするものである. 平成25年度は,競泳練習機と実泳時の筋活動の相似点と相違点を筋電図的に検証するとともに,4ヶ月の短期間の競泳練習機トレーニングでのトレーニング効果を精査した. 競泳練習機,牽引速度の増大に応じ牽引力も増加するため,フリーウエイトなどの初動負荷的なトレーニングに比べ負荷特性は水中同様となる.被験筋を広背筋・大胸筋・脊柱起立筋(L4)・腹直筋・外腹斜筋の5筋とし表面誘導法によりEMGを記録し,実泳と同ピッチの競泳練習機稼働時の筋作用機序を比較した.各筋の活動開始と修了時間に有意差はなかったが,腹直筋のEMG平均振幅が競泳練習機で有意に大きい結果となった.また、競泳練習機を用いたトレーニングは大学女子バタフライ選手群に2分間を2セットで週3回継続させた.その結果,実際のレースでの記録は4ヶ月で短縮し,ストローク長の増加と総ストローク数の低下を有意に引き起こす結果となり,この競泳練習機が専門筋力のトレーニングツールとなりうることが示唆された. 以上に関して日本体力医学会において2題の発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
競泳練習機の作成にあたって前倒し支払請求を許可いただき,トップアスリートにも耐えうる強度の強化アルミのマシンに急ぎ設計変更,製作を迅速に実施することができたため実験が順調に進展した. 今回製作の地上でのロープ牽引による競泳練習機では生体情報を採取しやすく,体幹部を全く制約せず,あえて伸身の姿勢保持を困難にする不安定な状況に暴露するよう工夫してあるため,水中同様の体幹筋群の動員を促し,バックストロークを含むすべての泳法による牽引を可能としている.この練習機では空気ファン負荷を採用し,キャッチ-プル-プッシュまで常時負荷がかかり,ロープ牽引速度の増加に伴い負荷が増大するという,水中運動に近い負荷方式を採用している.しかもリカバリーにおいて戻り負荷をかけるため,主動筋の弛緩を可能とし速い抜き動作も体感できるよう工夫して製作している. この練習機開発が予想以上に早期に完了したため,予定より早くトレーニング効果の検証に着手できていることが今回の達成度の結果となっている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後,本研究では競泳中の局所筋疲労の遅延策を検討するために,以下の2 課題からアプローチする. (1) 実泳時の特定筋の疲労がCritical Swimming Velocity (Vcri)を決定するのか? Vcri は泳距離と持続泳時間との回帰曲線の傾きから求められ,乳酸蓄積によって疲労困憊に至ることなく長時間泳ぎ続けることのできる泳速に相当する.筋電図による電気生理学的な転換点とVcri を一致させることで,局所筋疲労の発生を明確化させることができると考える.そして,本研究手法の中心である,筋電図による局所筋疲労の検出方法の妥当性を検討するために重要な課題となる. (2)競泳練習機で実泳中の筋疲労を再現した場合,どのような疲労遅延機能が作用するのか? 例えば,カヌー競技において全日本代表強化選手は,レース時の主動筋疲労による著しい筋放電量増加が開始すると,協同筋動員が高まり,急速に主動筋活動量が低下し血中乳酸値を著しく抑える戦略を利用している(植杉ら2012).水泳時もこの戦略が,乳酸蓄積の抑制に有効に作用するのか,急ぎ精査する必要があると考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験機器(競泳練習機)の構造強化のための製作費を前倒し支払いのため,概算で申請していたが,材料費の縮小等で次年度使用額が生じる結果となった. 次年度使用額は競泳練習機の改造費に充て,今年度はほぼ当初の遂行計画に沿って使用する予定である.
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