2014 Fiscal Year Research-status Report
高地トレーニングに関する基礎研究:化学受容器における神経伝達物質の分子機構
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25350823
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Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
日下部 辰三 国士舘大学, 体育学部, 教授 (80117663)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 欣郎 岩手大学, 農学部, 教授 (10252123)
高橋 優宏 横浜市立大学, 医学部, 講師 (50315800)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高地トレーニング / 低酸素 / 高血圧 / 化学受容器 / 頚動脈小体 / 免疫組織化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
動脈系化学受容器である頚動脈小体の化学受容活性は、セロトニン(5-HT)によって興奮性に調節されていると考えられている。しかし、頚動脈小体における5-HT関連分子の分布や、頚動脈小体内へ入力する神経線維との関係については不明な点が多い。平成26年度の課題として、頚動脈小体における5-HT関連分子の形態学的基盤を解析することを目的として、RT-PCRおよび免疫組織化学を行った。 RT-PCRでは、前頚神経節および頚動脈小体からtotal RNAを抽出し、セロトニン合成酵素(TPH-1、TPH-2)、セロトニン2A(5-HT2A)受容体、セロトニントランスポーター(SERT)のmRNA発現を解析した。また、免疫組織化学では、頚動脈分岐部の凍結切片を作製し、5-HT、TPH-1、SERT、ノルアドレナリン合成酵素(DBH)に対する抗体を用いて免疫染色した。 RT-PCRでは、頚動脈小体においてTPH-1、TPH-2、5-HT2A受容体、SERT mRNAの発現が認められた。TPH-1 mRNAと比較して、TPH-2 mRNAは非常に低い発現量を示した。また、前頚神経節においてもTPH-1、TPH-2、SERT mRNAの発現が認められた。免疫組織化学では、化学受容細胞に5-HT、TPH-1、SERT陽性反応が認められた。頚動脈小体内に分布する神経線維では、TPH-1、SERTに対する強い免疫反応性が認められた。また、頚動脈小体内に分布する神経線維で認められたSERT強陽性反応は、DBH陽性反応と共存していた。 これらの結果から、5-HTは化学受容活性の増強に関与していることが示唆された。また、頚動脈小体内に分布するTPH-1、SERT陽性の神経線維は、前頚神経節から入力していることが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、化学受容器(頚動脈小体)が各種環境変化(低酸素環境、高血圧症)に対してどのように適応するかを検討することを目的に計画されたものであるが、平成25年度の三次元的解析ならびに各種伝達物質の免疫組織化学的検討をもとにして、平成26年度は、セロトニン(5-HT)関連分子の形態学的基盤を解析することを目的に逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)および免疫組織化学的検討を行った。 頚動脈小体で合成される5-HTは化学受容活性の増強に関与していることが示され、今年度の目的は、おおむね達成されたものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度および26年度に得られた結果をもとに、今年度は、頚動脈小体の化学受容細胞内のカルシウム動態に関する検討を行うべく、fura-2を用いた顕微蛍光測光法の準備を進めている。
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Causes of Carryover |
免疫組織化学、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応や細胞内カルシウムの蛍光測光等に使用する試薬は、海外から取り寄せるものが多く、為替レートの関係で試薬価格が変動する。また、研究課題を遂行する過程で購入の必要がなくなった試薬があった。 以上の理由で差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度も各種抗体や試薬等を購入予定であるが、価格変動への対応に使用する。
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Research Products
(6 results)